レベルアップと決まる方向性
ダンジョンについて受付している途中、セシーリアはずっとうずうずしている
受付を終了すると、セシーリアは勢い良く扉を開いて我先にと入っていく
俺も続いて入っていくと……
「ただいまですのー!」
セシーリアが晴れ晴れとした顔でダンジョン全体に聞こえるように挨拶していた
耳にキーンとした痛みが出る程の声量だったのは余程楽しみだったのだろう
「ダンジョンは家じゃないぞ」
「あの部屋よりこっちにいる方が楽しいんですの いつも居たいですの」
「セシーがこんなにはしゃぐとは…… そんなにダンジョンはいい所なのか?」
リンドウは目を丸くしている 家族同士の付き合いがあるとは言えこんなにはしゃぐのは初めて見るのだろう
こんなにはしゃぐとは俺も思わなかったけど……
「あんなにジメジメした所より全然いいですの それより!リンドウの装備いい感じですの やはり得意な槍ですの?」
「やはり使い慣れたものが一番いいのだ わざわざ家から持ってきて良かった」
リンドウが持っていたのは”鉄のやり”だった
実際にダンジョンで使うものを使わせてもらって練習出来るのはやはりいいことだろう
武器を扱った事がない人より練習してきた人の方が武器に慣れるのが速いため強くなりやすい
だがそんなの戦闘数でカバーできるから問題は正直ない
「そういえばセシーリアのお父さん達のパーティってどんな感じなんだ?」
「今はダンジョン楽しみたいですのー! 今度じゃダメなんですの?」
「じゃあレベルアップしたら考えようか…… ダンジョン楽しむぞ!」
「楽しむですのー!」
2人で探索をするより3人で探索した方がかなり時短になった
採集に関してはセシーリアが教えてくれたおかげで、見つけて採集するのがかなり早くなった
初心者のリンドウに関しても、昨日の俺より全然採集出来てる
「実践ってこんな感じ……なのだな」
「本来はたぶん違うぞ セシーリアのせいで、そう感じるだけで」
「私を悪い人みたいに言うのは止めて欲しいですの」
こんな軽口を言いながら1階は簡単に進んでいった
2階には降りずにダンジョンを出入りすること3往復目
ついに、その瞬間がやってきた
「レベルアップですのー!」
「俺もだ!」
「うらやましいな 私も早くレベルアップしたいものだ」
ということでステータス解説の時間だ まず初期のステータスは以下の通りだ
HP 30/30
MP 30/30
物攻 10
物防 10
魔攻 10
魔防 10
速度 10
器用 10
運 10
HPとMPは右の数字が最大値で、左側が現在値だ
どのような職業に就いてもこの初期値は絶対に変わらない
そしてレベルが上がるとこうなる
HP 30/30
MP 30/30
物攻 10
物防 10
魔攻 10
魔防 10
速度 10
器用 10
運 10
SPT 2
TPT 1
となっている レベルが上がったとは言ってもステータスは何も変化はないが、SPTとTPTが追加される
SPTはステータスポイント、TPTはテクニカルポイントの略称だ
SPTではステータスを向上させることが出来、TPTでは新しい技・スキルを覚えたり、レベルを強化出来る
SPTでは1ポイントで指定したステータスが1アップする
HPとMPは1ポイントで3アップする
レベルアップで貰えるポイントは職業によって違いがあるが、【シード】は2ポイントだ
TPTでは1ポイントで新しいスキルや技・魔法などを覚えることが出来る
またそのスキル等のレベルアップに使うことも出来、レベル限界は10だ
TPTはどの職業についてもレベルアップで貰えるポイントは1で固定だ
「まだですのー?」
ふくれっ面のセシーリアがこちらをジト目でこちらを見ている……
考えすぎたようだ まずは方向性の確認しないとな
本人の希望にそったものじゃないとやる気出ないだろうし
「セシーリアは回復出来る力が欲しいんだよね?」
「そうですの! 出来ればダンジョンにも行きたいですの」
「OK! じゃあ今から言った通りにステータス変更して欲しい」
「教えて欲しいですの!」
セシーリアには回復系最強を目指してもらうためのステータスの振り方をしてもらう とは言っても2ポイントだけど……
そして、今回覚えてもらったのは”ヒール”だ
HPを微回復するという効果だ
2階から攻撃してくる敵が出現してくるので念のためHP回復の方法が欲しかったのだ
リンドウにもどのようになりたいのか聞いておこう
「今まで聞いてた通り、セシーリアは回復をメインにするヒーラーを目指すけどリンドウはどうなりたい?」
「私か…… なんでもいいのか?」
かなり躊躇している様子が見える 何か言いづらいことでもあるのだろうか?
