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第8話.おばあちゃんとご飯!

「……おかえり」

「ただいまぁ、メイちゃん元気だった!?」

「元気」


ナナコがメイに走り寄った。当然のことながら双方ともに怪我はなく無傷だ。大げさに両手で包んで抱き上げる。


「いたい」


メイが不平を言うと、ナナコはその手を離して彼女を地面におろした。


「長老が、ご飯用意してるって」

「えぇ、ご馳走してくれるの?」

「うん」


遠くの方で手招きしている長老。そこには大きな鍋が用意されていた。白い湯気が立ち昇っている。砂エルフたちはすでに車座に座って食事をしているようだ。


「メイちゃあん、はよおいで」


長老の声、とことことメイが走り寄る。笑顔で手ずから鍋をよそっている。


「なんかめちゃくちゃ馴染んでるね。長老が、孫娘が帰ってきたときのおばあちゃんみたいな顔してるけど……」

「メイは結構おばあちゃんキラーなところあるから」

「私たちも貰いにいこっか」

「はい。実は砂エルフさんたちが何を食べているのかとか、結構気になっているんですよね。食生活というか料理というか」

「スイカちゃん料理好きだしね」


二人も輪の中に合流する。


「はい、どうぞ」


沈みつつあるお日様と、逆に立ち昇っていく白い湯気。先に長老から受け取っているメイはすでに自分のうつわを無言ですすっていた。頂きます、と小さな声で唱えたあと、二人もそれぞれのものを口に運んだ。


「お肉のスープ。あ、麺も入ってる!」

「羊肉かな?塩が効いてて。ちょっとクセがあるけど、コレすごく美味しいです!」

「ザ、肉!って感じだね」


各々に感想を述べていると、長老が言った。


「神さまがた、お口にあいますか?」


二人はメイを見た。彼女は返事の代わりに一心不乱に食べている。スイカがこたえる。


「すごく美味しいです。お食事にお誘い頂きありがとうございます」

「それは良かった。我々はこの砂漠を点々とする根無草ゆえ、そんなに凝った物はご用意できず」


ずるずると音を立てて麺をすするメイ。マナーはそれで大丈夫なのか。長老は続ける。


「羊やら家畜を連れて、砂から砂へ。それで生活しておるのです」

「普段もお肉を良く食べるんですか?」

「はい。肉と乳製品、まぁ連れている家畜からのものが全てです。穀物などは取れませんから。それらは外の人間らと交易したときにまとめて」

「なるほど〜」


しばらくすると、食事の手を止めて長老が三人に向き直って言った。


「我々を、砂エルフの民を助けて頂いてありがとうございます。今日の戦いでは皆無事に帰ってこれました。怪我をした者もかすり傷です」

「良かったですね」

「アリサに聞けば、お二人は獅子奮迅のご活躍だったとか」


視線がナナコに集まる。


「えっ?私?それほどでも……エルフちゃん、いや。アリサちゃんも助けてくれたし」


そう言うと、突然一人の若いエルフが立ち上がった。


「神さま、神さまと言いますが。私はまだ彼女らの力を何も見ていません。疑うわけではありませんが、何か奇跡を見せて貰うことはできないのでしょうか?」

「おい、不敬だぞ!私が見た。それでは不満か?」

「いや、そう言うわけではありません。ただ、なかなか信じられぬ者もいるのでは?それに、何故だかあの臭い犬を一匹連れて帰ってきていますよね」

「何が言いたい」


ばちばちと音が聞こえてきそうだ。アリサと若いエルフの女が口喧嘩を始めてしまった。いくらか口論をしたあと、女はナナコに向かって言った。


「ナナコ様は、何ができますか?」

「……」


ぴたと空気が止まった。


「んー?私が何ができるか聞きたいの?」

「再三言いますが、私は自らを神さまだと名乗るあなた方のことを疑うわけではありませんよ。ただ神さまがどれほどの事ができるのかと思いまして」

「ふぅん」


ナナコはジッと彼女の目を見た。


「じゃあ普通はできないだろうな〜って思うことを思い浮かべてみて」

「……?」


エルフの女は、思いもしなかった返答に怪訝な顔を見せる。少しの間を置いてナナコが続ける。


「私は、それらのことは大抵できるよ」

「ふふ」


メイが笑う。


「何?メイちゃん」

「全部できるって言わないのが、ナナコ先輩っぽいなって思って」

「んー。なんでもできるわけじゃないからね」


つっかかったエルフがあぜんとした表情を浮かべていると、薄暗くなった空に一つの光が上がった。遅れてドンと一つ大きな炸裂音。一度聞いた事があるあの音だ。


「敵襲!?日に二度もだぞ!?」


アリサが一番最初に食器を置いて立ち上がった。

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