4人目とチーム結成
「エイルさん固まっていてはいけませんよ 自己紹介してください」
エイルと呼ばれた女の子はメルさんの後ろに隠れてしまっていたが、催促されゆっくりと前に出てきた
灰色の髪が両目を上手く隠しているため目ははっきりと見えてない
「エ、エイルと申します…… よろしくお願いします……」
「聞こえませんの……」
セシーリアの指摘の通り、かなり声が小さくて聞き取るのがやっとだった
目は見えていないが、口元だけでも表情が硬く緊張しているのがこっちにも伝わってくる
「ここにいても他のお客様に影響しますので、カフェに行かれてはいかがでしょうか? 割引券お渡ししますよ」
笑っているにも関わらず、圧がとても強いメルさんに無理やり割引券を渡され生産棟を追い出された
気まずさと強大な圧の余韻からか全員が何も話さずに割引のきくカフェに向かった
カフェに到着し、割引券を渡すと個室に通された
「2人にはこうなった経緯を話するんだけど……」
「かなり待ちましたの 詳しくしないと怒りますの」
「私にもよろしく頼む 現状を呑み込めない」
ということだったので2人と新規加入のエイルさんに分かるように説明を始めた
俺の説明に納得してくれるかは分からんが……
「よく聞いてくれ。まず今日俺たち4人でチームを作る。その4人目としてエイルさんに来てもらった。ここまでは大丈夫か?」
「それは分かった ただ何故生産棟の生徒なのだ? それに恐らく”シード”なのだろう?」
「そ、それは僕も驚いてます…… な、なぜ僕なのでしょうか? し、”シード”の僕はこれから3年間こき使われて終わると思ってましたし……」
僕!?エイルさんって僕っ子なの?
なんか意外だったわ……とそれどころじゃない
やはり生産棟の”シード”も扱いは最低なのだろう。そんな扱いが嫌でうちへ入ることにしたのだろう
「俺は新しいチームを作る。全員が”シード”出身のチームだ」
「ぜ、全員が”シード”ですか? む、無理じゃないでしょうか? つ、使えないと言われてますし……」
「いや、そんなこと無い。”シード”は強くなるのに必要なことなんだ」
「それは前も聞いたから知ってますの。でもなんで今生産棟の生徒をチームに入れますの?」
「セシーリアは覚えてるだろう? 2人で最初に生産棟へ行った時のこと」
セシーリアは小さく頷くだけだったが、記憶に強く残っているのだろう
怒っているのがわかるくらい不機嫌になっている。俺も思い出すと少し不機嫌になりそうだ
しかし、今はそんなこと言ってる暇ではない
「”シード”の扱いは正直酷い。俺たちは自分たちのやり方で強くなっていくしかない。そうだろう?」
「あ、あの…… 僕”シード”だから何も作れないよ…… レベルもまだ上がって無いし…… それでもいいの?」
「それにしても何故今、生産棟の生徒を入れるのだ? そこが分からない。詳しく説明してくれ」
リンドウから説明を求められたが、セシーリアも同じことを思っているらしく頷いてこっちを見る
エイルさんも目は見えないが俺の方を見ている 続きを説明しよう
「生産棟の人はスキルが無いと何も出来ない。リンドウが就けたような”裁縫士”のような職業だと就いたときにSPTとTPTが付与されるから生産が出来るが、”シード”は出来ない」
「それは知ってますの なぜ今なんですの?」
「今は誰もレベルが上がってないから、強くなるために重要なスキルのみを獲得できる。でもレベルを上げようと思っても何もできない。だからダンジョンについてきて一緒にレベル上げしようって話だ」
返事がないから3人の顔を見てみたが、セシーリアとリンドウは驚きつつも納得出来たようだ
エイルさんは目が隠れているからよく分からない……初対面だしな
これは返事を待った方がいいのか?何か言った方がいい?
