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世界が変わった一日(???視点)

4月1日……

私にはとっても大事な一日ですの


この世界にはダンジョンがありまして、そこで得たものが生活の多くを支えておりますの

もちろん普通に農業をしたり、酪農をしたりも可能ですの

けどね、どのような物もダンジョンから獲得した物の方が品質の良い物なんですの


”急に何の話だ?” 黙ってお聞きくださいまし


もちろんダンジョンには危険もありますの

だからダンジョン産のものは高価ですし、ダンジョンに潜れて多くのものを獲ってくる御方はそれだけ多くのお金を稼ぎますの

そして、ダンジョンに潜る方を”探索者シーカー”と呼んでおりますの


そして、パ……間違えましたの……父様は【回復術師】に就く優秀な探索者ですの

マ……母様は【薬師】に就くポーションなどの製作者ですの

そんな二人の間の一人娘の私には本当に大きな期待が寄せられてますの


15歳の時に受けることが出来る”探索者適性検査”を無事に合格出来た時には屋敷中の皆が喜んでくださったの

そうして私は”国立第一特殊学校”への入学が決まりましたの

期待に応えることが出来た嬉しさは大きかったですの


そして今日4月1日 学校に行って”職業”を授かる日ですの

普段は予定を合わせにくい両親が学校へ行く前に励ましの言葉をくださいましたの


「大丈夫 可愛いセシーリアよ ワシの大事な一人娘だ いい職業に就けるよ」

と父様は大きな手で頭を撫でてくださいましたの


「セシー 貴女がいなくなるのは寂しいけれど 頑張ってね 薬ならいくらでも届けるわ」

と母様は力強く抱きしめてくださいましたの


なんて良い両親なんでしょう…… 大好きだから離れたくないですの…… 寂しくて涙が止まりませんの……

出発時間になって私は爺やの運転する車に乗って、普段なら行儀が悪いってしかられますが後ろのミラーに噛り付いて

見送ってくれる両親の姿が見えなくなっても手を振ってしまいましたの


「わたくし…… お二人の自慢の…… 娘になってみせますの」


そう小さく宣言した私の声は誰にも届きはしなかったけれど魂には深く刻まれましたの



車に乗ること1時間と少し両親からも聞いていたけれども、近くの街までバスで行かないといけないくらい田舎の学校に到着しましたの

爺やの運転する車を降りて辺りを見渡すと一面の桜が満開でしたの とても綺麗で心を奪われましたの

春は出会いと別れの季節と言われてるにも関わらず、新しい出会いの方に期待してしまうのは私だけではないと思いますの


新しい”学友”、新しい”環境”、新しい”職業”どれにも期待をしてまいたくなる気持ちが抑えられませんの

爺やに別れを告げ、案内してくれる学校の人に色々と聞きながら荷物を預けたり、検査を受けることが出来ましたの


『新入生の皆さんに連絡です 祝福の儀の準備が出来ましたので近くの案内人の指示に従ってください』


そして、とうとう”祝福の儀”の時間がやってまいりましたの

案内されたのは古い教会のような場所ですの

ロゼッタ紋をメインに扉をイメージしたステンドグラスと女神イナンナ様の像が神々しいですの


司祭様と案内人の指示に従って、長椅子に座って儀式を受ける準備をしましたの

緊張で鼓動が強く、早く響いておりますの 肋骨が折れてしまうかもなんて思いましたの


「皆さん手を胸の前で組み、目を閉じて祈りをささげてください」


組んだ手に力が入りすぎて痛いですの

でもそんなことに構っていられないくらい色々な感情が止まりませんの


「我が主よここにいる者へ祝福を」


そう聞こえた瞬間に私は白い世界の中におりましたの

そうすると、イナンナ様の言葉を伝える天使ガブリエル様がいらっしゃいましたの


『あなたの就ける職業をお伝えします あなたの就ける職業は【シード】のみです』


「えっ……そんなことはありませんのよ もう一度確認してほしいですの」


『もう一度お伝えします あなたの就ける職業は【シード】のみです』


「嘘ですの! そんなことあり得ませんの!」


『就ける職業が1つだけなので、そのまま”職業”を付与します』


そう淡々と告げるとガブリエル様はいなくなってしまいましたの……

消えていく大天使様を捕まえようと顔を上げると、実際に顔をあげていたようで司祭様と目が合った


「全員の祝福を確認しました 左右の個室で職業を担当者に伝え退出ください」


