24_鼓動継承_ナガト
ナガトはフソウが帰るまで君影研究所でのんびり過ごしていた。
食事にも困らず、寝る場所にも困らない穏やかな時間を過ごすのはナガトにとって何年ぶりかも思い出せないほど久しいことだった。
(いやでも流石になにか手伝わないとな)
研究所の地下実験室に向うとアンナがモニタードローンで何かを操作している。
想像していた通りの研究所という内装だった。
「おや、何か入り用かい?」
「あー、いや、流石に食って寝てばかりだとあれだし、手伝えることがあれば」
「ふむ、と言ってもほとんどの作業をドローンに任しているから本当にやることはないのだよ」
ドローンがピピッと音を出す。
「おや、団体の来客だね」
「あ、代わりに話し聞いてくる?」
「それもドローンで出来るのだが……まぁ、人間が出た方がいいか。よし、頼むよ」
アンナの指示を受け入れナガトはエントランスに向う。
「ごめんくださーい!」
若い男性の声が聞こえた。
「はーい!」
ナガトは内側から自動ドアを操作して人を招き入れる。
「ここは君影研究所ですか?」
「はい、アンナ先生にご用ですか?」
「いいや、ナガトという男性……君だね?」
「そうですよ」
「ああ、良かった。僕はクラウンって言うんだ」
「クラウン?」
(変わった名前だな。親が海外の人かな?)
「ナガト、君に用があってね。まぁ、手ぶらもアレだしどうかな?」
クラウンは落雁を渡す。
「あ、ありがと」
ナガトは落雁を受け取ると口に含む。久々の甘味に
「美味しい?」
「うん」
「それは良かった」
「ありがとうございます」
「さて、ナガト、君は感染者で合ってるかな?」
「合ってますけど?」
「そっかそっか」
クラウンは腕時計をチラチラと確認する。
「好きな食べ物は?」
「うーん……特にないかな」
「ここに来てどのぐらい」
「一昨日だね」
「今何歳?」
「たぶん二十歳は超えていると思う」
「ベースは何を持っているの?」
「えーっとなんとかヤモリとなんとかヘビ」
「人生楽しい?」
「ほどほど?」
クラウンは時計をしきりに確認する。
「さっきから時間を気にしているみたいだけどどうしたの?」
「ん? ああ、君に食べさせたお菓子に仕込んだ毒がそろそろ効く頃かなと思って」
照明が落ちる。
「え――」
ナガトは心臓を押さえてその場に倒れ込む。
「あは、時間通りだ。それじゃみんな、コイツを連れていって。死んじゃってもいいから。どうせ毒で助からないだろうし」
「ちょっと――ま――」
混濁する意識の中、ナガトは手を伸ばしすが何も掴めない。
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