何して遊ぶ?
レジーナの用意してくれた朝食のメニューは、マスのソテーに、焼きトマトと焼きキノコ、そして潰したジャガイモだ。
レジーナと暮らすようになり、スクートは初めて焼きトマトを食べた。
酸っぱいトマトが甘くとろとろに変身するのを目の当たりにすると、やはり人間の魔法使いは侮れないと思う。
レジーナは自分では最下級クラスだと言っているが、それは人間の判断基準がおかしいのだ。
スクートは彼女を優秀な魔女だと確信している。
「今日は何をして遊ぼうか。」
焼きトマトを腹いっぱいに食べ終えたスクートはしっぽをふりながらレジーナを見た。
「街の貸本屋さんに行きたいな。この前借りた本はスクートがみんな読んでくれたから。」
「ええ~。」
スクートは耳としっぽを寝かせて残念そうにした。
「ボクはてっきりピクニックに行くのかと思った。この前、良い場所をみつけたんだ。」
「朝のうちにひとっ走り行ってくるだけよ。すぐに戻るからスクートはお留守番していて。」
レジーナは慌てて言う。
「置いてきぼりなんてもっと嫌だよ。レジーナがいじめられたら大変だから、ボクも行くよ。」
「ありがとう。そのかわり、その後はずっとスクートの好きなことをして良いよ。」
「本当?」
スクートは寝かせていた耳をぴんと立てた。
「レジーナが仕事へ行ってる間に、ボク、この辺にはずいぶん詳しくなったんだよ。この前、いろんな薬草がいっぱい生えてる場所をみつけたんだ。あそこの薬草を使えば、もう冒険者ギルドから質の悪い薬草を買わなくて済むよ。」
「わあ、すてき。」
「へへへ。」
レジーナの顔が輝くのを見て、スクートは得意げに鼻を上へ向けた。
大きなスクートが長い鼻を上へ向けると、小さなレジーナのちょうど顔の前に来る。
「ありがとう。スクート、大好き。」
レジーナはスクートの首に手を回し、黒くてすべすべの鼻にキスをした。
「ボクもレジーナ、だーい、好き!」
スクートが突然、獣人の姿になってレジーナに抱きついた。
「ひゃっ。」
「ボクもレジーナにキスして良い?」
「んひゃっ! だ、だめっ!」
「ずるーい。レジーナはボクにキスしたのに!」
「だって、わんちゃん……。」
「また意味不明な事を。ずるいよ。」
スクートは少しだけ気を悪くしてそっぽを向いてしまった。
まあいいや。
今日は、貸本屋さんへ行った後はボクの好きにして良いとレジーナは言ってくれたんだから、続きはその時にしよう。
匂い立つ薬草のたくさん生えているお花畑で、ボクの好きなことをたくさんしてあげるんだ。
大切なご主人様の命令なんだから。
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皆さまも良い休日をお過ごしくださいね。