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第1話.ようこそ!神さま部へ!

「せ、先輩!ナナコ先輩、大変です!」

「んー?」


勢いよく開けられた扉。ナナコと呼ばれた少女は、声のする方に視線を向けつつ机に突っ伏したまま応えた。


「8月31日に決まりました!私たちの出展!全国大会ですよ!」


部室というにはいささか広い、うっすらと電子音の聞こえてくる部屋の中に、大きな声が響き渡った。

「んー」


一呼吸置いた後、ナナコはガバッと起き上がって言った。


「えええええええ!?通ったの、スイカちゃん!?」

「はっはい!」

「応募した時はまだ鉄器も出現してなかったよ、奇跡じゃん!!」

「奇跡です!」


紺色のスカートを翻して走るスイに、大きく手を広げて受け止めるナナコ。1学年しか違わないものの、身長差は大きく、スイカのかかとがふわっと持ち上がった。ぎゅっと力を込めて抱擁した後、スイカはナナコから解放される。


「それで、部長とメイにも報告しなきゃ!」

「……」


ジッと視線を送る影。ナナコの後ろからもう一人、同じ制服を着た少女が姿を見せた。


「あ、いたんだ。メイ」

「居るよ」


メイと呼ばれた少女は、ぼそっと一言言うと、ぷいっと顔を横に向けた。すかさずナナコは後ろから抱えるようにその少女に抱きついた。


「やったねメイちゃーん!」

「やめろ、やめろ、くっつくな!」


やったーっと言いながら、ナナコはメイを抱きしめたままくるくると回りはじめた。ちょうど1080°ほど回り切ったところでメイは解放された。


「それで、部長は?」

「……」

「……」


スイカの問いに、しばらくの間。


「やっぱり、また来てないんですね」

「うん」

「そうですか……じゃあもしかして私たち、三年生抜きでやらなきゃならないんでしょうか?」


ナナコは二年生。メイとスイカは一年生。本来はここに三年生の部長が居るはずなのだが、その部長が数週間前から姿を見せていないのだ。


「んー、でも来ないものはしかたないじゃん!私たちだけでやろう!大丈夫だよ!」

「そ,そうですよね。念願の全国大会、頑張りましょう!」

「そうだね。ま、とりあえず今日の状況を確認しようか」


三人は手分けして、乱雑に置かれていた机を教室の端に持って行った。ぽっかりと教室の真ん中に大きな空間が開いた。


「じゃあ、メイちゃんいける?」

「いけるよ」


メイが手元の端末を操作すると、大きな地球のような映像が空中に出現した。まるで立体映像の地球儀だ。


「「「こんにちは、世界」」」


三人の声が一つに重なった。その声に応えるように、空中を漂う地球が様々な色に発光してみせた。三人それぞれが、その地球に手をかざしながら操作していく。


「ナナコ先輩、もう衛星も使ってますね」

「うん、この間やっと鉄を使い始めたと思ったらすぐだったよ。このスピードなら案外、全国大会までに結構文明も発展しちゃうかもね」


三人がしばらく操作したあと、ナナコが言った。


「水も作物も大丈夫だし、ちょっと時間進めちゃおうか。スイカちゃん」

「はい」


ふっと白い光が現れると、教室に浮かんだ地球がくるくると光の帯を巻きながら回転し始めた。ふぉんと風を切る音。薄暗い教室がちかちかと明滅する。


「スイとめて」

「わっ、え?」


同級生からのストップの合図に思わず声が出る。それでも手慣れたもので、スイカはすぐさま空中に現れた光の点をいくつかタッチして操作した。同時に高速で回転していた世界も止まる。


「んー?どうした、メイちゃん」

「そこ」


そう言ってメイは指を指す。大きな大陸の中央。いわゆる赤道直下のその地点は、砂で覆われた大地が広がっている。


「砂漠?」

「そう。広がっている気がする」


メイとナナコはちょっと難しい顔をして、スイカを見た。


「じゃあ、ちょっとゆっくり動かしてみます」

「うん」


動き始めた世界。観察していると、確かに緩やかに砂漠化が進んでいるように見える。


「メイちゃん。水はどう?」

「数字上は大丈夫」

「天候は?」

「悪くない、雨もある……それに」

「んー?」


スイカが再び世界を制止させる。


「気のせいか、文明が発展しているところばかり砂に変わってるよ」


メイの言葉に、スイカとナナコは顔を見合わせた。言われてみると確かにそうだ。大きな砂漠と、それに点々といくつかの小さな砂漠が見て取れる。


「ほんとだ、メイよく気がついたね」

「うん。スイと違って、僕は天才だから。もっと褒めても良いよ」

「……えらい」

「それで、どうする?」


メイが言った。非常にゆっくりと回転を続ける世界を見ながら、ナナコが口を開いた。


「ダイブしよっか。この砂漠化の原因を突き止めないと文明が滅んじゃうかもしれないし」

「神さま活動開始ですね!」

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