王太子視点 想い人を泣かした奴らを呼び出して、初級ポーションを一人50本徹夜で作らせました
俺の腕の中でリーナが泣いてくれた。
先日雷が怖いと泣いたように。
リーナが号泣していた。
失敗した。こんな風にリーナが泣くなら、リーナがどれだけ反対しようが無視してミラネス侯爵令嬢達を怒鳴り散らしてやれば良かった。
何が『下っ端聖女のくせに!』だ!
その下っ端聖女以下の働きしかしていないのはお前らだろうが!
リーナはクエンカの街を強いて言えばこの国を守ってくれたんだよ!
何故そう言わなかったんだろう?
リーナに止めるように言われてもそう言えば良かった。
考えたら別に俺が王太子だとばらしても良かったかもしれない。
俺は自分自身に沸々と怒りが湧いてきた。
もう許さない!
俺は覚悟を決めた。
俺は俺の腕の中で泣くリーナを優しく抱き締めた。
リーナを泣かせてしまって後悔したが、俺の胸の中で泣く、リーナも愛おしかった。
リーナは泣きつかれたのか、また、俺の腕の中で寝落ちしてくれた。
その涙にまみれた顔を見て、俺は自分の不甲斐なさを恥じた。
誰が役立たずだ。
リーナは魔物の大群を一撃で浄化してくれたんだ。今回のスタンピード撃滅の最大の功労者だった。それを、役立たずだ、下っ端聖女だと!
あいつらもう許さん!
俺は怒り狂っていた。
「サラ、リーナの部屋はどこだ?」
俺はこの前、退学になるところをリーナの善意で助けられたサラを呼んだ。
この前、こいつのせいで俺はリーナと二人で資料室に閉じ込められた。
俺はリーナが気絶している3日ほど前に、二度目は許さないと引導を渡すために、エドの姿でこの大聖堂に来たのだ。
エドの姿の俺を見た途端、
「お、王太子殿下!」
サラは土下座せんばかりに頭を下げてくれたのだ。
エドを閉じ込めた後にエドガルドとして俺が出て来たから、サラには俺の正体がばれたそうだ。
サラが言い訳するには、ミラネス侯爵令嬢と隣国の聖女が色々と暗躍しているから気をつけろとリーナには確かに伝えたというのだ。
気を付けるように注意喚起したから、まさかこんな単純な手に引っかかるはずはないと安心していたのだとか……
そんな手に引っかかった俺とリーナが悪いみたいではないか?
俺がじろりと睨むと、
「決してそのようなことはございません。申し訳ありませんでした」
サラはまさに土下座せんばかりに謝ってきた。
俺としては大聖堂から追放するつもりだったけど、こいつの家はここ三百年可もなく不可もない辺境の男爵家だ。勝手に追放したって聞いたら、また、リーナが悲しむかもしれない。
俺はこいつを手駒として使うことにしたのだ。
サラは俺の先頭に立ってリーナの部屋に案内してくれた。
地下の物置小屋のような狭い部屋なんだが……
「何だ、この安っぽい部屋は? 聖女は皆こんな部屋に住んでいるのか?」
俺がきっとしてサラを見ると、
「私はパウリーナとそんなに変わらない部屋です。ただ、アレハンドラ様たちはもっといい部屋だと思います」
サラが教えてくれた。
もう許さない。こんな使用人部屋に俺のリーナをいさせるなど絶対に許さない。
俺はベッドにリーナを寝かせた。
直ちに布団をサラが掛けてくれた。
リーナは泣き疲れた顔をしていた。
俺は思わずそのリーナのおでこにキスをしていた。
横でサラが固まっているんだけど……
「サラ、俺は少し出てくる。その間はお前はどんなことがあってもリーナを守れ。例え誰が来ても俺以外は部屋の中に入れるな。刃向かうやつには王太子の命令だと伝えろ」
俺はきつくサラに命令した。
「判りました」
コクコクとサラは頷いた。
俺はミラネス侯爵令嬢等のリーナへの仕打ちに対する怒りで髪の毛がチリチリした。
「えっ、王太子殿下、髪の色が銀色に戻っていますが」
「良いんだよ。あいつらには王太子として話す」
そう言うと俺は粗末なリーナの部屋を出た。
リーナの部屋に防御の魔術をかけた。
そして、俺はベルタの部屋に向かった。
ベルタの部屋はリーナの部屋に比べてとても豪勢な部屋だった。
こいつらがリーナの生き血を吸って生きているのか?
ダアーーーーン!