司祭の近くに座っていた私は、司祭に促され個室へ案内されましたの


「あなたの職業を教えてください。」


「【シード】ですの」


「このカードを出口の職員にお渡しください」


と言われて白いカードを渡されましたの

そして、出口の職員に白いカードを渡すと


「こちらへ」


そう言うと職員はいきなり歩き出しましたの

私はかなりの速度で歩いていく職員のことを追いかけるのに精一杯でしたの

職員を追いかけると景色が変わっていき、歩きづらくなっていきましたの


やっと職員が止まったと思ったら薄暗い森の中にあるボロボロの建物の前にいましたの

職員の方に言われて教室のような場所に入りましたの

手前の教室に入りまして空いている席に座りましたの


椅子に座って冷静に落ち着いて考えましたの

”シード”はレベル25までで、獲得出来るステータスポイントは全部で50、スキルポイントは25貰えますの

その後取得したスキルによって就ける”職業”が変わるという特殊な職業ですの


就きたい職業に一発で就けなかった者への救済措置という名の”ハズレ”なんて言われてますの

私……二人の自慢の娘に……なれなそうですの……

そう思うと悲しくて……悲しくて……自然と涙が出てまいりましたの……


「全員いるなー」


涙で前があんまり見えませんがコモンドールみたいな方が立っておりましたの


「男子4人女子28人の計32名。全員いるみたいだな ようこそ夢破れし者”ポーン組”へ」


そう……ですの……女神イナンナ様から”才能無し”といわれたようなものですの


「ここにいる者は皆”シード”にしか就けなかったものだ」

「隣の教室も含めて今学年64名の落ちこぼれだ 3年間この離れで寂しく過ごせばいい 3年も過ごせればな」


そうですの……シードになった人は進級試験に合格できず退学をしてしまう人が多いですの……

わたくし……心が折れそうですの……

話されていることのほとんどをまともに聞くことが出来ませんでしたの


周りの方々が席を立っていくのを見て、お話が終わってることに気づきましたの

それから皆さんに合わせて動くと貼り紙を見つけましたの

私201号室みたいですの


「ボロボロですの……まるで私の心みたいですの」


最底辺にお金を使う必要は無いとでも言わんばかりにこの部屋にあるのは中古のオンボロばかりでしたの

今朝までのお屋敷から屋根裏部屋に来たような気分ですの


ジリリリ……

電話がなりましたの これはパパからですの


「もしもしですの」


「可愛いセシーリアや 職業には無事に就けたかの?」


「そ……その、わたくし”ポーン組”になりましたの」


「な!なんだって!少し待ちなさい」


電話の向こうでドタバタと大騒ぎしているのが聞こえてきますの


「セシー 聞こえる?」


「母様聞こえておりますの」


「よく聞いてね まず支援はちゃんとしてあげるから頑張りなさい そしていい”探索者”の彼氏をみつけなさい」


とりあえず頷いて返事はしましたの……けど私単体では要らないと言う意味なんですの……


「頑張ってね 応援してるわ セシー」


ここで電話は切れましたの 後ろでパパがママに怒ってるのを聞こえた気がしたけど今の私には意味はありませんの

もう私自体にはなんの価値もありませんの……


こんな現実を受け入れられないまま持ってきた荷物を整理してましたの

けどやはり涙で上手くいかなくて、世界に一人だけ拒絶されたような感覚でしたの

ただひたすらに荷物を整理していると装備が一式用意ロッカーをみつけましたの


その中で短剣を左手で持ち、右手の手首を切ろうとしておりましたの

重度の怪我をすればここは退学になりますの

この世界に居場所のない私がいなくなっても誰も悲しみませんの


私に後悔はありませんでしたの

手を切っただけでは血が苦手な私は気絶するだけで終わりそうですの

椅子に上ってカーテンの金属部分に防具の縄を切って巻いて気絶しても首が締まるようにしましたの


さようならパパ……さようならママ……

様々な気持ちに涙が流れ、前が見えづらい中右手首に冷たい感覚がありますの

これが地獄の感覚ですの…… 親不孝な私にはお似合いですの


左手に少しずつ力を入れていくと”職業”へついた時に得ることを出来るHPが削れていくのがわかりますの

そうしてHPが0になった瞬間、私は気絶しておりましたの



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