プールの排水溝に髪を詰らせた少女を助ける話
ここは大型のプール施設。
僕の目の前には、足を水面にあげてバタバタしている人がいた。
...何か不審だ。
「...__?」
なんと言っているかは覚えていないが、隣にいる連れと思われる女性が、その人の名前を口にした。
異変に気付いたようだった。
僕は大きく息を吸って水中にもぐる。
水中をのたうつように泳いで、足を水面にあげていた人を確認する。
どうやらこの人も女性らしい。
長い髪が散乱している。
両手で髪を触っているようだ。
なぜ?
と思ったが、髪の先にある光景を見ればすぐにわかった。
彼女の髪が排水溝に絡まっている。
このまま放置すると溺れるだろう。
ならば助けるのが人として賢明。
僕は排水溝に髪を絡ませている彼女の肩を掴んで、僕の体を寄せた。
彼女は僕の存在に気づき、顔で助けを訴えた。
僕は排水溝をよく確認する。
うわ~、髪がたくさん絡みついてる。
こりゃあ、ちょっとやそっとでは解かないな……。
一回息継ぎしよう。
そう思った僕は、彼女の唇に自分の口を当てた。
「!?」
彼女の口の中に僕の息を吹き込んだ。
彼女は驚いた表情を見せたが、すぐに僕のやりたいことを理解してくれたようだ。
一回口を話した後、もう一度僕は彼女の口に近づいて息を吹き込んだ。
その直後、僕は水面に顔を出して息をする。
「ぷはー」
すると外の声がよく聞こえるようになる。
「誰か!友達がおぼれているんです!」
彼女の友人はプールサイドにいる人に助けを求めていた。
周囲には徐々に人が集まりつつある。
では、僕はもう一度息を吸って、水中に潜り込む。
今度は素早く水底に行くため、おぼれている彼女の右太ももを右手で掴んで一気に沈む。
次に、彼女の左胸を掴んでさらに沈む。
..いや、これは仕方がない。ちょうどよい掴み場所だったんだ。
最後に、彼女の肩に手をかけて、僕は再び彼女の顔に接近する。
そのまま僕の息を彼女に流し込んだ。
そして僕は、残っている力で、排水溝に絡まっている髪をほどいていく。
一回ではやりきれなかったので、僕はもう一度水面に顔を出して、おなじことを繰り返す。
...もう少しだ。
僕は彼女が絡まっている髪をほどき終わるまで、僕の息を彼女に吹き込み続けた。
そして、残り1,2本くらいで全部ほどけるところまできた。
ここまでくればもう上がれるだろう。
僕は彼女に抱き着く。
そして、彼女の背中を右腕で持ち上げて、体を反転させるように促した。
すると彼女の上半身は徐々に浮上していく。
彼女も足を水中につけられたことに気が付いたら、そのまま床を蹴って、さらに上半身を浮上させる。
そのままの勢いで一気に水面から飛び出した。
「ぷはー」
「ぷはー、はあ、はあ..」
僕と彼女は息を思いっきり吸った。
そして周囲を見渡すと、心配そうに僕らの周りに人が集まるのが見えた。
あ、やばいかな……。
僕は全身で彼女に抱き着いていた。
でも、これはこの子を助けるためにとった行動だ。
まあ、手荒なことをしたのは自覚しているけど、それくらいは許されるはずだ...!
「ゲボッ、ゲホッ、オエッ」
彼女は強く咳き込んだ。
僕はそんな彼女の背中を優しくさすった。
「大丈夫、落ち着いて」
「……う、うん、ありがとう……」
彼女は呼吸を整えて落ち着いた表情を浮かべた。
そして僕は周囲を見渡すと、周囲の人は僕らの様子を見て少しヒソヒソ話していたが、それもすぐに収まった。
プールの監視員や係員の人が駆け寄ってきたからだ。
「大丈夫ですか!?いまそちらに行きます!」
「あ...ゲホゲホッ、大丈夫です..」
彼女は自分で返事をすると、ゆっくりとプールサイドに向かって歩いていく。
プールサイドからは監視員の方が手を差し伸べて、彼女を陸地にあげるのを手伝おうとしていた。
...流石にこのタイミングで僕も彼女から離れる。
もう抱き着く大義名分がないからね
僕はプールサイドから一度離れ、そのまま監視員の人と一緒に休憩室に移動した。
休憩室で僕は、彼女が落ち着くまで待っていた。
監視員の人が「もう少し時間がかかるだろう」といって、僕にお茶を出してくれた。
……
しばらくして、彼女はこちらに顔を出してくれた。
彼女は開口一番、僕に頭をさげてお礼を言ってくれた。
「さっきは本当にありがとう……。おかげで助かったよ……」
「いや、気にしなくていいよ。」
僕は笑いながらそう言った。
そのあと、声を小さくして僕は続ける。
「それよりごめんね。君のいろんなところを触っちゃったね。」
「許してもらえるかな?」
ちょっと申し訳なさそうな顔をして僕は言った。
すると彼女は顔を赤くして、僕から顔を逸らす。
「う、うん……別に気にしにゃいよ……」
ああ可愛い。
もうそれしか言えないくらいかわいいね……
でもまあ、これで彼女が許してくれたのならいいんだけど……。
「その、何かお礼をしたいのだけど。。」
「え?いいよ、そんな」
「でも……」
うーん。
何かお礼とか言われても困るな……。
……ん?ああ、そうだ。
「じゃあさ、友達になってくれないかな?」
「……え?」
彼女は不思議そうに首を傾げた。
ああ、いきなりこんなこと言われてもわからないよね……。
う~んなんて説明したらいいんだろうか……?
僕は少し考えたけど、結論としては彼女に笑顔を向けることにした。
なんやかんや言葉よりも伝わるでしょう。
「友達になりたいんだ、君と。」
彼女は驚いた表情を浮かべたけど、すぐに笑顔になって頷いてくれた。
「うん!なろう!」
おお、嬉しいね。
これで僕はボッチから卒業だね! いや~よかったよかった……。
よし!それじゃあ僕も着替えようかな? あ、その前に……。
僕は水を一口飲んで喉を潤すと彼女に質問する。
「そういえば君の名前を聞いてなかったね?」
「あ、そうだね!私の名前は……」
完