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82_桜花動乱_ナガト

 

 椿宮師団、訓練場にて。

 

 インターンとしてメズキの部下となったナガトは、生まれて初めて銃を手にしていた。

 

 

 

「これはガウスキャノンと呼ばれるタイプの銃で銃身内にあるバッテリーとコイルによって弾丸を加速させるタイプの銃です。威力は火薬式に比べ、弾丸そのものが軽い材質になっているため威力は一段劣っています」

 

 見た目こそ少しゴツくなったアサルトライフルをナガトは持たされていた。

 

「じゃあ火薬式の方が良いのでは?」

「ガウスキャノンの最大の長所は静音性です。火薬式の何倍も音が小さく不意打ちに向いています。ナガト君のベースを考えるとこちらの方が合っているように見受けられました」

「なるほど……」

「御託はさておきまずは使い方を覚えて下さい。銃口の安全管理、射撃、CQB……覚えることは沢山あります」

「初めてなのでできるだけお優しく――」

「私がどんなに全力でしごいたとしてもチユ以上にはなれないのでご安心を」

 

 メズキは銃の所作を懇切丁寧に教え始める。

 銃口管理、射撃姿勢、トリガーの引き方、リロード、突発的な不具合への対処を教え込んだ。

 

 

 

 

 

 ものの数時間でナガトの射撃スキルは大幅に上昇する。

 

「だいぶサマになってきましたが、明日半分以上忘れているでしょう」

「いや……それは……」

「それが普通の人間です。特殊感染者になっても内面的なスペックは大きくは変わりません。まずは自分が凡人であり、失敗し、努力することが重要なのです」

「凡人……ですか」

「チユのしごきに耐えられた。確かにそれは才能かもしれません。ですがたかが知れた才能です。そこからどう伸ばすか、どうやってスキルに生かすかその努力が必要です」

「はい……」

 

(俺……そんな才能ないのかな……ちょっとはやれてるんだけど思うんだけどなぁ)

 

「しかし、尻尾を使って姿勢を安定させるのは良いアイデアです。考えたのですが尻尾をそのように使えるなら、足を進めながら尻尾で反動を受け流して射撃ができそうですね。やってみましょう」

「はい!」

 

 ナガトは尻尾と足をぎこちなく動かして射撃を始める。

 

「動いているときは銃弾に慣性が掛かることを意識してください。ながらで撃つというより、動いて止って撃つをスムーズかつその所作を早くするようなイメージです」

「止ってしまうと撃たれてしまうのでは?」

「確かに実戦では当たってしまいます。ですがアクションを細分化してまずは流れを覚えるところからです。徐々でもいいのでスムーズにできれば流れとして出来るようになります」

「了解です」

 

 ナガトは言われたとおりにひとつひとつのアクションを分解してまずは流れを覚える。

 

「お、当たりました」

「良い感じです。それをスムーズに出来るように」

「はい!」

「では続けてください」

「はい!」

 

 ナガトはメズキの優しい指導に鳴きそうになりながら射撃訓練を続けた。

 

「ところで休憩していないのですが大丈夫ですか?」

「まだ訓練始めて数時間ですけど?」

「二、三時間に一回は休憩を取るのですが……」

「え?」

 

「チユとの訓練では休憩をどのぐらいの頻度取っていました?」

「三日に一度、四時間くらいです」

「それは休憩とは呼びません……」

「え? 眠れますよ?」

「…………少し休みましょう。私が持ちません」

 

「はい!」

 

「これは……別の意味で大変になりそうですね」


 


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