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アナザーズ・レコード  作者: 紙葉衣
フレイムハート
70/98

交戦混線⑤ Side閃鬼

◆◆◆◆

「どうした?鬼ごっこは止めたのか?」

 逃げる力も尽き、壁に凭れ、項垂れた視界に影が掛かる。重い頭を上げればゴールデンオウルの破落戸共に囲まれていた。

 何時の間に。全然気が付かなかった。ヤバいな。今ちょっと意識がトんでいた。

 小さく頭を振り、強く眼を閉じる。ぼやけた視界がちょっとだけはっきりした。こちらを見下ろす下卑た笑みがわかるようになっただけだった。

 あたしを中心に渦巻く嘲笑に脳みそが揺さぶられる。眉間に皺を寄せ、瞳を眇めた。

 焼け付いた鬼眼から流れる血涙で視界が紅く染まる中、向けられた悪意と銃口にジト目を向ける。

 追いつかれた。逃げられなかった。囲まれた。


 う~ん、思ったよりも速かったな。もうちょっと逃げられるかと思ったが。まぁ銃器相手に空中廊下なんて一直線で遮蔽物の無い場所に入っちゃったからな。意識が飛んでいる時に撃たれなかっただけ幸いだった。

 さて。この状況で逃げるとしたら、窓ガラスを突き破って外に出るしかない。が、此処は地上40m。着地が出来ず、墜落死だ

 というかそもそもあたしってガラスを突き破れるんだろうか……。ドラマだとよく観るが、実際には結構パワーが要りそうなイメージがある。弾かれて終わりかも。


 足元の影に視線を移す。力の抜けた体があたしと同じように転がっているだけで、紅い瞳は灯らない。狂華は相も変わらず沈黙を保っているというか。あたしのピンチに興味がないらしい。


 はぁ、と血の臭いがする溜息を吐く。

 まぁしょうがない。弱っちいからなぁ。あたしにしては頑張ったよ。……なんて、負けた状態での自画自賛はダサいかな。

 ぐるりと周囲を見回していた首から力を抜く。ガクンと仰け反った頭が背後の壁にぶつかって止まる。

「あ――……、はぁ……、ふう……。んん、ちょっと待って」

「お、なんだぁ?諦めたのか?」

「土下座して靴でも舐めてみろよ。ひょっとしたら許してやるかもしれねぇぜ」

 ゲラゲラゲラ。

 ぐらぐらと響く嘲笑をシカトして、ゆっくりと目を閉じた。あたしの肩が小刻みに揺れたのは堪え切れずに漏らした嘲りだ。

 体の横に投げ出していた腕を持ち上げる。エネルギー弾が掠めたせいで、少し動かしただけで引き吊るように痛みが走った。真っ直ぐ伸ばした腕を固定する。瞳に刻まれた刻印を無理矢理叩き起こしながら、瞼を上げた。

 親指は立て、人差し指は真っ直ぐに。残りの3本は折り畳んだ拳銃のポーズ。大体この辺が良いのかな、とてきとうに選んだ男の頭を指した。

 顔面に架空の照準を合わせられた男が不愉快そうに顔を顰める。警戒心に一瞬体を強張らせたものの、舐め腐った笑みは崩れない。その瞳に見せつける様に、ニヒルに見えるよう片頬を上げて――「バン」

 チープで気の抜けた擬音と共に偽物の拳銃を跳ね上げた。瞬間、ガシャン、と硬質な音共に彼の前に盾が展開する。黒くツルリとした壁面が外から入ってくる日光を反射した。今目が擦れててちょっとよくわかんないけど、あの薄っぺらさは異在道具オーパーツの合金っぽいな。

 あたしの事を舐めてる割に対応が速い。この街で荒事で生計を立てているだけはあるらしい。


 数秒の沈黙。ズッシリと重く圧し掛かる。

 何も異変が無いことに、警戒していた男達がそろりと視線を合わせた。

 水面の中にインクを垂らしたように、困惑に寄る沈黙の中に嘲りがじわじわと広がっていく。指さされた男から「――ふ」と零れるような吐息が漏れた。

「ふは、ぁっ!?」

 緊張の反動で嘲笑が爆発する。寸前、ガラスが割れる音と共に歪に笑みを浮かべ掛けた面が横向きに弾け飛んだ。

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