<26・みら。>
【オバケよりも】本当にあった怖い話を集めるスレpart38【人間がやばい】
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702:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
そういえばさ、一カ月くらい前だっけ?
金剛町とか陸奥町とかの方で半グレが女の人を探してたって話はどうなったの?誰か知ってる?
703:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
あ、そういえばあったね、そういうことも
704:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
そういえばドラッグの大量摘発が最近なかったっけ、金剛町と陸奥町と伊勢町と日向町のあたりで
705:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
おー、ケーサツ二十四時!とかで見たような
706:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
どっかの半グレのトップが捕まったって見たような見なかったような
707:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
私、とあるお水なお店の店員なんだけどさ
あ、陸奥町ね
一カ月くらい前まで、半グレっぽい人たちがしょっちゅう来てお客と店員に人探ししてるっぽいのがあってさ
それがすごく嫌だったの。明らかにガラ悪そうな連中だったから、お客も怖がってるし同僚の子も嫌がってるしで
それが、ある日を境にぱったり来なくなっちゃって
人探しが終わったんだろうかって思ってたら、店長がその半グレっぽい人に声かけられてる現場を目撃。
「女は見つかったし、オトシマエつけさせてやってるところだからご協力感謝な」みたいなこと言ってた
708:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
うっげえ
709:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
一か月前……陸奥町……
そういや、陸奥町を仕切ってた別の半グレ組織が、なんか大量に怪我人出して病院に担ぎ込まれた事件なかったっけ
何故か、組織の奴らがみんな誰にやられたのか黙ってるっていう
敵対してる半グレ組織と揉めたって噂はあるけど、やましいことがあるから警察の厄介になりたくなさそうだったって
そしたら、なんかその組織から大量に脱法ドラッグ見つかって結局総崩れになったとかなんとか
710:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
クスリなんてやるもんじゃないよ、ほんと
711:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
自分も家族も壊すだけだもんね
712:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
その通りなんだけど、世の中には知らないで手を出しちゃうケースもあるから何とも言えないんだよね……。
騙されてシャブ漬けにされるケースとかもあるって話だし
713:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
やばい薬だとわかってなかったら、手を出しちゃうこともあるよね
714:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
怖い
715:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
それはそうと、金剛町を仕切ってたサイレス?とかいう半グレも大量に捕まったらしいけどね
人探ししてた連中っぽいやつら
なんか、薬と一緒にすげーやべーAV売ってたらしくて、それが警察に見つかったらしい
……捜してた女、それに出演させられたんじゃなかろうな
716:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
やばいAV?拷問系とかいう?
717:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
こっちもこっちで
718:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
あーあーあー、それ聞いた、聞いたよ
『四六時中女体破壊』とかいう、とんでもないAV出してた奴らがいて最近捕まったって
もしかしてそれ?
一人の女優を、シリーズ全部でずーっと苛めてんの
最初は軽い排泄管理から始まって、媚薬漬けにして、そこから先はどんどんエスカレートする拷問。AVというよりスナッフビデオ?に近いものだったって聞いた
719:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
死ぬまでやったってこと!?
720:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
え、え
721:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
>>719
俺は自分が見たわけじゃなくて、見た奴の話してるの見ただけなんだけど
なんか、過去にあったいろんな拷問系と比較しても相当やばいもんだったとかで
最終的には、穴という穴に大量に蟲詰め込んだり、内臓の中までゴミ入れたりタバスコ入れたり、凄い綺麗な女の人なのに股間も顔もピアスだらけにしちゃったり……もうあれAVなんて領域じゃなかったって
722:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
やだやだやだやだ!誰がそんな気持ち悪いの見るんだよ!!!!
723:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
見ているだけで痛そう……軽いリョナなら興味あるけど二次元だけでいい、リアルで見たいとは思わない
724:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
さいあく
725:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
でも販売しててシリーズ化してたってことは、それ買う奴がいたってことだよな
でもって、女探すのがぴったりとやんだってことは、その拷問系に出演させられてた女優は……
726:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
そんなところでアイデア成功したくなかったんですが!?
727:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
マジで、“本当にあった怖い話”だよな
728:以下、現場より普通の人がお送り致します@不穏な気配の名無しさん
結局、人間より怖いものなんてこの世にはないんだよ
こうやって、他人事だと思って話してる俺らも含めてな
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「お疲れ様」
「……はい、お疲れ様です」
あの廃工場から、みらと流が逃げ出してから一カ月。みらは相変わらず、だらだらとスズカゼ・カンパニーで仕事を続けている。弟の真実が明らかになったら、復讐が達成されたら仕事をやめて行方をくらます――その当初の予定を達成しないままに。
理由は、単純明快。仕事帰りの居酒屋のカウンターで今、隣で一緒に飲んでいる人の存在があるからだ。あれから二人の関係は進展していない。むしろ、後退しているようにさえ思ってしまう。
何故なら一か月前、みらが“警察ではなくサイレスに連絡して流を助けに行った”ことは、完全にみらの独断であったからである。警察では、のらりくらりと躱されて霧島瑠美香に逃げられる可能性があったから、だけではない。法律によらず、瑠美香を断罪してくれる存在がサイレスしかなかったからである。
本当は、みら自身が罰を下してやりたかったけれど、そういうわけにはいかなくなってしまったから。だから、サイレスに通報することでやらせたのである。恐らく、みらが想像もつかないほど惨い方法で瑠美香を“断罪”してくれると信じて。
その結果がどうなったのか、はっきりしたのはつい昨日のこと。
サイレスの連中が、とある違法アダルトビデオの件と脱法ドラッグメリッサの件で摘発され、主要メンバーが軒並み逮捕され。その結果、違法アダルトビデオに出演させられていた霧島瑠美香が保護されることになったのである。
彼女は生きていたが、“辛うじて”という状態だった。心身ともに廃人同然の状態で、恐らく一生寝たきり状態だろうということである。それが、みらがやったことの結果だった。みらは、こうなると知っていて選択したのだ――己の復讐を完成させることを。
彼女が、霧島流の従姉であり、かつて慕っていた女性だと知っていた上で。
――恨まれても、仕方ない。
みらは、決めていた。今会社に残っているのは、この人への自分なりの償いのため。冬の繁忙期が終わったら、そこで会社をやめようと。それまでは、巻き込まれてしまったこの人と会社のために自分にできることをしようと。
――……だから、好かれたいなんてもう思っちゃいけない。それでいいじゃないか。私が、私だけが一方的にこの人を好きでいる、それだけで。
あえて、流には謝罪しなかった。謝って楽になることなど、自分には許されない。だから。
「……みらさん、あのさ」
今日、久しぶりに一緒に飲もうと誘われたことも。
「ごめんね」
「何がですか」
「一か月前のこと。みらさんにちゃんと、お礼も謝罪もしてなかった。あの日、助けに来てくれてありがとう。それから……こんなに助けて貰ったのに、それを全然伝えてなくて、本当にごめん」
こうして、彼から謝罪を受けることになったのも。
みらにとっては、意外でしかなかったのである。
「……気にする必要は、ないです。むしろ、私こそ……従姉さんを、あんなふうにしてしまって……」
動揺のあまり、みらは言ってはいけない言葉を言いそうになる。
実は、一か月前にもう一つバレてしまっていたことがあるのだ。それが、“君、ひょっとして天城君が話していたお姉さんだったりする?”ということ。脱出直後、そう尋ねられて自分は――何の答えも返せないままでいる。バレるだなんて、まったく思っていなかったからだ。自分とりくは、顔も性格も全然似ていないと思っていたから。
「瑠美香姉には、天罰が下ったんだ。あの人の告白を聞いて、思ったよ。……きっと警察に捕まって牢屋に入っただけじゃ、あの人は変われなかった。だから、仕方なかったんだよ、今回のことは」
「流、さ……」
「それに、君が天城君のお姉さんなら、怒りは当然だ。……復讐したいと願うのも、普通のことだろ」
「…………」
流は続ける。
自分がずっと、りくから姉の話を聞かされてきたこと。それから――みらが本気で怒った時の怒り方が、りくが怒った時のそれとそっくりだったということ。それで直感的に、みらが天城りくの話していた姉なのでは?と思ったのだそうだ。顔はともかく、年齢が合致するのは間違いないからと。
「俺のことも、憎んでた?天城君を、助けられなかったから」
「……っ」
「はは、君は、正直だよね」
一つだけ教えて、と。彼は続けた。
その声はとても落ち着いているように聞こえたけれど、でも。
「俺のことも、恨んでた?俺のことが好きだって言ったのも、嘘?」
水割りが入ったコップを握る、その手が。
その中の氷が、揺れている。震えている。ああ、怖いのは彼も同じだと気が付いた。
本当は嫌われたくない。そう思っているのは、みらだけではなくて。
「……私」
こんな場所で、恋なんかしちゃいけない。そんな資格自分はないと思っていた。自分は弟の復讐のために此処にいる。嘘で塗り固めて、今の自分を作っている。本当の顔なんて殆ど晒してもいない、だから。
それなのに、言い訳をしながらまだスズカゼ・カンパニーにいるのは何故なのか。答えなんて、とっくの昔に出ているわけで。
「私、確かに貴方を利用しようとしました。弟のために、自分のために。でも、あの日……貴方が攫われたって知った時に思ったのはもう、それだけじゃなくて、だから……こんなこと言う資格なんかないのわかってるけど、でも」
言葉は、唐突に途切れた。くい、と顎を傾けられる。え、と思った瞬間、唇に熱い感触。
少しだけ、お酒の味がした。
キスをされたと理解できたのは、彼の顔が離れていってからで。
「……俺だって」
流の顔は、泣きだしそうだった。
「俺だって。たまにはこういう、強引なことするんだから。……偉そうなこと言ったくせにね。本当はもう、俺の方が……」
きっと多分、自分も似たような顔をしているのだろう。その先を、はっきり言う勇気がなかなか出なくて、こんな至近距離で足踏みをしているのである。
手を伸ばせば、もう触れるのは簡単で。あとはちょっとだけ、見えないボーダーラインを踏み越えれば終わるだけなのに。
「貴方が、好き。今こそ、本当に、本気で」
みらは、絞り出すように言った。
「もう少し、もうちょっと……近くに行っても、いいですか」
「……うん」
涙で滲んだ視界の向こう。見たこともない、彼の笑顔があった。
「もう一回、ここから全部、始めよっか」
人前であることなんて、完全にすっぽ抜けていた。
テーブルの下でそっと絡めた指は、どこまでも熱に浮かれて結ばれている。
もう二度と、離れることのないようにと。




