閑話 隣国王子の悲惨な叫び 父に命じられて聖女を連れて帰ろうとしただけなのに、不能にされて呪われた不能王子と噂されました
俺の名はバルトロメーオ・コルドバ、このマリアンネ王国のBクラスに留学している隣国コルドバ王国の第二王子だ。我が国の国教はこの聖マリアンネ王国と同じ女神教だ。
当然その使徒である聖女を崇拝していたが、なかなか我がポルト王国では聖女は生まれなかった。
俺は父である国王陛下より、聖マリアンネ王国に留学して、聖女と親しくなって何が何でも連れて帰って来るように密命を受けていた。
聖マリアンネ王国は女神教発祥の地なのか、聖女が毎年多く生まれていた。この王立学園だけで、一学年二十名以上の聖女がいるのだ。3学年合わせれば六十名もいる。1人もいない我が国と比べようも無いくらい恵まれていた。
しかも、沢山いすぎるからか聖女の待遇が悪いのだ。
一部高位貴族の聖女は大聖堂の中でも優遇されているみたいだが、子爵家とか男爵家の聖女の待遇は本当に悪かった。俺が少し流し目を使って誘うとホイホイと付いてくる。
しかし、男爵家や子爵家の出身の聖女では能力的に中々厳しいものもあった。俺が連れ帰ってもその子に聖女が生まれるかどうかよく判らなかった。
そういった子らはキープして、俺が目をかけたのは3人だ。
一人目は俺と同じBクラスにいるピンクの髪のセシリア・ポルトだ。だだ、彼女はポルト王国の王弟の養女になっていて、連れて帰るには外交問題にもなりかねなかった。それに、セシリアはこの国の王太子の婚約者になるのを狙っていた。何でも、彼女はこの物語のヒロインなんだとか。
神によってエドガルドの婚約者になるように定められていると平気で皆に言いふらしていた。
しかし、俺の目から見ると、エドガルドはどう見てもパウリーナとか言うチビに執着しているように見えたのだが……そう指摘すれば、
「私が入学式の時に少し間違えてしまって、バグになっているのよ。あんな初級ポーションしか作れない下っ端聖女がエドガルド様の婚約者になれる訳はないわ」
自信たっぷりにセシリアは言い切ってくれた。
まあ、俺が手に入れた情報でも、パウリーナは初級ポーションを作らせたらこの国一番というどうでも良い情報だった。初級ポーションがいくら沢山作れても、所詮屑ポーションだ。大したことはあるまいと俺は思っていた。
「それよりも私がエドガルド様の婚約者になれたら、アレハンドラをあなたの国に連れて帰って良いわよ」
おいおい、お前はこの国の侯爵令嬢に命令できるような地位にはいないだろう!
俺は余程そう言いたかった。セシリアはいつも独りよがりなのだ。こんな自分勝手な奴が王妃になったらこの国も大変だろうなと思ってしまった。
まあ、こいつと手を組むのは何らかのプラスになるだろうと手を握ったのだがそれが間違いだった。
セシリアは俺に断ることも無く、勝手にこの国のスタンピード討伐に付いていき、行方不明になってしまった。
我が国の諜報機関が掴んだところによると、今回のスタンピードはポルト王国の何らかの関与があった可能性があるとのことで父からはポルト王国の聖女とはこれ以上付き合うなと厳命が来た。
まあ、本人が行方不例だから付き合いようが無いのだが……
俺が気にしたのはその時のスタンピードを下っ端聖女のパウリーナが制圧したという情報だった。
どうやって初級ポーションしか作れない下っ端聖女がスタンピードを収めたというのか?
詳しい情報は全くわからなかった。
エドガルドはますますパウリーナを庇いだしてついに王宮に囲うまでになっていた。
王宮に囲うということは、パウリーナが次期筆頭聖女なのか?
俺には驚愕以外の何物でも無かった。
しかし、それはアレハンドラの実家の侯爵家の反対で無くなった。
筆頭聖女を決めるのならば直接能力対決で決めるべきだと侯爵家が申し出たのだ。
俺はそんな侯爵家に掛け合った。もし、侯爵家が勝てばパウリーナの身柄を引き受けたいと。
侯爵家は諸手を挙げてかどうかは判らないけれど、賛成してくれた。
しかし、信じられないことにパウリーナは初級ポーションを作る勢いで上級ポーションまで作ってしまってアレハンドラに圧勝してしまった。
俺は本当に驚いた。
平民出身の聖女が侯爵家の聖女を圧倒してしまったのだ。それも聖女のレベル判定でも、機器を壊すほどの圧倒的な力を見せつけてくれた。
我が国としてはこのパウリーナが欲しかった。だが、この国の王妃も王太子もこの女を買っていた。
さすがにこの国の王妃で筆頭聖女を怒らせるのはまずい。
やむを得ず、俺はミラネス侯爵家に俺との婚約の打診をした。
王家から振られたアレハンドラなら、第二王子だが、俺の婚約者になるだろうという読みもあった。
でも、中々侯爵家から返事が来なかった。
どうしたものかと俺が思案を重ねているとやっと侯爵家から返事が来たのだ。
その答えは自分の代わりにパウリーナを差し上げるというものだった。
俺は躊躇した。差し上げるなど本来侯爵家が決めるものではなかろう。
「何を言っているのですか? バルトロメーオ様。パウリーナがいらないとおっしゃるのですか?」
お忍びで俺が住んでいる我が国の大使館にやってきたアレハンドラは笑ってくれた。
「そうは言わないが、どうやって連れてくるというのだ?」
パウリーナの周りにはエドガルドが四六時中ついているし、連れ出すのは至難の業だと思った。
「ふんっ、そこはお任せ頂ければ何とでもいたしますわ。引き渡した後は既成事実さえ作れば筆頭聖女様もそれ以上は何も言われないはずですわ」
この傲慢女はとんでもないことを考えてくれた。
確かにそうだが、それで良いのか?
さすがの俺も躊躇した。
しかし本国の父に打診すると、それが出来るなら是非ともそうせよ、というものだった。本国は近年、魔物の出現が増えて、討伐にも手を焼いていた。最強聖女が来てくれるならそれに越したことはなかった。
愚かな俺はその案に乗ってしまったのだ。それが全ての誤りだった。
アレハンドラは確かにお膳立てをしてくれた。しかし、自分の前で抱けとか、とんでもないことを言い出してた。
まあ、乗り出した船だ。俺はパウリーナに襲いかかった。
しかし、それが最悪だったのだ。抵抗できないと思ったパウリーナから杖が飛び出しグシャリ、と俺の股間が潰された。
「ギャーーーー」
俺は絶叫するしかなかった。
俺は怒り狂った聖マリアンヌ王国の連中に国に送り返された。治療もしてもらえないまま。そして、潰された股間を治そうとしたが、治せなかった。
各国の聖女を回ったが、皆首を振って言うのだ。
「女神様の呪いがかかっています」
俺は絶望した。
それ以来我が国では聖女が完全に生まれなくなった。
俺は歴史書に書かれたのだ。
筆頭聖女様を襲って廃嫡された不能王子、コルドバ王国を更なる衰退に追いやった元凶と。
我が国はそれから百年もせずに滅んでしまったそうだ。








