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 何度もスマホの時刻表示を確認しても、さっきと1分も変わっていない。

 電車の揺れるリズムも、車窓からの景色も早まることはない。


 ホームルームが終わった途端に教室から全速力で駆け出し、電車に乗った。

 いつもよりも数本早い電車は、空いており、立っていても仕方がないから空いていた座席に腰掛けた。

 これが良くなかったのか、さらに手持ち無沙汰感が半端ない。

 時間が余ると人間、ろくな事を考えない気がする。


 ばあちゃんがこのまま寝たきりになるとか、腰痛いのは悪い病気のせいなんじゃないか、とか。

 手を握ったり、閉じたり。

 スマホで興味も無い、バズったインコの動画のニュース記事を読んでみたり。

 自分でもわかるくらいに俺は動揺していたんだ。


 だから、普段だったら絶対に気付くはずなのに。


 朝の彼女の乗る駅。

 そこから乗った彼女が俺の隣に座ったことに。


 ふわっと香るいい匂いに気付きふと隣に目をやると、彼女があの煌めく瞳であの本を読んでいた。

 俺は驚きで本当に声が出るかと思った。

 しかも匂いで気付くなんて、変態臭い。

 でも女の子って帰りでもいい匂いするんだな。男だらけのうちの学校だとありえない。

 帰りにはイケメンさえも体育あったら、男臭い匂いだ。程度の差はあるけどな。


 女の子の生態に驚きながらも、初めて近くにいる彼女に神経が行く。

 彼女の座る右半身だけに、異様に熱を感じて。

 ドキドキ逸る自分の脈が聞こえてきそう。


 あぁ。今日は体育あったじゃん!うわっ!俺、今臭くないかな。

 え、でも、ここでいきなりあの子に聞くのもおかしいよな。突然、車内で事案発生だ。

 汗拭きシートで拭くか。いや、でもそれだと今汗臭いんですよって逆にアピールするようなものだよな。

 無理。そう思われたら、耐えられない!そんなのオワタ。本気ワロエナイ。

 それに、髪の毛もボサボサだし。


 やばい。さっきまでは暇だったのにめちゃめちゃ忙しい。今更だけど、インコの時間分は取り戻したい!

 それに、ばあちゃんのことで落ち込んでたのに今は不謹慎極まりないくらいうかれてる。


 彼女に気付かれないようにそろーり顔を動かすと、楽しそうな横顔とあの可愛くてキラキラした瞳。

 ぎゅっと心臓を絞られたくらいに痛いし、やっっぱり可愛くて胸が騒いで目が離せなくなる。

 語彙力なんて意味ないくらい、この子の瞳に魅了されている。


 彼女の瞳が真っ直ぐ向かうは、いつも読んでいる大きな白い本。


 ほんとーに、興味本位だった。やましい気持ちは無い。

 人様の読んでいる本を見た罪悪感はあるけど、電車の隣って意外に見えちゃうものなんだよ。


 俺のほうが背が高いから、ちらりと視線を右にずらすと、本の中身が見えた。


 その瞬間、ギョッとして俺は目を瞬いた。

 なんか十二単着た女の人が載ってた。

 写真だったりイラストだったり。

 着方なのか、着物を順番に重ねて着ていく絵と小さい文字で説明文。


 平安時代のファッション誌?


 予想していた内容と違いすぎて、思わずその子の横顔を凝視してしまう。

 そんな俺の視線なんて彼女は気にすることなく、その本にキラキラした瞳を向けている。


 うん。びっくりしたけど、それだけ。

 生き生きと楽しげにこの本を読む彼女に、惹かれたんだ。

 隣の彼女を見ているだけで、じわじわと胸に広がるふわふわした気持ち。

 なんかくすぐったくて気持ち良い。


 『好き』


 唐突に頭に浮かんだこの2文字。

 じゃあ。これが「恋」ってことなのか。

 やっとこの気持ちに名前がつけられて、輪郭がはっきりとした。


 その次は……、彼女が「好き」なこの本のことを知りたい。

 知ったら、もっと彼女に近づけるかな。


 気付いたら俺の最寄りの駅に着いていた。


「面白かった」

「続きが読みたい!」

「今後どうなるの?!」


と思ったら


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