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164_超越再来_ムサシ

  

(何とかナガト君だけでも先に進ませられた)

 

「やるなあ、兄ちゃん」

「そりゃどうも」

「俺はコードネーム アサルトだ。そっちは?」

「……コードネームってわけじゃないけど、鎧武者かな」

「よろしくな、サムライボーイ」

 

 アサルトはムサシの太刀を拾い上げると投げ渡した。

 

「なぜ渡した?」

「俺は正々堂々した勝負が好きでね。まぁ、あれだ。ここからが楽しいところだろ?」

「へえー負けるのが趣味なんだ」

 

 挑発するようにムサシはアサルトを煽る。


「言うねえ! でも勝つのは俺」

「勝つのは小生さ」

「じゃあ話は早い」

「そうですね」

 

「いざ尋常に」


 アサルトは笑う。


「勝負――」

 

 ムサシが応じる。

 

 

 地面を縫うような低い位置から滑り込むようにムサシの刃が走る。

 棍棒がその行く手を阻むと同時に先端がそのままムサシの顎を狙う。

 首をわずかにずらし棍棒を避けるとそのまま刀を更に走らせる。

 

 

 光が走るような光景。

 

 だがムサシの刃が届くことはない。

 それどころか棍棒がムサシの胸の甲羅を砕く。

 

 痛みと衝撃で意識が文字通り飛びそうになる。ブラックアウト寸前ところ、本能的に刀がアサルトの首を狙うが読まれていたのか苦も無く避けられる。

 

「……お強いですね」


 確実に肋骨が何本か折れている。


(次食らったら間違い無く死ぬ)


「喧嘩に自は信あるぜ」

 

 言葉を投げて一瞬の隙を作らせる。

 その僅かな時間で呼吸と意識を整える。

 

(全て先手を打たれている……次は上から狙ってみるか?)

 

 ムサシは切っ先を向けると同時に上から一刀を浴びせる。

 

 だがこれもクリティカルなタイミングでいなされる。

 

「やるねえ!」

 

 アサルトは煽るように言う。余裕の表情は今も崩れない。

 

(まるで心を読まれているような……まさか)

 

 ムサシは大きく一歩を踏み出す。

 

 右手で持った刀が真っ直ぐに振り降ろされる。

 左手は無を掴んだまま切り上げの動作を行う。

 

 アサルトは迷うことなく上の刀を対処する。

 そして左手の一刀が鈍色を輝かせる。

 

 あるはずのない刃がそこにはある。

 

(任せるよ黒錆神楽)

 

 プラスチック装甲を破ったもののまだ本体にはダメージはない。

 

「……今のが黒錆神楽か」

「それも知られているんだ、アメリカも詳しいね」

 

 アサルトは渋い顔を浮かべた。

 

(やっぱり、ほとんど体を機械化させているから気付けなかったけど、おそらくこのアサルトって男はNNED適合者、心を読む超能力者ってところか)


「へえ、俺の能力にこんなに早く気付くとは驚きだ」

「だが、弱点は同時に一人までしか対象にできない」

「どうだろうな?」

「もし二人同時に心を読めるなら先に行った奴も迎撃できたはずだ。だがあえてそれをしない。ということは自分が不利になる状況を避ける。なおかつこの先にも待ち伏せがいるってことでしょ?」

「ご名答! いやぁ、サムライボーイは頭も良いね」

「種がわかればこっちのもんだ」

「何?」

 

 ムサシはにやりと笑う。

 

「この勝負、小生の勝ちだ」

 

 絶対の確信を持ってムサシは宣言する。

 

「……嘘は言ってない? どこからそんな自信が?」

「では推して参る――」

 

 ムサシは踊るように前へ飛び込む。

 体がふわりと浮くような感覚、目で見ている世界から自分が切り離されているような感覚になる。

 

「えっ――」

 

 今までとは違う、柔らかくも鋭い一撃がアサルトに放たれる。

 

「いよっしゃ、当り~♪」

 

 見たこともないくらいはしゃいだ表情のムサシがいた。

 

「……NNED能力が効かない」

「はい次~♪」

 

 ムサシは口角を上げたままアサルトにさらに一撃を加える。

 

「何がどうなって、まるで別人――まさか」

「ふっふっふ~、正解者に拍手~♪」

「まさか……嘘だろ常人にそんなこと耐えられる――」

 

 アサルトの脳内が混乱している間に黒錆神楽は主導権をムサシに戻す。

 

 一刀――。

 

 黒錆神楽に主導権を渡す。

 

 二刀――。

 

 次はムサシ。


 徐々に装甲がひび割れ終には胴が二つに裂ける。

 

 

「流石に一刀両断、は出来なかったか」

 

 ムサシは胸の激痛に顔を歪ませる。

 アサルトの一撃も、黒錆神楽が咄嗟に肋骨周辺に鉄を集結させて疑似装甲を作り上げたことで致命傷を避けることができた。

 だがムサシの体内に含まれる鉄を一気に消費したため、ムサシの状態は大量出血しているのとほとんど変わりが無い状態だった。

 

「流石に……動けないや……」

 

 ムサシは床に座り込んで静かに休憩を始める。



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