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05_忌憚再演_ナガト

 ナガトは目を開ける。

 月と星が見えた。

 

 首を横に向けると焚き火、その奥には人の足が見えた。

 

「おっ、気が付いたか」

 

 男が金属製のコップで何かを飲んでいた。ナガトに視線を向けると気さくな態度で声をかける。

 

「ここは?」

「東京付近の林の中だ」

 

 男は続けて話をする。

 

「シルバーベルじゃ、散々だったな」

 

 ナガトは牢屋に入られたこを思い出し顔をしかめた。

 

「あ……助けてくれたのですか」

「まぁな、気まぐれだけど」

 

 男は立ち上がる。ナガトは首を大きく上に向ける。

 

「背デカいね」

「190cmあるからな」

「僕もそれだけあれば良いんだけどね」

「そうでもねえよ、そっちはいくつだ?」

「165cm」

「……普通だな。俺はヤマト(大和)、そっちは?」

ナガト(長門)です」

「ナガトか」

 

 黒髪に荒々しい猛獣のような威圧的な目つきに大柄な身長の男ヤマトはバックパックをナガトに渡す。

 

「あ、これ僕の」

「やっぱお前のだったか、匂いがすっからもしやと思ったが、パクってきて正解だった」

「ありがとう」

「ついでだ。シルバーベルに行って何も出来なかったからな」

 

「何をしようと?」

「あそこをぶっ潰そうと思ってな」

「潰す?」

「ん? まぁ、皆殺しだな」

「なんでそんなことするの?」

「そりゃあ……あのな、自分のされた仕打ちを忘れてねえか?」

「あ……いや……」

 

「お前、今、シルバーベルに目を付けられてんぞ」

「え、どうして?」

「アイリっていう女がお前に犯されただの暴力を受けたのだの殺されかけただの言いふらしているからな」

「そんな」

「今じゃお前は強姦野郎のクソ感染者さ」

 

「感染者?」

「ウイルス……なんて言えばいいか、あれだよあれバケモノになるやつ」

「なら僕は感染者じゃないよ」

「ん? いやお前どう見ても」

「何かの間違いだよ」

「あぁ……そういうことならそれでいい。たまーにいるんだよ感染者なのに自分の精神を守るために頑なに認めないやつ」

「いやだから僕は」

「もういい、そんだけピーピー叫べるなら十分元気だろ。これでも食ってな」

 

 ヤマトは棒状のビスケットをナガトに渡す。

 ナガトは取りあえずビスケットを受け取り、一口かじる。

 

「感染者じゃ……」

「はぁ……まぁどーでもいいけど。しばらくシルバーベルには近寄るなよ」

「……わかりました」

「ここから北に行ったところ、東京のえーっと……まぁその辺行ったあたりに椿宮師団(つばきのみやしだん)の拠点がある。事情を言えば保護して貰えるかもな」

「椿宮師団?」

「感染者の寄り合いの一つだ。関東で一番幅を利かせている」

「だから僕は――」

「まー落ち着け、椿宮師団は別に非感染者の保護もやっている。感染者も非感染者どっちにも力を貸してくれるらしい」

「……教えてくれてありがとうございます。」


「あっ、東京とつっても新宿区らへんは行くなよ。あそこはサバイバルゲームの会場になってる」

「サバイバルゲーム?」

「今の日本がこんななったのを良いことに趣味の悪い金持ちが金に困っている奴らをここに放り出して殺し合いをさせる。ここはもう政府としての機能はねえ。警察も自衛隊もいない。言っちまえば何やっても良いってことだな」

「アニメみたいな話だね」

「だな、でもまぁ、金持ちもタダでここを使っているわけじゃねえらしい。詳しいことは知らねえ」

「そうなんだね」

 

 

 

 

 

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 ヤマトはコップに入っているお湯を飲み干す。

 

「俺は寝る」

 

 木の根を枕にしてヤマトは眠り始める。

 ナガトもバックパックを枕にして眠りについた。

 

「こんな時代……か」

 

 

 

 

 翌朝。

 

 一晩考えてからナガトはヤマトに別れを告げてから椿宮師団に向うことにした。

 理由は簡単で方位磁石だけで家に帰るのはナガトにはほぼ無理だから。

ナガトはあくまでも来た道を戻ることは出来ても、新たなルートを開拓するのは無理だった。

 

 

「椿宮師団に行くのか、気をつけてな」

「お世話になりました」

「いいよ別に、それじゃあな」

 

 ヤマトに頭を下げて礼を言って別れた。

 

 

 バックパックを背負い、ナガトは東京に向った。

 


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