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53_修練進化_AT_ナガト

 

 

 話は骨折したナガトにメイクを施したら思わぬ才能が開花してしまった頃になる。

 

「え、師匠、まじでハニートラップの訓練するんですか」

「やります」

「俺男なんですが!?」

「男なんて顔さえ良けりゃ何とでもなるのよ」

「それは……それもそうか」

 

「と言うわけであなたの顔をいじり倒して見ようかしらと思って、現役時代に実際に着た衣装を持ってきたわ」

 

 病室にずらりと並ぶ数々の衣装が移動式のハンガーラックに吊されている。

 

「師匠……」

「何かしら?」

「バニースーツも使ったんですか?」

「アメリカの潜入任務ね。カジノのディーラーをするときに使った」

 

「へぇ~、師匠美人だから絵になるんでしょうねえ」

「あなた、そう言う事平気で言うのね?」

「へ?」

「ちなみにそのバニー、返り血ついて落ちないからもう使え無いのよね」

「なんで残しているんです?」

「獣桜組の忘年会で罰ゲームに使ってる」

「返り血ついてるのに……」

「酔っ払ったら誰もわからないわよ」

 

「え、じゃあこのレースクイーンみたいな衣装は?」

「みたいじゃなくてレースクイーンの衣装よ。それを着て本当にレースクイーンやったのよ」

「すげえ本物の工作員みたいだ」

「本物の工作員なんだけど……」

 

「すげえ今更なんですが、そもそも工作員って何ですか?」

 

「ふっ……具体的な所属については自分で調べてみなさい。まだ無理でしょうけどそれくらい調べるようにならないと育てる意味がないもの」

「えー、そんなケチケチしないで」

「だーめ」

「うっす……」

「でもまぁ、面白かった事件はいくつかあるわよ」

 

「どんなのがあるんですか?」

「私にも師匠がいたんだけど、色々あって敵同士になったの、お互いにどんな手を使ってくるかわかりきっている中で裏を掻くのよ。偽情報を掴ませたり、ヒットマンを派遣したり」

「辛くなかったのですか?」

「うーん……辛いと思った時には全て終ってたから。とにかく必死だったのよ」

「そうですか……」

「最後は炎上する建物の上でナイフファイト、お互いに手の内なんてわかりきっているから中々決着つかなくて大変だったわ」

「映画みたいですね。どっちが勝ったのですか」

「私の勝ち」

「まぁ、そうですよね」

「でも、その後が大変だったのよ。まさか東京湾のど真ん中から対岸まで泳いで帰ることになったんだから。しかも真冬に!」

「うわしんどい」

「海水でナイフ傷がしみるし、寒いしでもう散々よ」

「でも無事に生きて帰って来たんですね」

「低体温症に何針も縫う傷が十箇所以上、打撲に捻挫、腕の骨は剥離骨折、全然無事じゃないわよ」

「……よく生きてましたね」

「何ならそれで真冬の海水浴よ」

「死ぬ……」

 

「まぁ流石にあなたの訓練でそこまでのことはしないわ。特に骨折は癖になったり変形した状態でくっつくと大変だから」

「よかった……」

 

「さて、無駄話はこれくらいにして、色々着せ替えであそび……訓練しましょう」

「師匠遊ぶ気満々じゃないですか!」

 


 


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