「効率的だな…… 最初からこれを予定していたのか?」
「いや、そんなことはない。生産棟に行ったり、ショッピングモールに行ったりしたことで決めたんだ。色々と足りてないって。自分で集めないとって」
「わかりましたの! じゃあチーム作るんですの! 名前は決まってますの?」
「色々考えたんだよ……ただ2択までには絞れてるから皆に意見を聞こうと思ってな……」
「決まってないのに申請しに行ったのか?」
リンドウの圧が凄い……初めての圧力に驚いてるよ……
やっぱそうだよな……自分の所属するチーム名を決めれるのであれば決めたいよな……相談しといて良かったぜ……
「チーム名は1回までは変更できるから後で話し合いしようかなって……」
「今回は許しますの 次はありませんの」
セシーリアも怒ってる……間一髪だったぜ……
リンドウの頭が赤ベコみたいになってるよ……
次からはマジで気をつけよう
「じゃあチーム名を伝えてもいいか……な?」
「許可しますの」 「許そう」
「俺の考えたチームは2つ。1つ目は【ガーデン】 理由としてはシードの俺たちが育つ『庭』でありたいと想いからだな。 2つ目は【ユートピア】グランドマスターランクを目指している人達の理想郷になれるようにという意味だな。 どう思う?」
皆悩んでるな……チームを作るのは予想してなかったんだろうな……
「あ、あの……その2つ以外の候補はどんなのがあったん……でしょうか?」
「一応、ボツ案として理想郷の意味を持つ【エデン】とか、種が育つ場所の意味として【プランター】とか【ソイル】なんていうのは考えたな」
「どっちもいいですの……ただ私は【ユートピア】の方がいいと思いますの」
「セシーはそっちか……私は【ガーデン】の方がいいと思う」
2人の意見はわかった
多数決をとるためには俺の意見じゃなくて、エイルさんに意見を聞いてみよう
「エイルさんはどう思う? 俺の意見をゴリ押しするつもりは無いんだ」
「ぼ、僕ですか!? し、新参者の僕だけどいいの?」
「今後、俺たちの薬関係はエイルさんにお願いしていくことになる。だから新参者とか関係なく大事な仲間なんだ。2人ともそうだろ?」
「そう言われても初めましてですの!エイルさん?ですの?女子会致しますの! キセロは退出しますの!」
そう言い出したセシーリアに背中を押され、個室から追い出された……
個室を追い出されると中の音は全く聞こえなくなってしまい、中で何を言われているのか気になるが、ここで待つのが優しさだろう
こういう時の体感時間とは恐ろしく長い物で、現代版スマホともいえる生徒手帳で情報を頑張ってかき集めていると……
「お待たせしましたの! なんでそこで倒れてるんですの?」
ドアを全力で開けてはいけませんよ。と誰か彼女にお伝えいただけませんでしょうか?
吹き飛ばされる勢いで開けられたドアのドアノブが背中にクリーンヒットしたせいで、声が出せません……
そんな様子を見たリンドウが駆け寄り肩を貸してくれたおかげで、半分引きずられながら個室に再度入ることが出来た
セシーリアとエイルは少しオロオロしていたが、俺が椅子に座って落ち着くと2人も落ち着いたように見えた
「決まりましたの!聞いて欲しいですの!」
セシーリアが興奮しながら話をするので、とりあえず頷いておく
背中が痛いんだもん……許して……
「エイルさんの加入には大賛成なんですの。私より薬について詳しいんですの。」
「セシーリアより詳しいの!?」
驚いて痛みなんて吹っ飛んだわ
セシーリアの母親って薬関係のエキスパートみたいな人だよね?
「私はママのお仕事場にはあんまり入れてもらえませんでしたの……」
しょんぼりしているセシーリアに申し訳ないが、集中出来なくなるからだと思うぞ
絶対に言わないけど……
見た目は大人しそうなんだけどね。金髪碧眼のお人形さんみたいだし……すんごいお転婆だけど
「キセロ。何考えてますの?」
すんごい睨まれてる……
読心術でも使ってるのか?
「セシー。これじゃ話進まない。キセロ3人で話してチーム名を考えた【ソイルガーデン】なんてどうだろうか?」
【ソイルガーデン】か……意訳すると土壌のある庭となるな……
それもいいのかもしれない……
「いいな……自信のある感じもするし。それにしよう!」
「じゃあチーム申請に行きますの!」
【ソイルガーデン】始動
毎度見ていただいてありがとうございます
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