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アナザーズ・レコード  作者: 紙葉衣
ショーケース・ショータイム
93/99

仕”斬り”直し

▽▽▽▽

 オーガに殴られた体が壁を突き破る。そのままゴロゴロへと転がって反対側の壁にぶつかり漸く止まった。

「ッダァ――ックソッ。良くねぇなっ!」

 俺が殴ったところで無理矢理耐え、自身が食らった以上の力で殴り返す。パンチのフォームと同じく型もクソもないが、膂力のみでバカ強い。

 先ほどから何度か拳を交えているが、良いのを貰うのは大体このパターンだ。やれやれ。いい加減学べって感じだが、そうすると俺が攻撃出来ないんだよなぁ。

 罅の入った壁を支えに立ち上がる。はぁ、と血生臭い息を吐き、顔を上げた。薄暗い部屋は整理されていながらも多様なものがあって倉庫っぽい。っていうかこれ、商品倉庫か。

 ガラガラと自分が崩した壁の残骸を蹴り飛ばしながら、長身を屈めたオーガがのっそりと部屋に這入ってきた。

「なんだ、起き上がるのか?寝てた方が楽だぜ」

「ハ――ッ。言ってくれんじゃん。最後に殴ったのがあんたってだけだろーが」

 オーガがグイッと乱暴に唇に滲む血を拭う。その頬は既に腫れ始めていた。殴った数は俺の方が多いが決定打に欠ける。

 これ、素手じゃ厳しいな……。

 閃鬼はまだ来ない。戦っている間に移動したし。というかオークションスタッフなどに足止めされてそもそも辿り着けないかも。となるとやっぱり俺一人で何とかするつもりじゃなきゃ。――よし。

 圧を纏った足取りで歩み出したオーガに向かって、腕を動かし――


「タンマ!」

「……ハァ!?」


 手で作ったTの字を掲げた俺にオーガが素っ頓狂な声を上げた。拍子抜けした顔を尻目にスマホを取り出す。

「なっ、んだてめぇ。バカにしてんのか?」

「まっさか!逆だよ。本気だからこそってね。ほら、あんたがウチのお姫様を拉致りかけた事件あったじゃん?」

「あ?……何時?」

「え、3日前」

「アレお前等か!?」

 バレて無かったのか、と肩から力が抜ける。そういやあの時は素顔だったな。一瞬だけだったし。いやでも存在異義レゾンデートルは同じ……鬼眼による空気の固定(クレイモア)使ったな……。

 あれだけで鬼眼がバレるとは思わないが、なんか感づかれているかもしれない。とっととぶん殴って黙らせなければ。っていうかじゃあ俺がオークションをぶっ壊そうと画策してるって気付いたの、マジで雰囲気だけなのか……。

 オーガが困惑してる隙にパパッと画面を確認し、再度スマホをポケットにしまう。

 未だクエスチョンマークを浮かべながらも、取り敢えず殴ろうと近づいて来たオーガにパッと開いた掌を向けた。反射でピタッと足を止めるオーガに俺の方が驚いた。生来の気質なのかなんなのか。とかく、妙な律義な男である。

「何はともあれ、あの件でスマホ以外にも発信機を導入することになってさぁ。彼女今3つ4つ付いてんだけど」

「さっ、すがにそんな要らなくねぇか?」

 俺に停止を命じられた前傾姿勢のまま声を揺らすオーガにクッ、と喉の奥を震わせた。

「ところで話は変わるんだが、俺等落ちた後、バトりながら結構移動したじゃん?」

「マジで話変わんな……。テメェが逃げるからだが、それが?」

「今居る場所ってさぁ、客席の下なんだよ。さっき確認したからな。俺等の発信機、ログもしっかり残るんだぜ」

「……話変わって無いのか?」

 ラフな声を出す俺とは対照的に。オーガの警戒心が張り詰めていく。

 パキパキと準備運動するように指を鳴らす。適当な言葉で時間稼ぎをしながら頭の中はクリアに。機械のパスコードを打ち込むように言葉を綴る。


 材料指定――“特殊合金”。

 設計図面――描画完成。

 製作工程――想像代行。


 迂闊に創り変えられないのは変わらない。肺腑の中を空にして、新鮮な息を詰め直す。

 鬼眼《閃鬼》による存在力の向上(作図)が無いので慎重に。

 しゃがみ込んで地面に触れる。体を強張らせ、後退るオーガに口角を上げた。

 俺が“異在者イグジスト”を相手するなら、相手が行動を起こすよりも先に距離を詰めてぶん殴る。“溜め”た存在異義レゾンデートルを発動させると面倒なことになるからな。

 こんなふうに。

 

 ――現実創造。

「“我が欲へ(アルケミア)”」


 天井から開いた穴から光が差す。

 どさりと俺の足元に落ちて来たブツを蹴り上げた。

 所有者マスターへの一方的な祈りを最後のキーとして、創られた穴にギリギリ引っかからないように落ちて来たのは俺のバックパック。オークション中俺の席の下、つまりは閃鬼の隣に突っ込んでおいた物だ。

 宙に浮かせたバックパックの肩掛けを掴んで引き寄せる。同時に中に手を突っ込んだ。創り慣れた作品を頭の中で思い浮かべる。

「ご紹介しよう。俺の愛刀だ」

 頑丈さが自慢の様だな、オーガ。大したことだ。そのまま大人しく刃も受けてくれ。

 バックパックから引き抜いたのは身の丈程の大刀。出来を確かめるように刀身が空を切った。

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