6悪役令嬢に虐められていたところを王太子殿下に助けてもらいました
私は入学式の行われる講堂へ足下が定まらずふらふら歩いていた。
私はこの物語の王子様のエドガルド様にヒロインの代わりにお姫様抱っこされてあまりのことに茫然自失していた。
でも、エドガルド様は本当に見目麗しかったな!
私を見つめるエドガルド様の顔が神々しかった!
私は前をよく見ていなかったのだ。
ドン!
いきなり、人にぶつかっていた。
「ご、ごめんなさい!」
男はぎろりと私を睨んだが、その顔を見て私はぎょっとした。
その緑髪と目の覚めるような青い目は小説に出てきた隣国の王子バルトロメーオ様だった。
「気をつけろよ」
男はそう言うと去って行った。
私はほっと息をしていた。
バトルロメーオ様は気が強くて有名なのだ。下手したら無礼打ちにされていたかも……
でも、バトルロメーオ様とぶつかったって、確かヒロインも入学式でバトルロメーオ様とぶつかるのだ。その後にいろいろあって仲良くなっていくんだけどってちょっと待って!
何で? 何で平民のモブですら無い私がバトルロメーオ様と知り合うのよ?
まあ、ぶつかっただけだけど……
私は少し考え込んだ。
いかんいかん!
これから入学式だ。
私は頭を振って歩き出した。
入学式の講堂に入る前にその講堂の前でクラス分けの発表があった。
紙が張り出されている。
私はその中で自分の名前を探してのだ。
聖マリアンネ王国の王立学園は16歳になる年齢から18歳まで3学年。前世の日本の高校と同じだ。クラスは一学年全部で4クラス、AクラスからDクラスまである。基本はAから身分順だ。
ヒロインは平民のくせに何故かAクラスだったけれど、私はもぶですらない平民だから当然Dクラスのはずだ。
「あれ? ないんだけど……」
私はDクラスの上から下まで自分の名前を探したがなかった。
「変だな」
次のCクラスも探したけれど、無かった。
私は焦りだした。
やはりシスターベルタが手を回して私の進学を無しにしたんじゃないだろうか?
私はとても不安になってきた。
まあ平民のモブですら無い私がBなんて無いとは思うけれど、ダメ元で見てみようとBクラスも探すが……当然無かった。
もう最悪だ。
私は泣きそうになった。
終わった。やっぱりモブですら無い私が王立学園に来る事なんて無理だったんだ。
ああああ、エドガルド様とヒロインの愛のシーン、もっと見たかったな!
私がヒロインの代わりにエドガルド様に助けられたから、天罰が下ったんだろうか?
でも、あれは不可抗力だ。
というか、ヒロインがスタスタ歩いて行くから悪いんじゃ無いの?
そう不満げに思ったけれど、もう遅かった。
まあ、ヒロインの代わりにエドガルド様に助けて頂いたからそれで良しとするしか無いのか?
エドガルド様の顔、美しかったな!
私は思い出し笑いしていた時だ。
ドン!
「邪魔よ、お退き!」
「ギャッ!」
私は後ろから押されて掲示してあるボードに頭から激突していた。
「痛い!」
顔を押えて押した奴らを振り返ると、そこにはアレハンドラ様とその取り巻き聖女軍団がいた。
「本当にもう。王妃様のお情けで学園に入れたからってでかい顔しているんじゃ無いわよ」
取り巻き下っ端の男爵令嬢のサラに言われた。
「私の前に現れるなって言ったでしょう!」
アレイダ様が私を睨み付けた。
「ところでパウリーナは何クラスだったのかしら?」
「平民の出来損ないはDクラスに決まっていますわ」
サラの言葉に私の胸がズキリと痛んだ。
どこにも無かったなんて言えない。
「まあ、枯れても聖女ですから、仕方なしにCクラスにでも、入れてもらったんじゃありませんこと?」
デボラ子爵令嬢が笑って言ってくれたけれど、Cクラスにも無かったわよ!
