『大きな涙』
ジャンル分けって微妙に迷いますね~?
現実世界に近いけど恋愛じゃないとか
一瞬ファンタジー要素があるようにも思うけど
ファンタジー作品ではないとかとか…
今日は、オーナーが不在だが
と言うか、不在な時の方が多いのだが・・・
僕は、いつものように調理器具を洗い
コンロやシンクの清掃をしているが
カフェの閉店時間が過ぎても店内には9人程
人影が残っていた。
「・・・?」
だが、店内に残る人達はお客さんではなく
オーナーの友人達で、親しい常連客と言うよりは
このお店が始まるときに色々と支援してくれた人達だ。
サポーターと言った所だろうか。
「それにしても・・・」
9人も居ると言うのに、ぽつぽつと会話が聞こえる程度で
みんな暗い表情をしている。
「う~ん?」
何かが有った事には間違いないのだろうけど
それが何なのか僕には分からないが
丁度カウンターと棚の陰で厨房から死角となっていた所に
一人の女性が居たようで、別の所を片付けようと移動した時に
その姿に気付き、ふと顔を見てみると女性は声を押し殺して
ぼろぼろと泣いていた。
「・・・」
どうやら、この状況からすると誰かの訃報らしい。
みんな、それぞれの私服姿であることから
察するに、まだ間もない感じなのかもしれない。
「誰なんだろうか?」
そして、その泣いている女性・・・
実は、4年前このカフェで働いていた従業員で
もっと言えば、僕が恋をした女性だ。
もちろん、即答でフラれてしまったが・・・(汗)
「はぁ・・・」
けど彼女が泣くと言う事は、ここに居るみんなが
知っている人物で、なおかつ親しい人なのだろうか?
別に過去を引きずっているつもりは無いが
誰であるか、あまり知りたくないというか
考えたくない、そんな所だ・・・
「・・・」
もし・・・
もしも、僕の訃報を聞いたとしたら
彼女は同じように涙を流してくれるのだろうか?
みんな、今日のように集まってくれるのだろうか?
「それなら」
そう考えるなら、きっとその人は良い人生だったのだろう。
こんなにも一早くみんなが一カ所に集まってくれて
多分、思い思いに沢山の事を考えてくれて
大粒の涙を流してくれて
「なんか、少し羨ましいな」
すると、急に彼女は手で顔を隠しながら足早に化粧室の方へ
歩き出したのだが、顔を覆っているせいで前が見えていないのか
真っ直ぐ僕の方へ突っ込んできた。
「ちょ! えっ!? 前っ!」
思わず、こんな静まり返った店内で
一人だけ大きな声を出しそうになったが
そうなることはなく・・・
「えっ・・・?」
そうなることはなく
手で顔を覆ったままの彼女は
真っ直ぐに僕をすり抜けて化粧室へと向かって行った。
「・・・」
普通なら何が起こったのか理解できず慌てそうなものだが
不思議と彼女が僕をすり抜けていった一瞬で
何も混乱する事なく状況を把握できた。
「そうだったのか・・・?」
その場で、店内全体を見渡すが誰も僕の姿には気付いていない。
そして、棚の銀食器やグラスに僕の姿は写り込まない・・・
「そうか・・・」
まぁ、思うところは色々あるけれど
どうやら、僕はそんなに悪くない人生だったらしい。
出来る事なら最後に一言だけ
みんなに『ありがとう』と伝えたいものだが
今は無理なようだ。
「うん? それじゃ・・・ あの涙はっ!?」
その答えを聞くのも、今は無理なようだ(笑)
最後までお読みいただきありがとうございました。
いつも×2
ジャンル分けで悩んでいる
存在がファンタジーな猫ですがっ!
なんか、今回もまた暗い作品になってしまいました(泣)
べっ! 別にっ! 毎回、暗い作品を好んでいる訳じゃ
ないのですけど~ にゃんか暗いですね~?
あっ! 一応言っておきますけど!
私は泣いてませんし、すり抜けてもおりません♪
って! すり抜けたことを実感出来たら
それはそれでホラーですけどねっ!
と、後書きくらいは明るめに書いてみました。