薬屋の店員視点 下っ端聖女と一緒に部屋に閉じ込められてしまいました
パウリーナは本当に抜けていた。
学園から歩いて帰る途中で、どこからも見える大聖堂に戻るのに、迷って遅くなったってどういう事だ?
そうか、パウリーナは方向音痴なんだ!
俺は気付いてしまった。
このままでは良くないだろう。
学園の行き帰りに歩いても30分くらいだけど、途中で迷ったらどうなる?
なにしろ、大聖堂の初級ポーションの大半はこのリーナが作っているのだ。
迷子になるよりも誰か変な奴に誘拐されたりしても大変だ。
リーナなら簡単に食べ物に釣られてどこかに連れて行かれそうだし……
こうなれば仕方が無い。俺は行き帰りをエドとしてリーナとともにすることにした。
リーナは喜んでくれたけれど、俺はとても忙しくなってしまった。でも、まあ、二人きりになれるし、これはデートなんじゃないかと俺も少し喜んでしまった。
まあ、でも、行き帰りの馬車の中はデートと言うよりも王太子への愚痴と文句となっていた。
王妃から贈られた席で一緒に授業を受けさせられていてカップル席のようで嫌だと言っていたし、俺もカップル席とは言い得て妙だと思った。
王妃が送った家庭教師の事をリーナは知らなかった。
まあ、その時は俺と一緒に初級ポーションを作れるだけ作っていたからな。勉強する暇なんてなかったと思う。それに反発したアレハンドラ達によって家庭教師はすげなく追い返されていたし……
だから王妃もしゃかりきになってリーナの教育に力を入れだしたんだと思う。
王太子に命じて予習復習も完璧にさせたいんだろうけど、それでは息が詰まって死ぬとリーナは叫んでいた。
実際に勉強机でリーナは涙目で勉強しているみたいだし、周りも少し同情してくれた。王太子殿下は鬼だとかリーナは文句を言っていたし、必死に勉強させよう努力している王太子が俺は少し可哀相になってきた。
机を王妃の机にしてからはリーナは直接の虐めは受けていないみたいだが、嫌みは相変わらず言われているみたいだ。
アレハンドラとセシリアは俺とリーナの噂を必死に流してくれていた。
それを王太子の側近のカルロスやダミアンに吹き込んだようだけど、
「薬屋のあいつのことだろう」
「まあ、良いんじゃ無いの?」
今ひとつの反応にしびれを切らしたのか、王太子に直接言ったようだ。
「エドガルド様。パウリーナさんは大聖堂に出入りしているエドさんととても親密だそうですよ」
セシリアがわざわざ王太子にチクったそうだ。
「薬屋のエドだろう? 送り迎えしてもらっていると聞いているよ」
「それ以上に親密だと聞いています。何でも馬車で良く寄り道をしているとか」
「ああ、甘味処とかに連れて行ってもらったと言ってパウリーナさんは喜んでいたみたいだよ」
「エドガルド様は気にならないのですか?」
「えっ、それは俺にパウリーナさんをそういう所へ連れて行けというのかな」
「えっ、いや、そんな……そこまでされる必要はないと思います」
王太子に話したのに、王太子の反応がもう一つだったので、慌ててセシリアは逃げていったそうだ。
「殿下聞かれましたか?」
そこに今度は喜々としてアレハンドラがやってきてたそうだ。
「ああ、セシリアさんが色々教えてくれたよ。甘味処にエドがパウリーナさんを連れて行っているんだろう? 今度は俺がパウリーナさんを連れて行った方が良いんじゃ無いかと勧めてくれていたよ」
「えっ?」
アレハンドラは王太子の反応に驚いて逃げ去ってしまったらしい。
「あの馬鹿何言っているのよ!」
怒っていたそうだが……
パウリーナはコロコロ表情が変わってとても面白かった。
「そんなに感情が表に出て、それで聖女が務まると思っているのですか?」
ロッテンにはいつもぼろくそに怒られているそうだが、別に普通に聖女をやる段には何も問題はないはずだ。それに例え筆頭聖女になろうが聖女は民に寄り添うのが仕事だ。喜怒哀楽が表情に出ても良いだろう。
のんべんだらりの無表情な王や王妃は民に寄り添えない。民と共に喜び共に怒り共に哀しみ共に楽しむ方が民に親しみを持ってもらえるだろう。
その日もいつものようにリーナを迎えに行くと、リーナはいなかった。
「パウリーナさんなら魔術資料室に本を取りに行きましたよ」
サラとか言う女に教えてもらった。
「ああ、ありがとう」
礼を言う俺に
「お気をつけられて」
女が心配そうな顔で言ったような気がしたが、俺は大して気にもとめなかった。
誰かに襲われても俺は大丈夫だ。
でも、待てよ。そうか、リーナが誰かに襲われているのか?