安心して言えるようにしてあげよう
「もちろんだ 出来るだけ叶えよう」
少し彼女は俯き、言い辛そうにポツリと話し始めた
「槍をずっと扱ってきた関係で盾の扱いが苦手でな…… 討伐数を自慢できるようなアタッカーを望む」
なんでも出来なければならないと思ったのだろうか けどそうじゃない
一点突破でも大丈夫なんだと伝えてあげよう
「最強の騎士アタッカーを約束しよう」
そう伝えるとリンドウの顔は安心したような顔をした
大人しく待っていたセシーリアがリンドウに抱き着いて
「次の階へレッツゴーですの!」
セシーリアの元気な声が響いた
俺は次の階層へ行く階段を見る 下へ繋がる階段が大きく口を開けて待っているように見える
けど最低限の備えはしてきたので大丈夫だ
セシーリアは俺が動き出すまで待てを命じられた犬みたいになってたけどな
俺が先頭で進み、階段を1歩降りると暗かった地下は左右の壁に設置されていた照明が一気に点灯し明るくなった 省エネかよとかいうツッコミはやめておこう
少し降りると踊り場のような少し広いスペースがあり茶色の壁と明らかに違いすぎて目立つ白い扉がポツリ
その白い扉を開くと1階とほぼ同じ風景がそこにはあった 使い回しでは無いぞ気を付けてくれ
初心者ダンジョンだからギミックなんかは無い エンカウントと採集の場所が微妙に違うくらいで寄り道して採集したりしなければほぼ一本道だ
2階から攻撃される可能性があると2人には伝えてあるので俺の後ろを素直に着いてきてくれてる
少し歩くと初のモンスターが草むらから出てきた
「戦闘ですの!」
敵を見つけ次第セシーリアは杖に魔力を貯め始める
君回復役だよね?
リンドウは槍を構えいつでも飛び出せるようにしている
出てきた敵はコウモリもどきだ
天井から落ちてくるイメージの方が強いが、やはりもどきだ 体を大きく左右に振りながら歩きながら出てきた
「動きは遅いから攻撃準備できたら攻撃して!」
言い終わる前に左後ろからセシーリアの大きい魔法弾が飛んでいく
右後ろから飛び出したリンドウの槍がコウモリもどきに当たる前に敵は光の粒となっていた
「私にかかればこんなもんですの」
セシーリアは胸を張ってドヤ顔をしている
だが魔力弾についてしっかり問いたださないといけない
「今のどれくらい魔力こめたの?」
「たったのMP10ですの」
たった?君のMPの1/3を使ってるのに?たった?
心の中で呆れながらため息をつく
「セシーリア1回でMP5以上魔力弾に使うの禁止」
それを聞いた瞬間セシーリアは俺に抱きついてくる
完全に泣く5秒前のような目でこちらを見上げ上目遣い
「お願いしますの 採集も頑張りますの なんでもやりますの だから……」
女の子の上目遣いってセコイ気がする
ごめんねいいよと頭を撫でて許したくなる気持ちを鋼のメンタルで押さえつえる
ここは心を鬼にするしかない
「ダメなものはダメ」
「ガーンですの ゴブリン!オーク!ですの」
鬼!悪魔!がこっちではゴブリンとオークに変わるとはこんな所でファンタジーを感じるとは思わなかった
泣きそうになるセシーリアをなんとか、ホントに全力でなだめ探索を再開した