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復讐を決意した俺は、無音銃で犯罪組織と戦う  作者: 一条イチ
第一章

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邪教の神父

 二人で立ち尽くしていても仕方ないから帰ることにした。


「どうする? 俺たちもドトールでも行くか?」

「そうだ、抹茶ラテおごってくれるんだったな」

「ミラノサンドも付けてもいいぞ」

「マジかよ!? 俺ミラノサンドAめっちゃ好きなんだよ!」

「お前には大きな借りができちまったからな」

「お、白沢さんとはうまくいったんだな? あとで詳しく聞かせろよな」


 桜井と歩いていると、駅前で白人の男と女がビラを配っていた。二人ともスーツに身を包んでいる。男のほうは2mを軽く越える大男。初めて見たぞ、こんな背が高い人間。年齢は40歳くらいだろうか、その風体は島本さんを一回りも二回りも大きくしたような。

 それと比べると女のほうは小さく見えたが、近づいて見ると180cm近くある。こちらは20代後半だろうか。金髪の長身美女だ。


「あなたは神を信じますか?」


 やばい。捕まる前に逃げよう。


「俺は信じますね! 日本って八百万の神って言うし、特定の神を信じているわけじゃないですけど、ここぞってときは神頼みしちゃうし」


 このバカ。何反応してやがる。


「……僕は信じていません。非科学的なものは信じない主義なので」

「そうは言っても、初詣とかクリスマスパーティーとかしない? するのならば少なからず神様がいると思っているんじゃないかしら」


 女のほうはやけに流暢な日本語だな。


「そんなのは単なるイベントですよ。神を信じてやってるわけじゃあない」


 桜井の脇を小突く。


「行くぞ」


 俺はあいさつもせず駅に向かって歩きはじめた。


「あっ! ちょっと待てよ纏!」

「あ、これどうぞ。よかったら来てください」


 桜井は小走りで俺に追いついてきた。


「なんだよ纏! トイレにでも行きたいのか」

「ちげえよ。新興宗教の連中なんざ一番関わっちゃいけないやつらだ」

「いや、でもいい人そうに見えたけどな。あの人たち」

「そりゃ外面はいいさ。だけどホイホイ着いて行ったら全財産持っていかれるはめになる」

「纏、ネットに毒されすぎじゃないか?」

「ふん、俺は騙されないからな」

「お、週末は無料の英語教室やってるらしいぜ。今週の土日行こうぜ!」


 桜井は大男から受け取ったビラを指さして言った。


「行かねーよ。一人で行ってな」

「即答かよ。それじゃ外村さん誘ってみよっかなー」

「バカ野郎!! 外村を巻き込むんじゃねえ!!」


 俺の怒声に桜井は少したじろいだ。声の大きさに自分自身驚いた。


「な、なんだよいきなり大声出して……。わかったよ、一人で行くからさ」


 やつらが悪徳カルト教団だと決まったわけじゃない。本当に信者でなくとも無料で英語を教えてもらえるならラッキーだ。だが、もし外村の身に何かあれば、俺は……。

 俺と桜井は黙ったままその場に立ち尽くしていた。

 桜井は悪くない。溜飲を下げろ、黒木纏。


「……俺が一緒に行くよ」

「ほ、本当か? でもさっき行かないって」

「お前には借りがあるからな。だがその代わり抹茶ラテはナシだ」

「ありがとう、纏。でも抹茶ラテ……」




 次の土曜日、俺と桜井は駅で待ち合わせた。目的はもちろん英語教室。だがやはり不安だ。いきなり洗脳なんてないよな?

 ビラに書かれた地図に沿って教会に向かった。駅から10分ほど歩き到着した。


「こんにちは」


 出迎えたのは、あの大男。


「私はガブリエルといいます。ここの神父をやってます」

「俺は桜井優人といいます!」

「黒木纏です」

「桜井サン、黒木サン。英語習いに来ました?」

「はい」


 本当に英語を教えてくれるだけで終わるのだろうか。だがもし英語教室の目的が勧誘だとしても、俺は絶対にカルト教団に騙されたりしない。


「アニー!」


 ガブリエルさんに呼ばれて出てきたのはあの金髪美女。


「こんにちは、私はアナスタシアよ。英語教室を担当しているわ。どうぞよろしく」

「よろしくお願いします!」


 こんな人がいるだけで入信者はあとを絶たないだろう。信じる者は救われるとは言うが、信じる相手が間違ってたら意味がないんだぞ。


「あなたたち、高校生よね。英語は得意かしら」

「関係代名詞はちょっと怪しいかもしれません」


 桜井はそれを聞いて若干あきれた顔をした。まったく、どいつもこいつも。白沢も桜井も俺と同じ学校だからといって、学力が同レベルというわけじゃない。神童と呼ばれたのは昔の話だ。


「なるほどなるほど、桜井君のほうはどうかしら」

「俺は読み書きは高校で習う範囲なら一通りわかります。ですけど会話はちょっと自信ないんですよね」

「だからここに来たのね。教材を準備するからちょっと待っててね」


「……おっぱい星人二世として、あのおっぱいは何カップだと思う?」


 アナスタシアさんが準備をしている最中、桜井が小声で言った。


「おっぱい星人二世ではないが、おそらくFだ」

「マジかよ。俺の見立てではEだったんだがな」

「ちなみに白沢はGだ」

「G!? 嘘……だろ?」

「信じがたいのはわかる。だが事実だ」


 実際に触った俺にはわかる。GカップのGはGreatのG。いや、推測だが。


「待たせたわね。それじゃ始めましょう」


 アナスタシアさんが教材を持って戻ってきた。ガブリエルさんは同じ部屋で洋書を読んでいる。


 アナスタシアさんはごくごく簡単な英会話から教えてくれた。中学で習うような表現がぱっと出てくるようにすることがまずは大事らしい。


「I like playing video games. I especially like first-person shooters. My favorite is Call of Duty.」


 残念ながら今の俺の実力は中学生レベル。だがこれからV字回復していく予定だ。白沢にも教えてもらえるしな。


「お疲れ様です。コーヒーどうぞ」


 ガブリエルさんが2杯のコーヒーを持ってきた。


「ガブリエルさん。ありがとうございます」


 桜井はコーヒーに砂糖とミルクを入れて口をつけた。


「黒木君も遠慮なく。どうぞ」

「ありがとうございます」


 俺も出してもらったコーヒーに口をつけた。




 ……寝ていたのか、俺は? ふと桜井のほうを見ると、縄で両手と両足を縛られて横になっていた。そして縄で縛られているのは俺も同じだった。

 何が起こっているんだ。


「これで黒木君を引き渡せば神崎さんとの交渉もうまくいきそうね」

「神崎サンも最近調子に乗りすぎなんだよ。あのインテリ、コンサル気取りでふっかけてきやがって」

「でもこれでこちらの有利に話を進められるわ。一週間後の土曜の会談が楽しみね」

「しかし、わざわざ黒木クンが出向いてくれるとは嬉しい誤算だ。飛んで火に入る夏の虫ってね」


 ……どういうことだ。俺を神崎に引き渡すだと?

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