俺は慌てて駆け出した。
「キャーーーー」
資料室の前でリーナの悲鳴が聞こえた。
「リーナ! 大丈夫か?」
俺が中に慌てて飛び込んだらリーナが本の山に埋もれていた。
「エド!」
「なんだ、これは」
俺は呆れてリーナを助け出してやった。慌てて損した。
俺がほっとした時だ。
雷が近くに落ちたのだ。
「キャーーーー」
リーナが俺に抱きついてきたのだ。
「リーナ!」
俺は驚いたけれど、
「キャーーーー」
雷が落ちて再度リーナが俺にしがみついていた。
リーナは雷が駄目みたいだ。こんなの良いのかと思いながらリーナの柔らかい体に戸惑いながらも抱きしめてやったその時だ。
ダン!
大きな音とともに部屋の中がほとんど真っ暗になってしまったのだ。
「ギャーーーー」
もっと強くリーナが俺にしがみついてきた。
「何だ? 入り口が閉められたのか?」
こういうことか!
あのサラの表情の意味が俺には理解できた。
でも、あいつは一度退学になりそうだったのをリーナに助けられているのに、何をしている? 本当に退学になりたいのか?
そうか、アレハンドラらの言う事を聞かざるを得なかったのか?
「リーナ、入り口を見に行こう」
俺は取りあえず、リーナの手を引いて暗がりの中を入り口に向かう。
転けそうになってひしっとリーナが俺にしがみついてくれた。
俺はサラに怒りを覚えたが、これはこれで役得ではないかと思えた。何か俺にしがみついてくるリーナは小動物みたいで可愛い。こんな目に合わしてくれたアレハンドラ達に感謝だ。
「あれ? 開かないぞ!」
扉を開けようとしたがやはり開かなかった。
「変だな」
俺が扉を何回か開けようとした時だ。
また、近くに雷が落ちた。
「ギャーーーー」
今度は思いっきりリーナが俺にしがみついてきた。首が絞まる。
「リーナ、苦しいから」
俺はリーナの手を動かして首から外すが
「暗いの怖いから、エドはなさないで!」
リーナは必死だった。
雷が鳴る度にリーナが俺にしがみついてくれてた。
俺はそんなリーナを抱きしめ返したのだ。
ここは本当に2人だけ。
リーナの温かい体を感じた。
震えるリーナもとても可愛かったし、愛おしかった。
俺は理性を総動員してリーナを抱きしめるだけにして、自分を抑えていた。
でも、そんな状況でリーナが寝てくれたんだけど、こいつ、俺のことを何だと思っているんだ? まあ、それだけ信頼されているのかもしれないけれど。
さて、どうしようか?
俺は迷った。このままここにいたら男と女が個室で2人だけでいたことになる。とんでもない醜聞だ。
おそらく俺とリーナが入ったことはあいつらは知っているだろう。
別に俺はそれでも全然問題はないが、今それが公になるのは良くないかもしれない。
俺は大きなため息をついたのだ。
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