10せっかく席が一番後だったのに、先生によって王太子殿下の隣の席に移動させられてしまいました
入学式が終わって、私達はそれぞれの教室に移動になった。私達の担任はロッテン先生並みに厳しそうなミランダ先生だった。
隣のBクラスはおっとりしたマルガリータ先生でそちらの方が担任だったら良かったのにと思わず私は思ってしまった。
「ではA組の皆さん、移動します!」
先生の合図で私達は一番前のエドガルド様達から移動を開始した。
「あっ、エドガルド様!」
「ちょっとあなたどきなさいよ!」
「あなたこそ!」
先生の後にエドガルド様たちがいる関係で女どもが我先にとエドガルド様の周りに寄ろうとして集まり出すが、
「はい、皆さん、列を乱さない!」
早速ミランダ先生に注意されていた。
やはりこのクラスは厳しい先生でないと難しいみたい……
教室の入り口に座席表が張られていた。
私は右から二列目の一番後ろの少しだけ飛び出た席だった。
なんか座席表が少し変だったような気がしたけど、座席が良い席だからよしとしよう。
ここならあまり当たらないと思うし、うまくいけば寝れると思う。
エドガルド様は一番右端の一番前の扉の傍だった。その後ろがカルロス様で、その左横がダミアン様。何故か私の列の先頭がダミアン様で、席が一つずつ後ろに下がっている感じなんだけど、王太子殿下の横は空けないといけないとかいう規則でもあるんだろうか?
アレハンドラ様は一番左端の窓際だった。周りに取り巻きのエビータやデボラがいる。
この位置なら後からエドガルド様達がよく見えるし、アレハンドラ様達からも離れられているから大聖堂の中みたいにパシりに使われることもないはずだ。将来的にヒロインとエドガルド様が仲良くなったときにも後から二人の睦まじい姿が見えるはずだし……でも、変だ。本来ならばヒロインが同じクラスにいてエドガルド様と隣同士の席のはずなのに!
この後の私の席から二人の仲睦まじい姿が見えるはずだったのに!
これじゃ、見えないじゃない!
折角の特等席なのに!
私は余計な事を考えていたのが悪かったらしい。呼ばれているのに気付かなかった。
「パウリーナさん!」
「ねえ、呼ばれているわよ!」
前の席の気の強そうな女の子が振り返って私を睨み付けてきた。
「えっ、はい!」
私は思わず立ち上がっていた。
「パウリーナさん。何を勝手に後の席に移っているのですか? あなたの席はここでしょう。今すぐに机を持って前に来なさい」
「えっ?」
私は固まってしまった。
そこってエドガルド様の隣の席でヒロイン席じゃない!
「いや、そんな、王太子殿下の隣の席なんて畏れ多いです」
私は首を振った。そんな席になったら後でアレハンドラ様に殺されかねない。絶対に嫌だ!
「先生。私がパウリーナさんと席を替わってもよろしくてよ」
アレハンドラ様がここを先途と声を上げてきた。
アレハンドラ様の席は中庭が見える窓際の特等席だが、周りをアレハンドラ様の取り巻きに囲まれていてもう一つだったけれど、エトドガルド様の隣の席よりはまだましなような気がした。
「私もその方が……」
「何を言っているのですか、パウリーナさん! あなた、この春休みに王妃様のご厚意で家庭教師をこの学園から派遣したのに、勉強したくないと逃げ回っていたそうではありませんか?」
「はい?」
家庭教師? 王妃様からのご厚意?
私は何のことか全然判っていなかった。
「『いくらポーションがたくさん作れるからと言ってこの国をしょって立つ聖女は勉強も必要です』と王妃様はとても立腹していらっしゃいました」
そんなこと言われても何のことか全く判っていないんですけど……
でも、待てよ。そう言えばシスターベルタから呼び出されて「あなた勉強したい? それともポーションを作っていたい? どちらが良い?」と聞かれたことがあって、勉強なんかしたくないから、「ポーション作っていたいです」って答えたけれど、あの時のこと?
私はさああああっと血の気が引いた。
そんな、王妃様から派遣刺して頂いた家庭教師を断っていたってこと?
王妃様からなら王妃様からって言ってよ!
そんなの知らなかったじゃ無い!
「『この学園でも逃げないように王太子殿下の横に座らせてきっちりと勉強させるように』と王妃様から厳命を受けているのです。だから、アレハンドラさん達もいくら聖女仲間だからと言ってパウリーナさんが勉強から逃れようとするのを助けてはいけませんよ。判りましたね!」
「「はい!」」
思わず、アレハンドラ様達に頷かせていたんだけど……いや、でも、エドガルド様の傍なんて緊張して絶対に勉強なんて出来ない!
私が全力で否定しようとしたときだ。
「荷物はこれで全部だね」
「えっ?」
私の鞄を持ったエドガルド様がにこりと笑ってくれた。
そのにこりと笑った笑顔がなんか怖いんだけど……その破壊力満点の笑顔も見目麗しかったけど……
「よし、じゃあ運んでしまおう」
私が赤面しているとあっと言う間にダミアン様とカルロス様まで来て私の机と椅子を持って前の席に行ってしまった。
「ちょっと待って!」
私の抵抗空しく、私はエドガルド様の隣の席に座らされてしまったのだ。
「私から逃げようとしてくれたのは君が初めてだよ」
何かエドガルド様から黒いオーラが漏れてくるんだけど、私が席を動かしたんじゃありませんから!
そう言えば座席表は何か切り貼りしたような跡があったから誰かがやったんだろうか?
私は逃げようとはしていませんって!
でも、私の悲鳴は聞こえなかったみたいだ。
そしてそんな私を射殺すようにアレハンドラ様が見ていたなんて私は知らなかったわよ!
ここまで読んで頂いて有難うございます。
「彼の女 絶対に許さない!」
ギリギリ歯ぎしりするアレハンドラだったのです……
続きは今夜です
お楽しみに!