功を急いたものは損をする
俺たちがさんぽキノコとの戦闘を終了し、ビーラントの方を確認するとちょうど採掘が終わったようだ
「どうだ?たくさん採掘出来たか?」
「これだけ」
「上出来だよ」
ビーラントが見せてきたものを確認すると、くず鉄を2個採掘していた
採掘系のスキルを持っていないからこんなもんだろう
「今日はここで帰ろうか。ダンジョンに入った時間も遅かったし」
「もう帰りますの!?もっと戦いたいですの!」
「うちもぉー!」
駄々をこねる2人には悪いが、ここでは採集も出来るから次はエイルも連れてきた方がいいのだ
ということで次回だな。しかもここには直接来ることが出来るから、焦る必要もない
「次はエイルも一緒に来よう。そして皆でレベルアップしようぜ!」
「それはいいな。そうしよう」
「仕方ないですの……。さよならですの……」
セシーリアとカリーは寂しそうな顔をしていたが、皆でレベルアップしようということには賛成している様子だった
そうして、皆でダンジョンを後にし、俺たちのダンジョン週間は無事終了した
そして、ダンジョン週間明けの月曜日
俺は、いつも通り自分の席に着く。俺の席?クラスのど真ん中ですよ……なぜゲームの世界なのに主人公席に座れないんだ……
早めに着いたので今日の授業の内容について予習をしていると、教室が騒がしくなった
「貴様ら座れ。時間だ」
オルクス教官が教室へ入ってきて、皆が席に座る。皆が集まってたのはルインの所か……
「オルクス教官!俺”戦士”になることが出来ました」
なるほどな……”シード”から脱却出来たことの喜びで自慢して回っているのか
ただ、まあもったいないことしてるな
「貴様、自身が勉強不足なことをひけらかした上に、俺のホームルームを邪魔して何がしたい?」
「あ、えっと……”シード”から脱却出来たので、俺上のクラスに上がれるかな……みたいな?」
「寝言は寝てから言え。1限で詳しく説明してやる」
そう言うと、オルクス教官は教室を出て行った。
その瞬間に噂話があたりで始まった。会話の中心はルインのことだろう。
ザワザワしている中、近くの人の会話を盗み聞きしようとすると、隣から話かけられる
「キセロは知っておりましたの?」
そうセシーリアが小さい声で聞いてきた。知らないのも当然だ
”シード組”では普通の高校の授業がほとんどだもんな。逆に”キング組”になるとほとんどダンジョンの授業だけらしい
まあ”シード組”は大体が進級できず、普通の高校に戻ることが大半だから戻れるようにということらしい
「オルクス教官から説明があるだろう。少し待とうぜ」
セシーリアは納得してない顔ではあったが、説明不足があったら後で説明したらいいだろう
ルインを見てみると、怒りに震えている。あそこまで言われてプライドが傷ついたのだろう
ひそひそ話しているクラスメイトは誰もルインに近づこうとはしていなかった
『キーンコーンカーンコーン』
1限の開始を告げるチャイムが鳴ると同時にオルクス教官が入ってきた
クラスのざわめきは落ち着いたが、皆の興味は最高潮みたいだった
「じゃあ先ほどの件について授業を始めよう」
「教官!なぜ俺の転職がダメなのでしょうか?」
ルイン君は先生に早速質問していた。怒りを我慢して冷静に質問していた
「では質問だが、俺の知っている限り貴様はダンジョンに潜っていないからレベルは2くらいのはずだ。間違いないな?」
オルクス教官ってそこまで見ていたんだな。なんか尊敬したよ。鑑定するようなスキルでも使ったのだろうか?
