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55_修練進化_AT_アイリ

 

 

 シルバーベル、聖堂内の食堂にてアイリはひとりため息をついていた。

 

(最近、調子が悪いわ……便秘ね……)

 

「んあ、聖女サマ、浮かない顔してどうしました? 便秘ですか?」

「ヴッ! あなたねえ。レディに失礼じゃない?」

「図星かぁ……」

「あなたねえ!」

「まぁまぁ、糞詰まり聖女サマ、ここは穏便に」

 

「まったく、男の人は悩まされないらしいわね。アレに」

「こればっかりは男女の骨格差がありますからね」

「はー、何だかけだるけよ」

「あ、そうだ。そんな聖女サマにいい食材が」

「食材?」

 

「まぁ料理してきますから少々お待ち下さい」

 

 クラウンは厨房で料理を始める。

 

(毒盛りそうね)

 

「できましたよ」

「随分早いわね」

「描写が面倒になったようです」

「そう言う事言うんじゃありません」

 

「というわけでどうぞ、毒は入っておりませんので」

 

 数々の料理がアイリの鼻をくすぐる。

 どれも魚料理のようだが、スパイスやハーブの香りが立ち上り匂いだけでよだれが出てきそうになった。

 

「本当に毒は入っていない?」

「ええ、もちろん」

 

 クラウンはフォークで料理の一つを無造作に選んで口に放り込む。

 

「ほらね」

「それなら……」

 

 アイリはムニエルと一口食べる。

 

「何これすっごく美味しいじゃない!」

 

「どうぞ、全部聖女サマのものです。好きにお食べにください」

 

 アイリは久々のご馳走に舌鼓をうち、お腹がいっぱいになるまで魚料理を堪能した。

 

 

「ふう、美味しかった」

「それはよかったです。これで便秘もよくなるでしょう」

 

 そう言いながらクラウンはアイリに大人用のおむつを一箱渡す。

 

「おむつ?」

「ええ、人間として失格しないようにお履き下さい。一週間ほど」

「え? なんで?」

 

「だって先ほど食べた魚は、バラムツですもの」

「バラ……ムツ?」

 

 

 バラムツ、スズキ目サバ亜目クロタチカマス科の深海魚。

 味は大変美味、油が乗った刺身は全身大トロとも言われている。

 

 だがこの油は人間では消化できないため、食べると消化出来ずに尻から液体状の油が本人の意思に関係無く吹き出る。

 

 つまりそういうことである。

 

 

「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」

※U○welcome s○hoolが流れる音。

 

 

 

 この後、アイリは二度とバラムツは食べないと誓うくらいには悲惨な目に遭うのだった。

 

 

「尻から油が噴き出す聖女サマ……ぷぷぷ」

 

 悪辣にほくそ笑むクラウンは健在だった。

 


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