44_修練進化_セレネ
サバイバルゲームに勝利したセレネは、両親の残した会社を取り戻すべく裁判を起こし、見事に副社長を追放することに成功した。
それからの事業成長は目覚ましく、ライバル会社をたった数ヶ月で吸収合併し、のし上がり続けていた。
セレネは自家用ジェットでホログラフィック投影されたタッチパネルをめまぐるしく動かして業務を処理していた。
「ふぅ……これで休暇に入れそうね。まぁ仕事の一貫だけど」
「…………」
日本人の寡黙な女性、黒髪をベースに黄色のエクステが特徴的でシャープな顔立ちに反して柔らかい目をしている。名はケラグイ。
そんな彼女は肩をちょっと動かしてリアクションする。
ケラグイはカナメ天帝陛下が寄越した護衛で、感染者等級は丙種を保持する。
セレネは何度かケラグイが戦っているところ目の当たりにしたが、セレネはこれで丙種なのかという感想を持っている。
「ケラグイ、何とか言ったらどうなの?」
「…………業務にないことなので」
「ちょっとくらいハメを外してもいいんじゃない?」
「…………護衛が仕事なので、気は抜けません」
「つれないわねえ、今は空中なのよ。ミサイルかドローンでも飛んでこない限り大丈夫だし飛んで来たら即死よ?」
「感染者が狙っている可能性があります」
「機内はチェック済みよ。まさか空から飛んでくるわけないでしょ?」
「…………いますよ。空を飛ぶ感染者」
「本当に言ってるの?」
「…………はい、私が知っている限り、一部隊存在します」
「詳しく教えて頂戴! 気になるわ!」
「…………獣桜組に問い合わせて下さい」
「武装化警備会社獣桜組……結構黒い噂を耳にするけど、どのぐらい真っ黒なのかしらね」
「…………前身がヤクザ、もといジャパニーズマフィアですからね。それに武装化警備会社なんて肩書き程度で実際は裏社会を牛耳っていだけですからね」
「でも麻薬や売春、人身売買はやっていないそうね?」
「ええ、当代であるエマはカナメとの同盟を組む際にそれらをある程度調整する役割をたのまれていますからね」
「毒をもって毒を制す。ね」
「…………もっとも、あの抜け目のない牛頭女のことですから、もっとあくどいことをしているのでしょうね」
「会うのが楽しみね」
「…………今は甲種が代替わりしてさほど時間が経っていないので話はしやすいと思います」
「前の甲種はどんな人物だったの?」
「…………二人おりましたが、そのうちの一人は一切不明、素性も顔も性別さえも不明、噂に聞くのはZRATSという本当に存在するかもわからない部隊員だったとか」
「もう一人は?」
「…………人斬りクラマ」
「クラマ?」
「…………あの人を一言で表すなら、剣客ですね」
「サムライかしら?」
「…………侍と言うより剣客です」
「何が違うの?」
「…………侍がそちらでいうナイト、あくまで地位や役職を示しますが、剣客は剣で生計を立てるようなニュアンスですね」
「面白いわね。でも現代兵器じゃ勝てないのでしょうけど」
「…………完全武装のアンドロイド兵の部隊を切り伏せています」
「はぁ? そんなことできるわけないでしょ? 生身の人間でしょ?」
「…………ええ、やったんですよ。言葉が悪いかも知れませんが、感染者は兵器を内包した人間みたいなものですからね」
「そこまで言うなら、私も負けてられないわね」
セレネは一拍置いてからハッキリとした物腰で言う。
「この世界有数の狩猟・軍需産業メーカーであるシュミットトリガ社が全力で現代兵器の強さを証明してあげるわ」
自家用ジェットが目的地に着陸する。
自動でドアが開くとセレネは身を乗り出して地面に降り立つ。
「さぁケラグイ、久々の日本よ!」
「…………ええ、嬉しい限りです」
セレネ・シュミットトリガ、狩猟及び軍事の武器設計開発量産の大手企業シュミットトリガ社の代表取締役社長兼CEOである。
そして、レブルウイルス感染者でもある。




