70_一刀両断_チユ
話はナガトがセレネと共にジェット機で飛び立つところまで戻る。
「逃げられると思ってるのかしら?」
チユとカナメは既に追跡、というより先回りしていた。
とどのつまり、ナガトとヤマトの無茶を最初から最後まで見ていたのである。
「二人ともこれは命令違反よね……」
「ああ、でも目をつぶっても良いくらいの功績なんだよな」
君影研究所の屋上から三人が話をしているのをチユとカナメは眺めていた。
「どうする?」
「そうだな、二人とも等級昇格でいいんじゃないか?」
「そうね。十分過ぎるわ」
「いやぁ、まさかここまでやるとは思わなかったさ」
「ふふ、そうね」
「だが、無断で行動したことの罰はしっかりやらねえとな」
「でもこれ、どう見ても私たちの監督責任もあるわよね」
「そうなんだよなぁ……」
カナメは右手を挙げる。
それを見たチユも右手を挙げる。
「「最初はグー、じゃんけん、ポン!」」
カナメがグーでチユがチョキを出す。
「お前、わざと負けたろ?」
「何のことかしら?」
「今まで五十回はじゃんけんしてるけど一度もお前に勝ったことねえよ……」
「だってじゃんけん選んでる時点でカナメが責任を取るつもりだったじゃない」
「あのなぁ……」
「良いじゃない。どうせそこまで重くはないのだから」
「おま……ホント性格悪いな」
「良い性格の間違いじゃないかしら?」
「はぁー、まぁ良いけどさ。それじゃ、罰として五山の送り火の給仕係をチユとナガトでやれよ。メイド服着て、お帰りなさいませご主人様って一人一人に言って接客しろ」
「私の年を考えてよ」
「丁度良い罰だろ」
「しょうが無いわねえ……」
二人はナガトたちにバレないように大慌てで椿宮師団に戻るのだった。
「でも、今日は良い酒が飲めそうだな」
「奇遇ね。用意させておくわ」
「とびきり良い酒を二つ」
「二つ? そんなに飲むの?」
「いいや、もうひとつは家出息子を心配する母親への贈り物だ」
「いいわね。やっておくわ」
カナメとチユは右拳をコツンとぶつけ合って喜ぶのだった。




