休日の朝
以前はせっかくの休みの日も、一日中布団をかぶって寝ているだけだった。
過酷な仕事に心身とも疲れきり、とても体を起こせないというのもあったが、弔い魔女が死者で儲けた金で遊び回るなんて、と、皆から非難されるのが怖かったからだ。
実際は遊び回るほどの金なんて貰っていない。
そのわずかな給料だって、お清めの薬草を買うのに大半は消えてしまうのだ。
けれども、スクートが毎日念入りにお清めをしてくれるおかげで仕事の疲れを翌日に持ち越すことなど無くなったので、休みの日はスクートが考えつく限りの楽しいことをして二人で遊んだ。
せっかくのお休みにこんなに動き回って、疲れてしまったら翌日の仕事に触る。
レジーナは初めはそれを心配していたが、不思議なことに休日にスクートと二人でたくさん遊んでくたくたになって床についても、翌朝目覚めると疲れどころか気力がみなぎるのを感じた。
きっとスクートが何か魔法をかけてくれているのだろう、とレジーナは考えた。
「私はいつもスクートのお世話になってばかり。お返しができないのが心苦しい。」
「レジーナはボクのご主人様だから、ボクとレジーナは一心同体なんです。
レジーナが元気だと、ボクも元気になるし、幸せだと、ボクも幸せなの。
だから、結局ボクは自分のためにやってるんだ。
ボクにお返しがしたかったら、レジーナが幸せになってくれるのが一番手っ取り早いんだよ。」
申し訳なさそうに訴えるレジーナにスクートは微笑んだ。
「それに、お休みの日にたくさん遊んで元気になるのは魔法なんかじゃないよ。」
「そうなの? ちっとも知らなかった。」
スクートの話にレジーナは目を丸くする。
「スクートは本当に頭が良いねえ。」
普段は何もかもをスクートにやってもらっているから、たまの休みの日はレジーナが朝食の支度をすることになっている。
レジーナの小屋のある修道院の荘園には小川があり、昨日のうちに魚の罠を仕掛けておくと、翌日太った川魚がたくさんかかっている。
自分たちが食べる分だけを桶に移し、残りは放してやって、小屋の裏手のブリキの空き缶で作ったかまどでハーブをたくさん使ってソテーにした。
頭や内臓は荘園に棲むキツネ達に投げてやる。
作物を荒らすウサギやネズミを狩ってくれるから、荘園のキツネは殺してはいけないのだ。
キツネ達ももうよく解っていて、レジーナが小川から桶を抱えて小屋に戻るのを遠巻きに見ながら大人しく待っている。
こんなに食べ物をあげているのに彼らが決して近寄ってこないのは、自分が弔い魔女だから穢れを恐れているのだろうか。
毎日スクートがお清めしてくれているから他の生き物に迷惑をかける心配は無いのだが、キツネ達にはそんな事は解らないのだろう。
レジーナはそう考えていたが、実際は、レジーナの後ろで嫉妬深い大きなブラックウルフ種がひとつきりの鋭い目を光らせているから怖くて近寄れないのだった。
お読みいただきありがとうございます!
引き続きお楽しみいただけたら嬉しいです♪