大聖堂で他の聖女達に散々下っ端と蔑まれまれて薬屋の店員の胸の中で泣いてしまいました
久しぶりに会ったエドは私の手を引いてどんどん歩いて行くんだけど、決して短足胴長では無いが、歩幅の短い私は必死についていこうとして足がもつれた。
「キャッ」
転けそうになって、慌ててエドが抱き止めてくれた。
顔がエドのたくましい胸に当たる。
「ごめん、少し早く歩きすぎた」
エドが謝ってくれた。
「ごめんなさい。私も歩幅が短いから」
私も顔を上げて謝る。
目の前のエドの顔が近くて思わず少し離れようとした。
でも、エドががしっと私の肩を抱いてくれていて、離れられない。
周りにいた侍女達が思わず私達を見てきて、
「エドさん、近いです」
私が注意すると、
「ああ、ごめん」
エドも慌てて私を離してくれた。
私は少し赤くなっていた。こうして見るとエドもとてもイケメンだ。前世なら女達が群がって大変だと思う。薬屋でも店先に立つと女達が寄ってきて収拾がつかなくなるから、店先には出ないとか言っていたから彼女の二三人居るのかもしれない。
「リーナが歩くのが遅いのは判っていたことだから、ちょっと別のことを考えていて不注意に速く歩いてしまった」
「何を考えていたんですか?」
他の女のことだろうか?
さっきから王宮の侍女達がエドを見て顔を赤らめて通り過ぎていくし、私を見ては白い目をしていくし……
「いや、それはリーナには関係ないし……それよりも大聖堂に帰って良かったのか?」
エドは話題を変えてくれた。
「えっ、だって私は下っ端聖女ですよ。いつまでも王宮にいる方がまずいです」
「いや、リーナが下っ端なんて事はないだろう! あれだけのことをしたんだから」
エドが褒めてくれて私は嬉しくなったけれど、
「私は平民聖女ですから」
王妃様は聖女は皆平等だと言うけれど、どう考えてもそれは違うと思う。私は聖女の中では一番身分の低い聖女なのだ。
「それは関係ないと思うけれど」
エドさんが私の考えを否定してくれたけれど、現実は厳しいのだ。
通りかかる人達が二人でいる私達をじろじろを見て通り過ぎていく。
「それよりもエドさん行きましょう」
皆、イケメンのエドに地味な小さい私を見て変な顔をしていく。釣り合いは取れて無いなんて判っているから!
いたたまれなくなって私はエドさんを促して歩き出した。
エドさんは再び私の手を繋いでくれた。エドガルド様といい、エドさんといい、皆私の手を繋いでくれるんだけど、私を小さい女の子と勘違いしているんでは無いんだろうか?
「それよりも、エドさん。雷鳴ったときに抱きついてごめんなさい」
「ああ、あのことか。悲鳴を上げてしがみついてくるリーナもとても可愛かったよ」
「えっ、可愛かったって」
私はエドにそう言われて真っ赤になった。
でも、ギャーギャー叫んでしがみつく私は決して可愛くなんて無かったはずだ。
「私本当に雷は駄目で、それに可愛くなんて無いですよね」
「いや、しがみついてくるところはリスみたいでとても可愛かったって」
「もう、からかってくれて」
私は少しむっとしてエドさんを叩いたけれど、心の中ではエドとの会話を楽しんでいた。
エドガルド様みたいに気を遣わなくて良いし、久しぶりにエドと話せてほっとしていたのだ。
でも、その楽しい時間も大聖堂に帰るまでだった。
「ちょっとパウリーナ! これはどういう事なの!」
私がエドと一緒に大聖堂に帰ったら、入り口で仁王立ちのアレハンドラ様に捕まってしまったのだ。
アレハンドラ様は後ろにいつもの取り巻き達を20名ほど連れていた。
何があったんだろう?
「どういう事と言われますと?」
私はよく判らずに尋ねていた。
「しらばっくれないで! あなたが何かしたんでしょう。パウリーナだけに初級ポーションを作らせずに、これからは各自1日10本作るようにってどういう事よ!」
アレハンドラ様の手には掲示板に貼られた指示書があった。
「それは当然の事じゃないか」
呆れてエドが言いだしてくれたけれど、アレハンドラ様を怒らせたらまずいわよ。
「何ですって!」
「薬屋の店員は黙っていなさいよ!」
アレハンドラ様とエビータがエドさん相手に怒りだしたんだけど……
「お二人とも、今は薬屋の方よりも、パウリーナですわ」
慌てて横からサラが皆の目を私に向けてくれたんだけど、サラは何かエドさんにとても気を遣っているように見えた。サラはエドさんに気があるんだろうか?
私はそう思うと少し胸が痛くなった。
「それもそうね」
「薬屋の事なんて今はどうでも良いわ」
聖女達は再び私を見た。
「私はシスター・ベルタにも抗議したのよ。でも、シスター・ベルタはこれは筆頭聖女様からのご命令だからどうしようもないって言うのよ。パウリーナ、あなた何をしたの?」
アレハンドラ様は私に掴みかかるくらいの勢いで私を睨み付けてきたんだけど……
「何をしたって言われましても……」
正直に初級ポーションしか作っていないって王妃様に話しただけなんだけど……
でも、そんなこと言ったらまたアレハンドラ様の怒りに火をつけそうだし……
「誤魔化さないで! 他の聖女様たちが緊急事態の魔物討伐の支援に出られて人手が足りないから、私達は必死にポーションを作っていたのよ。でも、中級ポーションの数はまだなんとかなったんだけど、初級だけが圧倒的に足りなくなったのよ。それで理由を探したらあなたがいないっていうじゃない。どこを探してもいないし、ベルタにあなたがいないと言ったら、パウリーナは王妃様のご用で出たって言うじゃない! あなたは初級ポーションしか作る能がないのに、今まで何をしていたのよ!」
エビータが私を睨んできた。
「本当よ。皆が必死になっているのにどこで何をしていたの?」
「はああああ! 何を言っているなんだ。リーナは」
「エドさん!」
私は私の為に援護してくれようとしたエドさんを止めた。
「リーナ、しかし」
「大丈夫だから、エドさん、ありがとう」
私は平民の下っ端聖女なのだ。
皆を支えていかねばならない。
それは私も皆みたいに中級ポーションや上級ポーションを作っていたいけれど、それは許されないことなのだ。
「そうよ。パウリーナ、あなたはここでは一番身分の低い下っ端聖女なのよ。あなたは王妃様のお気に入りかもしれないけれど、それを笠に着ていい気になっているんじゃないわよ!」
「平民の下っ端聖女のくせに!」
「今までサボっていた分をさっさとやるのよ!」
「本当に最近生意気よね!」
他の聖女達は散々文句を言って去って行った。
嵐は通り過ぎた。
私は自分の部屋に向かおうとして目の前がぼやけた。
一粒の涙がこぼれたんだけど……それも次から次に……
蔑まれるのはいつものことなのに、何故か涙が止まらなくなったんだけど、何でだろう?
王妃様達に甘やかされすぎたのかもしれない。
これではいけない。何しろ私は平民下っ端聖女なのだ。
そんな私をエドさんがぎゅっと抱きしめてくれた。
「えっ!」
私は驚いたけれど優しくエドさんが抱きしめてくれたのだ。
私は雷の時みたいにエドさんの胸で泣いてしまったのだ。
ここまで読んで頂いて有難うございました。
パウリーナを抱きしめるエドの髪が怒りに震えて銀に変わりつつあるんだけど……
続きは今夜です。
お楽しみに!








