58_一刀両断_ムサシ
君影研究所は二十四時間体制で必ず誰かしらがいる。
たまたま今日の朝食はフソウと同席だった。
「おっすムサシ、今日も物騒なもの持ち歩いてるな」
「おはようございますフソウさん。こうでもしないと秩序が保てないので」
「嫌われ警官役か、貧乏くじを引く趣味でもあるのか?」
「別に、ただ誰かがやらないと」
「それもそうだな。今日も見回りご苦労さん」
「今日は、最近ちょっかいかけてる奴らの拠点に行きます」
「あんまり無茶するなよ?」
「原因を潰ぶさないことには始まらないですからね」
「そりゃ……」
「それじゃ、そちらも大変ですが頑張って下さい」
「……はぁ……おう! 任せとけ!」
ムサシは足早に食器を片付けて研究所を飛び出す。
(フソウさん、嫌いじゃ無いんだけど妙に馴れ馴れしいのがなぁ……)
鍔に指をかけたままムサシは研究所に悪さをしている連中の拠点へ向う。
(そう言えばフソウさんにも小生と同じくらいの弟がいるって言ってたな。弟を思い出してあの距離感なのか?)
ムサシはそんなこと考えながら、拠点に到着する。
拠点に着いてからの行動はシンプルで、全員斬り捨てる。それだけだった。
今まで決められたルールの中で戦っていたムサシに人斬りという痛烈な経験を蓄積されていた。
指先が凍るような感覚だった。冷たく鋭く、鉄のような。刀と腕が溶け合いまるで体の一部のような気さえムサシの中に生まれる。
切っ先と骨格を揃えて開始点と終了点を一直線に結ぶ。
素直な起動は最速で首や脇、太ももなどの大動脈を切り裂き死に追いやる。
それを繰り返す。
軌道をいかにブレさせずに斬るか、それだけをひたすら考える。
そうすれば、敵を全て切り伏せられるから。
「ふう……」
一通り切り伏せると、地面に座り込んで休憩する。
(これでしばらくは平和になるといいな……っと思ったんだがな)
しばらく休憩した後、ムサシは使えそうな物をかき集める。
元々は廃村を利用したのかほとんど植物が覆い尽くされており、そこにテントを張っていたようだ。
「食糧に服、結構色々あるな。お、なんだこれ?」
錆びてボロボロの刀が粗雑な扱いで道具箱に埋められていた。
「可哀想にな……小生は研ぎ師じゃないけど錆くらいは落としてやるよ」
(刀は手入れを怠ると直ぐ錆びるんだよな)
研究所に戻ると少し慌ただしい雰囲気になっていた。
「よぉ! 遅かったな! ちょっと心配したぞ」
「フソウさん、随分、騒がしいですね」
「急患が一気に押し寄せてな唾付けときゃ治るくらいの軽傷なんだが、念のため破傷風の予防接種とかなんかで。しかも数が百人くらいだからな。色々大変なことになってんだ」
「そうか、手伝うよ」
「おう!」
(一人でも多くを助けないと)
ムサシは直ぐにシャワーを浴びて清潔な服を着る。
そして自分でもできる手伝いを始めた。