怒りのあまり、俺は思わず扉を魔術で吹っ飛ばしていた。
「ギャーーーー」
驚いてベルタが叫び声を上げた。
「何事だ?」
慌てて、騎士達が飛んで来た。
「お、王太子殿下!」
でも、騎士達は俺を見て驚いて固まってしまった。
「殿下、何事ですか?」
慌ててベルタが出て来たがとても不満そうだった。
「ベルタ、貴様、母からの命令を全く守っていないそうだな」
俺は氷のような声を出していた。
「えっ、いえ、そのようなことは」
「嘘をつけ。母は、他の聖女達がパウリーナにばかり初級ポーションを作らせて、他の聖女達が全く作っていないことを知って激怒してお前に命じたと思うのだが」
「殿下、私は全聖女にその旨は伝えました」
俺の言葉にベルタは必死に言い訳した。
「そうか、なら、そのそいつらの作った初級ポーションをここに出せ」
「えっ、いえ、それは……」
ベルタは笑って誤魔化そうとしてくれた。
「どうした? 無いのか?」
「いえ、そのようなことは。聖女達は各自部屋に持っているのだと思います」
「ほおお、今日、母の命令でエドにパウリーナをここに送らせたところ、聖女達が集団でパウリーナを虐めて、本来自分たちが作るはずだった初級ポーションを、パウリーナに作るように命じていたという報告が上って来た。ベルタ、それはどういう事だ?」
俺は冷たい視線でベルタを見た。
「えっ、いや、そのようなことはないかと。大方エドなる者が勘違いして大げさにお伝えしたのでは……」
その傲慢な答えは俺の激怒を呼んだ。
俺は剣を抜き様、ベルタの顔の横に突き刺したのだ。
「ギャーーーー」
ベルタは大きな悲鳴を上げていた。
「貴様、ふざけているのか?」
「い、いえ、殿下そのようなことは」
「直ちにパウリーナとサラ以外の全聖女をここのホールに集めろ」
「は、はい!」
息も絶えだえにベルタが頷いた。
「あ、貴方たち、直ちに全聖女に集合をかけなさい」
失禁したのか水たまりの中にいるベルタが震えながら騎士達に指示した。
「殿下、どうされたのですか?」
俺の顔を見て喜々としてミラネス侯爵家令嬢がやってきた。
皆嬉しそうに俺の周りによって来た。
「ミラネス侯爵令嬢。初級ポーションはどうした?」
「初級ポーションですか?」
全く判っていない顔でミラネスは俺の顔を見てきた。
「これからは各自で初級ポーションを作るようにと母から指示が出ていたはずだ。その初級ポーションを持ってくるようにとベルタには伝えたはずだが」
俺の言葉にベルタがびくりとした。
「まあ、初級ポーションなど、下っ端聖女が作るものですわ」
こいつは俺の地雷を踏み抜いてくれたのだ。
俺は必死に剣を抜くのを抑えた。
「ほおおおお、お前は母の、いや、筆頭聖女様の言うことが聞けないというのだな」
俺はミラネス侯爵令嬢を睨み付けていた。
「いえ、そのようなことは」
やばいと思ったのか、侯爵令嬢は愛想笑いをしてくれた。
「母は本気だ。母の言う事が聞けないなら、この大聖堂から去れ。少なくとも二度と俺の前に出てくるな」
俺はこいつらを許すつもりはなかった。
「そ、そんな」
俺の氷のような声にさすがの侯爵令嬢も焦りだした。
「デンパサール伯爵令嬢。お前はどうなのだ? 母の言う事を聞くのか?」
「当然でございます。王太子殿下」
デンパサール伯爵令嬢はコクコクと頷いていた。
「なら、どこに初級ポーションがあるのだ」
「それは……」
デンパサール伯爵令嬢は固まってしまった。
「お前達も何をしてるのだ。母の指示かあってから既に5日も経っているぞ。1人50本。直ちに初級ポーションを作れ。作るつもりのないやつは母にはっきりと報告する」
「そ、そんな」
ミラネス侯爵令嬢は蒼白になっていた。
「何だ。ミラネス侯爵令嬢は作るつもりもないのか?」
俺が地に這うような声で言ってやると
「いえ、そのようなことは。直ちに作ります」
慌てて皆道具を取りに動き出した。
「言っておくが必ず、自分で作るのだぞ。それができない限り中級や上級のポーションは作らせないからな」
「そんな、殿下。それでは中級や上級のポーションが足りなくなってしまいます」
ベルタが言いだしてくれたが、
「お前らが出来ないのならば母に考えがあるそうだ。気にしなくても良い。それにしても初級ポーションくらい簡単に作れずにどうする? 母は初級ポーションも楽々と作れない者に自分の後を継がせるつもりはないと言っていたぞ」
俺の言葉に慌てたミラネス侯爵令嬢達は本当に慌てだした。
でも、リーナは簡単に200本のポーションを作るのに、侯爵令嬢達は10本の初級ポーションを作るのも結構手間取っていた。
聖女達は半分泣きながら徹夜で一人50本の初級ポーションを作っていた。
王太子の怒り爆発です。
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