王宮で食事時に礼儀作法の先生に指導されて食べ物の味がしなくなりました
私ははっと目覚めたら、自分の部屋では無かった。
ここはまた王宮の部屋だった。
「あれっ、私は大聖堂に帰ったはずだったのに」
「お目覚めになられましたか?」
私についてくれた侍女のブランカが声をかけてくれた。
その後ろには見知った顔が合った。
「あれっ? サラもいる」
驚いて私が声を上げると、
「サラも今日からはパウリーナ様の侍女になったのです」
「えっ、サラはでも聖女では?」
ブランカがさらりと言ってくれるんだけど……私には意味がわからなかった。
「少しお待ちくださいね」
私の言葉は無視してブランカが出て行った。
「サラ、一体どうなっているの?」
私はサラに聞いていた。
「あなたのエドガルド様が暴走したのよ」
「私のエドガルド様ってなんて事を言うのよ、畏れ多いわ! それよりもエドさんはどうしたの? 私、エドさんと一緒にいたと思ったんだけど……」
「えっ、あなた判っていないの?」
サラは私の言葉に心底驚いたような顔をして私を見てくれたんだけど……
サラによると私への扱いに激怒したエドガルド様がアレハンドラ様やエビータ達を集めて初級ポーションを徹夜で作らせたらしい。そして、その間に私をここに連れてきてくれたそうだ。その上でサラに絶対に私の傍から離れないように厳命して行ったのだとか。
「もう本当に大変だったんだから」
サラが教えてくれた。
「そうなんだ。でも、エドさんはどうしたの?」
私は再度質問していた。
私の質問にサラは大きくため息をついた。
「あなたのその鈍さが羨ましいわ」
「えっ、あのそれはどういう意味?」
私はエドさんに泣きついていたはずだから、エドさんがエドガルド様に知らせたって事だろうか?
「まあ、パウリーナちゃん、大丈夫だった?」
そこに王妃様が飛び込んで来られた。
「聞いたわよ。エドガルドがついていながらあなたを守れなかったんだって?」
「いえ、一緒についてきてくれたのはエドさんで、私が庇わなくていいっていったんです」
「ああ、エドだったわね。本当にあの子もどうしようもないわ」
視線をさまよわせて王妃様が文句を言ってくれた。
「でも、エドさんは薬屋の店員でアレハンドラ様達から仕入れる方ですから、聖女様達に嫌われたら、お店が困るからきつくは言えなかったのかと」
私の言い訳に何故か中にいた皆は微妙な表情をしているんだけど……
サラなんて完全に私を馬鹿にしていた。
「そう、エドもパウリーナちゃんの前ではちゃんと薬屋の店員になれているのね」
王妃様が喜んでおられた。そう言えばエドさんはエドガルド様の遠縁ということだったから王妃様の遠い親戚なんだろうか?
私はそのままなし崩し的に朝食を王妃様と一緒に取らされることになったのだ。
そして、食堂に行って、私は目が点になった。
「おはようございます、王妃様。それとパウリーナさん」
眼鏡をギラリと光らせたロッテン先生がそこに居たのだ。
「ごめんなさいね、パウリーナちゃん。どうしてもロッテンがあなたの食事するところを見学したいそうなのよ。私はパウリーナちゃんの食事のマナーはきちんとしていると言ったのよ。でも、どうしても見たいって言うから」
王妃様が申し訳なさそうに言ってくれるんだけど……
王妃様、そこは王妃様権限で断ってほしかったです。
だって私はロッテン先生の授業や補講で一度も褒められたことは無いのだ。
アレハンドラ様は完璧だったから補講で怒られるのはいつも私で、私は補講の間中指摘されまくっていた。
「まあ、パウリーナはこんなことも出来ないの?」
アレハンドラ様には馬鹿にされ続けたし……
クラスでも私以外のクラスの人間は貴族の子弟だから、礼儀作法もほとんど完璧で、いつも私一人が延々怒られているのだ。何故か礼儀作法の授業では絶対にエドガルド様も助けてくれないし……
他の授業の時は先生が意地悪してくれると横からにらみ返してくれたり、反論してくれたりするんだけど、ロッテン先生の時だけは私がいくら怒られても無視してくれるんだけど……
私はそんなロッテン先生の前では蛇に睨まれた蛙だった。
最初からガチガチになってしまったのだ。
「さあ、パウリーナちゃん。いつものお祈りを宜しくね」
王妃様が笑いかけてくれるんだけど……いや、あれはまずいですって……いくら私でも私のお祈りが皆と違うのは理解していた。あんなのロッテン先生の前でやったら、何言われるか判らないから!
でも、王妃様は私をニコニコして見ているだけだし、ロッテン先生は目を皿のように光らせて私を見てくれるんだけど……
ええい、もう、どうなっても知らない!
「天にまします我らの女神様! このように新鮮な野菜サラダや果物、宝石のようにきれいに作られたハムエッグを私のような卑しき者に与えていただきありがとうございます。では、いただきます」
「頂きます」
私のお祈りの後に王妃様が唱和してくれた。
私のお祈りを聞いて、ロッテン先生は頭を抱えてくれたんだけど……それは礼儀上良いのか?
こんなことを指摘したら千倍くらいになって返ってきそうだから言わなかったけれど……
「パウリーナさん。背筋を伸ばして、カラトリーを持つ手を震わせない。音をさせて食べてはいけません」
そんなこと言ってもロッテン先生に見られていると思うと緊張するのよ。
「ロッテンそこまで指摘したらパウリーナちゃんが食べられないじゃない!」
王妃様が指摘してくれて、その後はロッテン先生が黙ってくれたが、私は食べた物の味がしなかった。
食事の後でロッテン先生から延々と指導が入って食事のマナーの補講も決まってしまったのだ。
そんな、緊張する王宮で、唯一食べる時だけが楽しみだったのに!
私の悲鳴は誰も聞いてくれなかった……
ロッテン先生に虐められて最悪のパウリーナでした。
次は学園です。
続きは今夜です。