「えっ、ひょっとして聖女ということでお情けでBクラスに入れてもらったのかしら」
アレハンドラ様の取り巻き筆頭のエビータ伯爵令嬢が笑ってくれた。
私は下唇を噛んだ。
「まあ、パウリーナの名前はどこにも無かったの?」
嬉しそうにエビータが聞いてくれた。
私はその言葉に下を向くしか出来なかった。
もう最悪だ。
「パウリーナも可哀相に! 所詮平民のあなたでは学園に来るのが認められなかったということね」
喜々としてアレハンドラ様が言ってくれた時だ。
「た、大変です。アレハンドラ様。パウリーナの名前がAクラスにあります」
取り巻きの一人が大声で叫んでくれた。
「えっ?」
「嘘!」
私は慌てて、前にいるエビータを弾き飛ばす勢いで、その子の前に飛んで行った。
Aクラスの最後に私の名前がはっきりと書かれていた。
「ほ、本当だ!」
良かった。私は自分の名前を見つけられてほっとした。これで学園に確かに入学できる!
私が喜びで胸が一杯になった時だ。
「ちょっとパウリーナ! どういう事よ! 私達と同じAクラスなんて!」
私の後ろからアレハンドラ様が怒鳴り込んできたんだけど、
「本当に信じられませんわ!」
横でエビータまでが鋭い視線で睨み付けてきた。
「あなたどんな手を使ったのよ」
「信じられないわ。私達がBクラスなのに!」
サラが文句を言ってきた。
後できちんと見たらアレハンドラ様始めエビータや聖女の半分がAクラスだった。そして、残りの半分がBクラスだったのだ。本来は平民で下っ端聖女の私はBクラスのはずなのに、何故かA組に名前があった。
「そんなこと言われても私が決めた訳では……」
私は戸惑ってしまった。
「何を騒いでいる!」
私達の後ろから氷のように冷たい声がした。そこにはエドガルド様が凍てつくような視線を向けてこちらを睨んでいた。
「まあ、これはエドガルド様ではありませんか」
アレハンドラ様はそんな視線を物ともせずに目を輝かせてエドガルド様にすり寄った。
「お前は誰だ? 俺はお前に名前呼びするのを許した覚えは無いが」
「申し訳ありません。私ミラネス侯爵の娘のアレハンドラと申します」
慌てて、アレハンドラが優雅に挨拶した。
「ああ、聖女のミラネス侯爵令嬢か」
「まあ、エドガルド様。私をご存じですのね」
「ふんっ。側近から聞いたことがあるだけだ。そのミラネス侯爵の娘ともあろう者が騒ぎを起こすとはどういう事だ?」
「いえ、殿下と同じクラスに平民の女がいるとわかりましたので、ふさわしくないのでは無いかと指摘していたのです」
アレハンドラ様は私を見てくれた。
「クラス分けは学園が決める事でその方等がつべこべと言うことではない。それにこのパウリーナは母上が気に入った聖女だと聞いたぞ。その方は我が母の意向に逆らうのか」
ええええ!
私、王妃様のお気に入りなの?
それに今エドガルド様が何と私の名前を呼んで頂けたんだけど。
信じられない!
モブですら無い私の名前をエドガルド様が覚えていらっしゃるなんて!
私はうれしさに爆発しそうになった。
「いえ、そのようなことは滅相もございません」
アレハンドラ様は悔しそうな顔を私に向けてきた。これはまた後で愚痴愚痴言われるパターンだ。
少し憂鬱になったけれど、今はそれどころでは無かった。
その時に入学式の開始の予鈴が鳴った。
「時間ですので失礼いたします」
アレハンドラ様は取り巻き共を連れて慌てて体育館の中に入っていった。
「殿下、重ね重ね助けて頂いてありがとうございました」
私は名前呼びしないように注意してエドガルド様にお礼を言った。
「ふんっ、別に大したことでは無い」
そう言うと、あっさりとエドガルド様は体育館の中に入っていった。
でも、庇ってもらって感激した私は、その凜々しい後ろ姿をいつまでも見ていたのだった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
王太子に二度も助けられて、何故か同じAクラスになった平民パウリーナでした。








