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復讐を決意した俺は、無音銃で犯罪組織と戦う  作者: 一条イチ
第一章

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16/30

最終決戦は突然に

「あら、もう目を覚ましたのかしら」

「……さっきの、どういう意味ですか」

「聞いていたの? 言葉通りの意味よ」

「なぜあなたたちが僕を神崎に……?」

「神崎サンの組織にはうちのケツモチをやってもらってる。バカ高いみかじめ料を払ってね」

「黒木君の話は神崎さんから聞いていたの。九六式自動拳銃を高校生に奪われたってね。あなたの身柄と引き換えに値下げ交渉をするのよ」


 ガブリエルもアナスタシアも俺のほうを見て、にやにやと笑いながら話す。ふざけるな。俺はお前らの交渉の道具じゃない。

 しかし今まで組織に関しては、警察官襲撃事件以外のことはまったくわからなかった。だが今、ガブリエルの教団のケツモチをやっていて、それが資金源のひとつになっていることがわかった。


「ああ、ちょうどサンドバッグが欲しかったんだよな。しかし残念だが、君は無傷で引き渡さなきゃならない。今は九六式自動拳銃も持っていないようだしな。その代わり彼にやってもらおうか」


 そう言ってガブリエルは桜井の体を蹴り上げた。


「ぐあっ!?」

「お、いい声出すねえ。こりゃ面白い」

「ま、纏。なんなんだ、これ……」

「なんなんだって、君はサンドバッグなんだよ」


 苦しそうに声を絞り出す桜井を見下ろしてガブリエルは言い放った。そのままガブリエルは横たわる桜井を殴りつけた。何回も何回も。そのたびに桜井はうめき声をあげた。

 その巨体のパワーはあの筋肉野郎、大森より上かもしれない。両手と両足を縛られた桜井は抵抗することなどできるはずもない。


 アナスタシアはそれを見てあきれたように笑い、コーヒーを飲む。そして俺と目が合い、また笑った。ふざけやがって。


 こんなやつにこのまま殴られ続けてたら、桜井はここで殺されるかもしれない。俺のことは無傷で引き渡すと言った。だがここから逃げ出すことは不可能だ。そして一週間後組織に引き渡されたら、九六式を奪われ確実に殺されちまう。


 頼む、助けてくれ、島本さん。


「黒木、桜井!!」


 その声は俺のよく知っている声。振り返ると島本さんが部屋の入り口に立っていた。その手に握られているのはグロック19。


「てめえら、俺の生徒に何しやがる!!」


 ものすごい剣幕で島本さんは怒声を上げる。


「なんなの、あなた。挨拶もせずに無礼ね」


 ガブリエルもアナスタシアも、銃を目にしてもまったく動じないだなんて。どんな神経をしてやがる。


「……島本さん」

「なんとか間に合ったみたいだな」


 俺が助けを求めた瞬間、本当に助けに来てくれるなんて。大和のときも助けに来てくれたが、この人はどんな察知能力を持っているんだ。


「銃を出されちゃ勝ち目がねえなあ」

「安心しろよ、黒木と桜井を返してくれりゃあこの場は穏便に済ませてやる」

「わかったよ。せっかくの黒木クンを手放すのはまことに残念だがね」

「それでいい。……だがてめえらは絶対に許さねえ。覚えていやがれよ」


 その表情は俺に銃を向けたときとも違う、激昂の表情。それはとても普段教師をやっている人間とは思えなかった。

 島本さんは俺と桜井を縛る縄をナイフで切り、俺たちは教会をあとにした。


「島本さん、どうして俺たちの場所が」

「お前の携帯に入れた単語帳アプリに仕込んだGPSだ。すまねえな、何も説明してなくて」

「あの位置ゲー要素はそういう意味だったんですね」

「しかし大丈夫か、桜井」

「めちゃくちゃ痛かったですよ。つーか最近殴られてばっかりだ。島本さんといい、大森といい、パワーありすぎなんだよ」


 確かに殴られ役はいつも桜井なので少し不憫だ。大和にも蹴られてたし。それにしても頑丈だな、こいつ。俺だったら骨5、6本折れてるぞ。


「これからちょっと佐藤んとこ行くぞ」


 俺たちは島本さんのランエボで佐藤さんのマンションに向かった。


「それで、神崎とガブリエルの会談は一週間後の土曜って言ってたんだな」

「はい」

「組織とガブリエルの教団が繋がっていることは知っていた。これまでの会談の場所もわかっている。組織のアジトだと私は推測しているがね。ここで会談の日程がわかったことは大きなチャンスだ」

「佐藤さん、どういう意味ですか」

「そこを叩けば、神崎を殺せるということだろう?」


 組織のボス、神崎を殺す。それは組織を潰すということ。


「だが、そこに乗り込むのは危険すぎるだろう」


 島本さんはメビウススーパーライトに火をつけながら言った。


「……私に戦闘能力はない。申し訳ないが、私は行くことはできない」


 佐藤さんはばつの悪そうな顔をして、パーラメントに火をつけた。


「お前に死なれたら困るんだ。ここまで来られたのはお前のおかげだ。だからそれでいい。黒木と桜井も、悪いことは言わないからやめとけ」

「だからって、ここで退くわけには」

「……死ぬ覚悟はあるかって言ってんだよ。組織の総本山に乗り込むんだぞ」


 島本さんは冷酷な目つきで俺たちを見る。


「組織と戦うと決めてから、そんなことは承知の上ですよ」

「その覚悟がなければ九六式自動拳銃は握ってませんから」


 決意の言葉のあと、俺と桜井は目を合わせて口角を上げた。


「ふ、言うようになったな。わかったよ、お前らは俺の命をかけても守ってやるさ!」


 そう言って島本さんは俺と桜井の肩を抱いた。そうだ、この人がいれば俺たちは死ぬはずがない。


 ガブリエルの野郎、絶対に許さない。俺と桜井を愚弄しやがって。もう『倒す』なんて甘っちょろいことは言わない。ガブリエルも金田も大和も神崎も、ぶっ殺してやる。


 佐藤さんがコーヒーを出してくれた。ガブリエルに出されたコーヒーを思い出してしまったが、躊躇せずいただいた。

 タバコの煙を吐き出して一呼吸おき、島本さんが口を開いた。


「さあ、決戦は一週間後だ。ここですべてを終わらせる!」

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