悪役令嬢に薬屋の店員との仲を疑われ王太子の横の席を辞退しろと迫られたところに王太子殿下が現れました
「エドさん、笑い事ではないわよ!」
「いやでも、エドガルド様とカップル席って……それは凄いよね」
エドが壺に填まったように笑ってくれるんだけど……私は少しムッとした。
エドにエドガルド様とのカップル席で授業を受けさせられていると告げたら、腹を抱えて笑い出してくれたのだ。
「本当にもう大変なんだから! 王太子殿下の席が隣なだけでも気を使うのに、机が一緒ってどういうことと思うし、それにアレハンドラ様やセシリアさんからは射殺すような視線受けているんだから」
本当に大変なのに!
私が半分涙目で言うと
「ごめんごめん、でも、カップル席ってパウリーナさんの発想も凄いなと思って……それよりもその2人になんか具体的な虐めを受けたの?」
「それはいつも通りだからそんなに変わらないけど」
食事が2日前の残り物とか、初級ポーションを余分に少し作らされたとか、今のところそんな感じなのだ。まあ、それでお腹壊したり、睡眠時間が減ったりしたわけではないから、どうってことはないけど……
「なんか具体的に虐められたら、俺にでも良いから言うんだよ」
エドさんはそう言ってくれるけど、エドさんに迷惑をかけるわけにはいかないし……
「じゃあまた夕方」
「ありがとうございました」
私は学園の入り口でエドと別れた。いつもエドは入り口でとても急いで中に入っていくんだけど……そんなに急いでどこに行くんだろう? D組の教室はそんなに端じゃないし、そこまで急いで歩くことはないと思うけど……出来たらA組の前まで一緒に行ってほしいのに!
「ああら、パウリーナ、今頃登校してきたの? 男の子に送ってもらうって良い身分ね」
そこへアレハンドラ様が取り巻きを連れて現れてくれた。
「殿下とも親しくしているのに、今度は薬屋の店員と仲良くなるなんてなんて節操がないの?」
「信じられないわ」
エビータとデボラまで加わってからかってくれるんだけど……
「殿下とは単に隣の席と言うだけですし、エドさんは私が行き帰りの馬車が無いのを気にしてくれて、送り迎えして頂いているだけです」
私が言い訳すると、
「へええええ、そうなんですの? でも、それは特別利益の提供に当たるんじゃありません事」
「そうよ。パウリーナ。一つの薬屋と仲良くするのは癒着を疑われるわ」
「えっ、癒着?」
私は驚いて聞き返した。
単にエドさんも学生だからついでに送り迎えしてもらっているだけだけど、それが業者との癒着に当たるの?
「それに、殿下に一緒の机まで使わせてもらって殿下に悪いと思わないの?」
「そうよ。あなた。王妃様の机をお借りしているなんて私でも学園の机を使っているのに、あまりにも僭越な行動なんじゃ無いの?」
「まあ、確かにそうですわ。侯爵令嬢のアレハンドラ様ですら学園の机ですのに、王太子殿下と一緒の机を使うなんて」
「なんて図々しいんでしょう!」
「でも、それは王太子殿下がおっしゃられたことで……」
私が言い訳したら、
「畏れ多いからあなたが辞退すれば良いでしょう」
「そうよ。アレハンドラ様と席を替わりなさいよ」
私はそこまで言われて戸惑ってしまった。
確かに、私が殿下と一緒の席を使うのはどうかと思うし、王妃様の机を傷つけたら嫌だから代っても良いけれど、それをエドガルド様が認めて頂けるかどうかは判らないんだけど……
私としてはエドガルド様の横は気を使うし、アレハンドラ様やセシールから色々嫌がらせを受けるから、代った方が良いように思うけれど……
「何をしている!」
そこに今度はエドガルド様が現れた。
なんかものすごく不機嫌そうだ。
アレハンドラ様たちも少し慌てた。
「また、ミラネス侯爵令嬢等に虐められていたのか?」
エドガルド様が白い視線でアレハンドラ様を睨み付けられた。
「殿下、そのようなことは……」
アレハンドラ様が目を泳がせる。
「何を言われていたんだ、パウリーナさん」
エドガルド様が今度は私を見てくれるんだけど……
「いえ、あの、私、王妃様の机に座らせて頂いているのが、畏れ多くて」
「気にすることは無い。あれは母がパウリーナさんのためにわざわざ用意した机だ」
「えっ、私の為にですか?」
「そうだ。母に周りの聖女達からパウリーナさんが虐めを受けていると私が報告したら母は怒っていたぞ」
そう言いながらエドガルド様は残りの聖女達を見渡してくれた。
「えっ、そんな」
エビータとかデボラは青くなっていた。王妃様は筆頭聖女でこの国で、いや、世界の女神教の中では一番偉いのだ。そんな人に睨まれたら教会で聖女はやっていられないだろう。
「王太子殿下。恐れながら、あまりにも1人の生徒に関わられすぎると秩序が乱れます」
アレハンドラ様が勇気を持って言い出した。
その言葉はヒロインが悪役令嬢のアレハンドラ様から言われる言葉なんだけど、私はモブですら無い平民下っ端聖女なんだけど……私に向かって言うの?
「何を言っている。俺は母からパウリーナ嬢が勉強から逃げないようにきっちりと監視するようにと命じられているんだ。その命を実行しているだけだ。何しろパウリーナ嬢は母がわざわざパウリーナさんのために大聖堂に派遣した家庭教師の授業をすっぽかしたくらいだからな。俺の真横で母から勉強机まで提供されては勉強しない訳には行くまい。その方達もこれ以上パウリーナ嬢の勉強を邪魔するようなら母に相談するが……」
エドガルド様が聖女達を見渡した。
慌ててエビータやデボラは更に下がった。
「ではパウリーナさん。行くよ」
そう言うとエドガルド様が私の手を掴んで歩き出してくれた。
ええええ! また、手を繋がれた。
でも、これをアレハンドラ様の前でやるのは止めてほしいんだけど……
「そ、そんな、王妃様は何故そこまでパウリーナに肩入れされますの?」
驚いてアレハンドラ様が叫びだしたけれど、
「それは母に聞いてくれ。ただ、パウリーナさんが作る初級ポーションの量をみて母は感動していたそうだ。『これだけの量は私も作れない』と」
立ち止まってそう言うとエドガルド様は私の手を引いて歩き出した。
「いや、ちょっとエドガルド様!」
私はいきなり歩き出したエドガルド様に引っ張られた。
「ギャッ」
でも、次の瞬間また、エドガルド様が急に止まったので、顔をエドガルド様の背中に打ち付けていたんだけど……
「母に認められたかったらせめてパウリーナ嬢の半分の量の初級ポーションを作れるようになることだな。母は基本を忠実にやらない聖女をよく思っていないようだ」
そう言うとエドガルド様はまた歩き出してくれた。
何回も動き出したり止まったりしないでほしい!
そう思っていた私は私を今にも殺しそうに睨んでいるアレハンドラ様の視線には気付かなかった。
悪役令嬢の恐ろしい視線。
ただで済むのか?
続きは明日です。
お楽しみに!








