旧都に転移する時に王太子が抱きしめてくれたら、着いた途端にヒロインに引っ叩かれそうになりました
私達は近衛騎士の先導で王宮の中にある転移の間に移動した。
おおおお、これは凄い。
ベージュの高い壁に囲まれた広間の真ん中には巨大な魔法陣が描かれていた。
エドガルド様が大鍋を持ってくれているんだけど、大変申し訳ない。
私が持ちますと言えないところが辛い。
私背負うと鍋の方がでかくて鍋の怪物になってしまってそもそも背負えない……
騎士さんと侍女さんが上級ポーションの材料を大量に持って来てくれた。
さすが王宮。これだけあれば一山当てられるんじゃないだろうか? 何に投資するというのはあるけれど……
「エドガルド様!」
私は聞き慣れた甲高い声が聞こえた。
外からドレス姿のヒロインがかけてくるのが見えた。
「セシリアさん。どうしたのですか?」
王妃様が問いただした。
「これは王妃様。私もきっとお役に立てると思って参ったのです」
聖女は自信満々に言ってくれた。
「私は未成人の聖女は大聖堂でポーションを作っておくようにと指示をしたはずですが」
少し怒りを抑えて王妃様が指摘された。
「しかし、パウリーナさんも未成年だと思うのですが……」
私の方を見てセシリアが文句を言ってきた。
「パウリーナさんは未成年で申し訳ないけれど無理言って一緒に行ってもらえるように私が頼んだのです」
王妃様に庇って頂いたけど、
「しかし、レベルの低い彼女が行くよりも私が行った方が良いと思うのですが」
さすがヒロイン。いつものとおり強引だ。
まあ、確かに私は最近計っていないけれど、レベル10で、20越えの聖女の方がレベルは上だ。
それに私もヒロインに敵対したくないんですけど……
「セシリアさん。筆頭聖女の私が決めた事に反対するというのですね」
王妃様が能面で質問された。
これは相当怒っていらっしゃる。
「いえ、そういう訳ではありません。ただ、私は……そうだ! 癒やし魔術が出来るのです。必ずやお役に立てると思います」
さすがのヒロインのセシリアも少し躊躇った。
「えっ、あなた学園に行っていないのに、もう癒やし魔術が使えるの?」
「はい。王弟殿下に覚えるように指導されまして」
ここぞとばかりに必死にセシリアはアピールとした。
「王妃様、ここは癒やし魔術の使い手は多い方が良いのではないでしょうか」
イネス侍女長が王妃様の後ろから声をかけた。
「本当に来れるの? 現場は大変よ」
王妃様が半信半疑で尋ねられた。
「問題ありません。パウリーナさんがいけるのならば私でも大丈夫です」
セシリアが言ってくれた。
「判りました。後で文句は聞きませんからね」
「はい。絶対に文句は言いません」
セシリアは言い切った。
「判りました。セナイダ。あなたがこの子を守ってあげて」
王妃様が自分の騎士の一人を指名した。
「判りました」
「えっ、私はエドガルド様と一緒に赴きたいのですが」
「俺はパウリーナさんを守る。嫌なら来なければ良いだろう」
エドガルド様は塩対応なんだけど……いや、ヒロインはセシリアだから出来たらセシリアを守って頂きたいんですけど……
「そんな!」
エドガルド様はその上更に私の肩に手を置いてくれるんだけど……
セシリアが射殺さんばかりに私を見てくれた。
「文句があるのならばセシリアさんは置いていくわ」
「文句はありません。大丈夫です」
慌ててセシリアは否定した。
でもその眼光鋭く私を睨んでくるんだけど。
私はエドガルド様の陰に隠れた。
これでセシリアの視線は届かない。
背が低いのはこういう時に得だ。めったに嬉しい時はないけれど……
これでまた来週からセシリアに虐められるのが決定した。
あなた覚えていなさいよとその目は言っていたし。
今度は何をされるんだろう?
私は頭が痛くなってきた。
「心配なの、リーナ? 大丈夫、君は俺が守るから」
エドガルド様が大きな声で言われるが、セシリアの前で言ってほしくないんですけど……
「では皆良いわね」
王妃様が一同を見渡した。
「えっ、これだけなんですか?」
少し不安そうにセシリアが聞いていた。
「私達は先遣部隊です。後で聖女の本隊は来ます」
王妃様が説明してくれた。
「ではクエンカに向けての転移を行います」
魔術師が宣言してくれた。
王宮魔術師がこの転移の魔法陣を使って王都と各地を移動させてくれるのだ。
でも、私は転移は初めてだった。
どんな感じなんだろう?
少し気持ちが悪くなるって先輩聖女達がはなしているのを聞いたことがあった。
私は少し不安になった。
「リーナ、大丈夫だから」
私が脅えたのが判ったのかエドガルド様が私の手を繋いでくれた。
私は少しほっとした。
私はその様子を歯ぎしりしながらセシリアが見ているのを見ていなかった。
「転移!」
魔術師の叫び声とともに、魔法陣が金色に光って周りが白くなる。
エレベーターに乗った時のように上にすいっと持ち上げられたような気がした。
私はエドガルド様の手を強く握ったら、今度はエドガルド様が私を抱き寄せてくれたんだけど……
私は何故か雷の時に怖がった私をエドが抱きしめてくれた事を思い出した。
そして、また降りる感覚がした。
と真っ白だった周りに壁が現れる。
「転移完了です」
係官の声に私は簡単に転移が終わってほっとした。
「エドガルド、いつまでパウリーナちゃんを抱いているの?」
呆れた王妃様の声がした。
それを聞いて真っ赤になった私は慌ててエドガルド様の手から逃れる。
「パウリーナ! あなたよくも私のエドガルド様に抱きついたわね!」
しかし、私の目の前には怒り狂ったセシリアがいたのだ。
やばい、このままではほっぺたを引っ叩かれる。
私は固まってしまった。
ここまで読んで頂いてありがとうございます
続きは明日です
お楽しみに!