口は悪いのになんだかんだ優しいんだよな
「そうです。レベル2になったのでスキルを確認したら”半回転切り”という全体攻撃を見つけ習得しました。そして友人が”回転切り”で”戦士”になったと聞いたので転職しました」
「そうだな。”シード”以外に就いた者には習得理由を証明するかのように、強制で取得するスキルがある」
オルクス教官の言う通り、この世界で最初に”シード”以外になると強制で取得しないといけないスキルがあるみたい。
ゲームの時は選択制だったが、ここでは完全ランダムみたいだ。とは言っても、剣の練習をしていたのに槍のスキルを習得するなんてことはない
リンドウが”裁縫士”になることが出来たのは、裁縫を趣味でしていたからだ
「”シード”は同じようにスキルを取得したら、そのスキルに関連した職業へ就けるんですよね?」
「正解だ。」
「では、何故?何がダメなんですか?」
ルインは、なぜ自分が転職してはいけなかったのか?の答えが中々出てこず、イライラしているのを抑えきれずに大声を出してしまう
握っている手が震えているし、足も震えているように見える
「うるさい。叫ぶな。追加で質問だ。なぜこのクラスで一番レベルの高いキセロはまだ”シード”のままだと思う?」
いや、急に俺に振るな!ビックリしたわ。驚いて立ち上がりそうになったわ
そしてセシーリア?笑うの我慢して震えてるのバレてるからな?誰だって驚くだろうよ……
「彼に友人がいなくて、無知だからではないでしょうか?」
おいー!?言っていいことってあるよね!?ライン越えたぞ!?
あたくし、非常にご立腹ですが?
「ハハッ。それは最高のジョークだな。実は俺も少し驚いているくらい、そいつは勉強し知識があるぞ」
「では、なぜ?」
「貴様、転職時にSPTとTPTは何ポイント取得した?」
そう言われて、ルインは慌てて自分のステータス画面を確認する。
転職出来たことに浮かれて、確認していなかったのだろう。
俺より前に座っているため、固まっているルインの表情は見えないが、驚愕しているだろう
「黙っているなら、俺から教えてやろう。SPTが23ポイントでTPTが11ポイントで間違いないな?」
「な……なぜ、それを……?」
「既に研究されているからだ。貴様のようなことを考えるものは多くいた。だがその方が強くなれるのであれば、既に俺は貴様たちに転職を勧めている。」
オルクス教官は、そうルインへ諭すように言った。
”シード”は最大レベルの25まで上げるとSPTが48、TPTが24を入手出来る。しかし、レベルを上げきることをせずに転職してしまうと、習得予定ポイントの半分しか入らない
つまり、最も強くなるためには完全にレベルを上げて転職しなければいけないということだ
「しかし、僕は強くなれた!このクラスの誰よりも!進級の可能性も上がる!それでも間違いなのでしょうか?」
ルインはそう叫ぶ。確かに言いたいことは凄いわかる
前回の自由週間の時に、皆強制で戦闘訓練をさせられ一部の生徒はダンジョンに潜り無事に生還している。その過程で褒められることは多かった
そうして、自信をつけさせダンジョンに挑ませ、進級させようとしていたのだ。だが、この問いにオルクス教官は首を横に振る
「間違いだ。まず初級ダンジョンはSPTを60振り切った4人パーティで攻略をすることを求められる。しかも、変な振り方をしていると通用しない。」
「そ、そんな……」
「つまり、貴様がしたことはレベルを上げにくくした上に、初級ダンジョンでも通用しないという最悪手を打ったのだ」
そう、オルクス教官から力強く言われたルインは、机に顔を伏せた。
自分のやった行為が自分の望む結果の真反対だったことに、落ち込んだのだろう
これはゲームが出た最初の頃、俺たちもやったミスだ。
「ついでに言っておくが、貴様はこのクラスで最強でもない。残念だったな」
「な!?そ、そんなはずでは無いでしょう!僕と同じ強さになるにはレベル13が必要なんですよ!?」
「数字だけ見るとそうだな。だが貴様ではこのクラスの最強にはなれない」
今回の転職の件について、実はオルクス教官凄い怒っているのか?
俺なら何も言わずに、自業自得だなで終わらせるのに、ここまでしっかり説明した上で落とすだけ落とすとは……
「僕は最強のはずです!証明して見せますよ!」
「そうか。じゃあ証明してくれ。方法はチームバトル5対5だ。相手をキセロがする」
またしても俺!?俺の許可は?勝手に決めないで欲しいのですが!?
「わかりました。キセロ!お前のことは、正直嫌いだったんだ。空気読まないし、俺より注目を集めるし!絶対ボコボコにしてやる!」
「わかりましたの!受けて立ちますの!」
セシーリア!?勝手に何言ってるの!?
目がキラキラしてる!初めてダンジョンに入った時くらいキラキラしてる!
「よし、これで双方同意したな。準備もあるだろう。次の土曜日に試合を実施する。異論は?」
「ないです!」
「ありませんの!」
こうして、俺はこの授業中一言も発していないのに、週末にチームバトルが実施されることになりましたとさ
もう訳分かんない……
毎度見ていただいてありがとうございます
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