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09_生存遊戯_セレネ

 

 セレネはサバイバルゲームの参加者である。

 

(現地民に協力を得るのはルール上問題なし、あとは上手いこと仲間に引き込むだけ)

 

 彼女は何としてでもサバイバルゲームに勝たなければならない事情があった。

 

「ねえ、私に協力してくれない?」

 

 耳についているカナル型イヤホンデバイス越しに提案する。

 

「僕に何のメリットがあるの?」

 

 ナガトは静かに聞く。

 

「私、こう見えて実家が太いの、もしも私に協力するなら相応の報酬を払うわ」

「お金はここじゃ役に立たないよ」

「ふーん、じゃあ何か欲しいものは?」

「特に……ないかな」

「じゃあ、これは?」

 

 セレネは自分の持っている銃を見せる。

 

「銃?」

「ええ、古臭い300年前に使われていた火薬式の銃、私たちはかつてこの銃をアハトウントノインツィとかアハトノインと呼んでいたりしたわ」

「300年の前の銃ってそれ動くの?」

「大丈夫よ。ちゃんと弾は出るわよ。弾も40発くらいはあるわ。これもおまけするわ」

「いや僕銃使えないし、使わないよ」

「お願い! 私はこのサバイバルゲームに勝たなきゃいけないの!」

「どうして?」

 

「父の遺産を取り戻すために」

 

「遺産?」

「私の両親は少し前に事故死したの。明らかに不自然だったけど」

「不自然?」

「ええ、遺書には当時の副社長に遺産が渡されるなんて書いてあったの。私と両親は副社長に騙されて会社と財産を奪われた」

「……それは気の毒に」

「だから裁判を起こすのだけどそれには多額のお金が必要なの。だからこのサバイバルゲームで優勝して私は父の遺産を取り戻すの」

「そっか……」

 

 ナガトは無機質な反応だった。

 

「別にお涙頂戴なんかいらないわ、私はどんな手段、どれだけの血が流れても遺産を取り戻す。そのためにナガト、あなたに協力を依頼するの」

 

(これじゃ引き受けてくれなさそうね……)

 

「いいよ。協力するよ」

「え、いいの?」

「いいよ。ここで断ったら……殺されそうだし」

「流石に無関係な人間まで殺さないわよ」

「それにその銃を持っている時点で、かなり追い込まれているんでしょ?」

「た、確かに今の時代、火薬式銃なんて古臭いし時代遅れも甚だしいところだけど、良いところもいっぱいあるのよ?」

「そうなの?」

 

「ええ! まずはいい音が出る」

「それ居場所がバレちゃうね」

「ストックから来る衝撃、ズドンって重くなるのが良いわ」

「反動が大きいってことだね」

「火薬が燃えた後の匂いが」

「それ臭いよね」

「全部良いところじゃない!」

「いや戦いにはいらないよ」

「あなたはロマンと言う言葉を知らないの?」

「殺し合いしてるんだよね」

「あと値段が安い」

「あ、それはいいね」

「でしょ……このアハトノインはかつて時代を席巻した武器のひとつよ。状況次第では今でもやっていけるのよ!」

 

 セレネはそこから火薬式銃の素晴らしさをクドクド説明したがナガトにはいまいち響くものはなかったようだ。

 

 

 

「で、これが第一次世界大戦で使われた銃の話はあらかた終わり!」

「あー……ちょっとそろそろ寝ようかな」

「あら、話はまだここからなのに」

「いやもう、かれこれ##時間は##で######」

 

 徐々に耳に装着しているデバイスの作動が悪くなる。

 

「あら充電切れかしら」

「#########」

 

 ナガトは横になって眠り始めた。

 

「まぁ、太陽光で充電できるしまた明日ね……」

 

 

 セレネはアハトノインを手に取るとボルトを引いて銃弾がチャンバーに装填されているか確認する。

 

「本当にいいライフルね」

 

 銃身を二、三回撫で、ぽつりと呟く。

 

 セレネは念のためアハトノインを抱えるようにして眠りについた。

 

「男は獣って言うしね……」


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