王宮で目を覚ました私は王妃様の前から薬屋の店員に手を引かれて大聖堂に帰りました
私はエドと喫茶店に来ていた。
生まれて初めての喫茶店でとても嬉しかった。
まあ、でも、前世ではたまに行っていたんだ。
1人で…………
私の目の前でバカップルが食べさせ合っているのをたまに見て、ムカムカした記憶があった。
「はい、リーナ」
「えっ?」
私はエドに呼ばれてそちらを見たら、私の口の中にイチゴが入ったんだけど……
ええええ!
よく見たら私、エドにイチゴを食べさせられていたんだけど……
「きゃっ、あそこ食べさせしてる!」
「本当だ!」
周りに言われて私は真っ赤になった。
「はいっ、リーナ!」
エドは周りの反応なんてお構いなしに、今度は切ったケーキのかけらを私の口元に持ってきてくれたんだけど……
「えっ?」
「食べないのなら俺が食べるよ」
「いや、待って!」
引こうとしたエドのスプーンに私はぱくついていたのだ。
ギャーーーー
またやってしまった。
周りの視線が冷たい!
真っ赤になった瞬間、私は目を覚ましたのだ。
「エド!」
目の前にいる人間にそう言ったら、
「良かった。リーナ、気付いたんだ!」
エドが喜んでくれたけど、髪の毛が銀色で良くみたらエドガルド様だった。
「す、すみません、間違えてしまって!」
慌てて私が謝ると、
「気にしなくて良いよ。同じだから」
寝起きの私にはエドガルド様の言うことが良くわからなかった。
普通は他の男と間違われたら怒るものだけど、まあ、私はヒロインじゃないから、気にならないのかもしれない……
「それより、リーナが気を失ってから3日も起きないから心配したよ」
「3日も経っているんですか!」
私は驚いた。
「まあ、でも、幸せそうな顔していたから、良い夢でも見たの?」
「別に」
エドガルド様に言われたけれど、エドに食べさせられて、赤くなっていたなんて言えない!
「ふうーーーん」
赤くなった私を見て、何かエドガルド様は不機嫌になったんだけど、何でだろう?
「エドガルド! 何を勝手に淑女の寝室に入っているの! すぐに出なさい!」
そこに怒った王妃様が入って来られた。
「えっ、いや、母上……じゃあ、リーナ、また来るから」
「二度とパウリーナちゃんの寝室には入ってくるな!」
逃げて行くエドガルド様に王妃様が手を上げていた。
「本当にもう、あの子もどうしようもないわね。まあ、それだけあなたに執心してるんだと思うけれど」
王妃様が何か言われるが、それはないと思う。おそらくエドガルド様はわたしを妹分くらいにしか思っていないはずだ!
私が気絶した後のあと始末は結構大変だったらしい。
私のミスでせっかく作った上級ポーションが魔物達にひっくり返されて使えなくなったし、遅れてきた聖女達が不眠不休で怪我した皆を治してくれたそうだ。
その大変な時に私は気絶して寝ていたなんて、顰蹙以外の何者でもないだろう!
「なに言っているのよ、パウリーナちゃん。あなたが魔物達の大半を浄化してくれたから私達は助かったのよ! あのままだったら、私達は皆死んでいたわ。本当にありがとう!」
王妃様にお礼を言われたんだけど、私は怒りにまみれて、魔術をぶっぱなしただけで、なにもしていないんだけど……
王妃様の言葉によると私が魔物の大群を浄化したらしい。
私が放った魔術が浄化というものだったとか……
でも、せっかく作った上級ポーションを無駄にされて怒りにまみれてやっただけだし……
私は大量の魔力を使ったからどうやら魔力が枯渇して気絶してしまったらしい。
もう一度同じようなことが出来るだろうか?
またどこかで練習してみよう。
エドに頼んだら連れて行ってくれるだろうか?
後で聞いたんだけどヒロインのセシリアが戦いのどさくさに紛れて行方不明になっているんだとか。
大丈夫なんだろうか?
まあ、あの図太さならどこでも生きていけるとは思うけれど……ゴブリンの大軍に襲われても逆にゴブリン達を従えて君臨しそうだし……私はそんなに心配はしていなかった。
エドガルド様が言われるには、今回の件はポルト王国が噛んでいる可能性があるので、いろいろ確認したかったと残念がっておられたが、あのヒロインが何かしたんだろうか?
