2聖女をまとめるシスターに学園進学を辞退するように命じられました
エドさんにはそうは言ったものの、私は王立学園には行きたかった。
前世のお気に入りの小説の中のヒロインと王子様が仲良くなっていくところが間近で見られるのだ。これほど心沸き立つことはなかった。
そう、何を隠そうこの世界は前世の私のお気に入りの恋愛小説『聖マリアンヌのピンクの薔薇』の世界なのよ。
私は五歳の時に流行病にかかって40度近い高熱で生死の狭間を漂った。その時に前世の日本と呼ばれていた世界での記憶が蘇った。こことは違って魔法は使えなかったが、科学のとても発達した世界だった。
そして、記憶が蘇ることで私の体も少し変わったわ。熱の下がった後に受けた魔力検査でいきなりかざした水晶が金色に光ったのよ。私に聖魔力があることが判明したの。孤児院の院長先生やシスターがとても喜んでくれた。でも、私はその時はそれどころではなかった。
水晶の光を見た瞬間、この世界が『聖マリアンヌのピンクの薔薇』の世界だと気付いてしまった。
『聖マリアンヌのピンクの薔薇』は私が高校の時に流行った恋愛小説でアニメや実写映画にもなった超人気小説だった。聖女の力を発現して隣国の田舎から出てきて王立学園に入学した平民のセシリアが、悪役令嬢の侯爵令嬢のアレハンドラ達に虐められるなかで、王太子のエドガルドと仲良くなっていき、最終的に結ばれる話だ。私のお気に入りの小説で私は何回もその本を読んでいた。
そんな小説の世界に転生できるなんて私はとても嬉しかった。まあ、私はヒロインのセシリアでも悪役令嬢のアレハンドラでもなくて、小説やアニメには全く出てこない下っ端聖女のパウリーナだったけど、学園に入れて、憧れのヒロインや王子様を間近に見られたら、どれだけ嬉しいだろうと期待したのよ。
でも私は平民の下っ端聖女で毎日悪役令嬢のアレハンドラや取り巻きのサラ達に虐められる一環で、平民の下っ端聖女は王立学園に入れないと聞かされていて、とてもがっかりしていた。
「あなた、凄いのね、こんな短時間にこれだけのポーション作れるなんて」
一心不乱にポーションを作っていた私はいきなりきれいな女の人に声をかけられて驚いた。
「いえ、いつものことですから」
「そうなの?」
「これっ、パウリーナ、筆頭聖女様になんて口きくんですか?」
「えっ?」
その女の人の横に付いていたシスター・ベルタに注意されて私は驚愕した。筆頭聖女様って王妃様だ。
「も、申し訳ありません」
私は慌ててその場に跪いた。
「良いわよ。この大聖堂では私もあなたも同じ聖女よ。跪くのは止めて」
王妃様はとても気さくな方だった。
そのまま私の手を引いて起こしてくれたのだ。
「えっ?」
あれよあれよという間に私は王妃様の横に座らされていた。
「あなた、レベルはいくつなの? これだけ初級ポーションが作れたらレベル30はいっているでしょう?」
王妃様はそう言ってくれたけれど、
「カサンドラ様、彼女は平民の聖女でして……」
「それがどうしたの? 聖女に家柄なんて関係ないでしょう?」
「いえ、それは建前で」
「ふーん、そう言うことを言うんだ?」
「いえ、申し訳ありません」
ベルタは王妃様の機嫌の悪い声に慌てていた。まあ、でも、ベルタの言うことが正しい。どこでも建て前と本音があるのだ。私は最初は何も知らずに普通に他の貴族出身の聖女に話していて、後で周りから散々怒られて知ったのよ。聖女とはいえ家柄が全てに優先されるということを。
「王妃様、このようなところにいらっしゃいましたか?」
そこに慌てた大司祭が飛んできた。
「あーら、邪魔が入ったわね。まあ、良いわ」
王妃様が立ち上がられた。
「頑張ってね。リーナ!」
笑って立ち上がると王妃様は去っていかれた。その笑顔がとてもきれいで、私はあまりの事にポカンとして頭を下げるのを忘れていた。でも、王妃様、私の呼び名がリーナだってどうして知られたんだろう? ここで私の事をリーナって呼ぶのはエドさんくらいなんだけど……
その後だ。王妃様からの通達ですべての聖女が王立学園に通うようにと指示を受けたのは!
「良いこと、王妃様に声をかけてもらったからっていい気になるものではないわよ!」
悪役令嬢のアレハンドラに呼ばれて、釘を刺された。そんなことはわかっているわよ。王妃様が寄られたのはたまたまなんだから。
ベルタからも、初級ポーションを作っているところも見たいわ、と言われて、たまたま寄られただけだと耳にたこができるほど聞かされたし……
まあ、でも、これで小説の舞台である王立学園に通える。絶対に小説やアニメの中の名場面をこの目で見てやるんだから!
私はとても楽しみにしていた。
そんな私はシスター・ベルタに呼ばれた。
「すみません。何をおっしゃっていらっしゃるかよく判りません」
「だから、パウリーネは初級ポーション作るので忙しいでしょう。あなたが学園に行ってしまったら初級ポーションが無くなるって大司教様が気にされているのよ。ここはあなたの意思で学園に行くのをやめてもらえないかしら」
「しかし、筆頭聖女様のご指示を破るなんて私には出来ません。そもそも初級ポーションを作るのが私だけっておかしいと思います」
私はどうしても王立学園に行きたかったのよ。つい反論してしまった。それがいけなかったようだ。
「パウリーネ! 何なの、あなた。わたしのいうことが聞けないと言うの?」
ベルタがいきなり口角泡を飛ばして私を叱責した。
「いえ、そういうわけでは……」
「良いですね。どんなことがあっても辞退するのですよ」
私はベルタにそう指示されると部屋の外に叩き出されたのだった。
折角学園に行けると楽しみにしていたのに!
私には青天の霹靂だった。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
続きは今夜です。
お楽しみに!