詳しくは教えてもらえなかった。
その日は1日中寝ているように王妃様に厳命されて私はベッドで寝ていた。
でも、さすがに次の日には私は元気になっていた。
そろそろ大聖堂に帰った方が良いと思う。私がいなくなってもう5日以上経っているし、初級ポーションを造りに帰らないとまずいと思う。
それに下っ端聖女の私が王宮にいつまでもお世話になっているのはまずいと思うのだ。
アレハンドラ様の怒りも怖いし……
その旨を王妃様に言ったら、
「まあ、パウリーナちゃん。あなたはずっと王宮にいて良いのよ。エドガルドもあなたを気にいっているみたいだし」
王妃様が言いだしてくれたんだけど……
「いえいえ、私みたいな平民聖女がいつまでも王宮にいたら皆様のご迷惑になりますから」
私ははっきりと言いきった。
「ええええ! そんなことはないわよ」
「それに私がいない間のポーションの在庫も気になりますから」
王妃様に即座に否定されたが、帰ったら三日三晩初級ポーションを作らされたらたまったものではないのだ。
「そうなの? 別に初級ポーションなんか他の聖女に作らせたら良いと思うんだけど」
「いえ、薬屋さん達が困っていたら大変ですから」
それにエドさんにも久しぶりに会いたい……他の薬屋が多少困っても良いけれど、雷の時に抱きついて迷惑をかけたエドさんを困らせるのはまずいと思ったのだ。
「せっかく娘が出来たみたいで、私は嬉しかったのに!」
そう言いつつ、王妃様が傍のセナイダさんに何か伝言された。
王妃様は人の心を掴むのが上手い。
そういう風に言われたら私も嬉しかった。
「ありがとうございます。私も王妃様にポーションの作り方を教えて頂いてとても嬉しかったです」
「それはベルタが悪いわ。聖女は平民も貴族も関係無く皆平等なのよ。本来はあなたにはベルタが教えなければいけなかったのに、教えていないなんて信じられないわ。私からもしっかりと言っておくわね」
王妃様がそう言われるんだけど、後でブーメランで怒られるのは私だから、そこは穏便に済ませて頂きたいんですけど……
そこにノックがして男の人が入ってきた。
「お呼びと伺い参上しました」
「エドさん!」
私は驚いてエドさんをまじまじと見た。
「エド?」
王妃様がエドさんの顔をまじまじと見ているんだけど……
「パウリーナさんを大聖堂までお見送りすれば宜しいですね」
エドさんが言い出してくれた。
「まあ、パウリーナちゃんはエドの顔を見ると嬉しそうにするのね」
王妃様がいたずらっ子のような目で楽しそうに私の方を見てくれた。
「薬屋のエドさんには色々お世話になっていて、大聖堂と学園の送り迎えもしてもらっているんです」
「へええええ! それで30分も早く出ているのね」
「30分前ですか?」
私が不思議そうに聞くと、
「いや、何でもないよ」
慌ててエドさんが首を振ってくれた。
エドさんは怒ったように王妃様を睨んでいるんだけど……薬屋の店員がそんな態度して良いの?
「あのう、エドさんは王妃様とお知り合いなのですか?」
私は思わず聞いていた。
「ええ、薬品を王宮にもお買い求め頂いていますから」
王妃様の前だからだろうか? エドさんはとても他人行儀だった。
「2人で街で寄り道なんかもしているの?」
「はい、一緒に……」
「リーナ、急いでいるんだろう。さっさと大聖堂に送ろう」
エドさんが急に慌てだしたんだけど、王妃様の前でこんな風に話しても良いんだろうか?
「まあ、良いわ。エド、またパウリーナちゃんとの事はいろいろ聞かせなさいね」
王妃様が楽しそうにおっしゃるんだけど、
「何もないですよ。では行こうか」
逃げるようにエドさんが私の手を引いて歩き出してくれたんだけど……
「あ、王妃様、今までありがとうございました。失礼します」
私は慌てて王妃様にお礼をすると、何故か怒った顔のエドさんに引っ張られて部屋を出たのだった。
「パウリーナちゃん。いくらエドが優しいと思っても密室に二人きりは駄目よ」
後ろから王妃様の声が聞こえて、エドが扉をぴしゃりと閉めてくれたんだけど、何でエドが機嫌が悪いか私にはよく判らなかった。
母親の追及に恥ずかしがってさっさと逃げ出したエドと
相も変わらず何も判っていないパウリーナでした。
次は大聖堂、帰って早速問題ごとが起こります。








