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155/167

155_英雄顕現_ヘラクリス

 

 ジェネレーター解放――

 レギュレーターフルオープン――

 ソードスピア型式『ケルベロス』チャージ開始――

 タワーシールド形式『クレータブル』安全装置解除――

 軽量装甲『ネメア』作動――

 

 

 システムオールクリーン。

 

 

 無機質な機械音声と共にヘラクリスは地面を蹴り上げる。

 

 持ち前の四肢が大地を蹴る度に加速する。

 軽量装甲『ネメア』の筋力補助による効果もあるがそもそもの身体能力が人間という枠組みから頭一つ突き出しているのが見て取れた。

 

 キャンピングカーからは既に数百メートルほど離れた場所、王女のへの道を阻むようにヘラクリスは静かに敵軍を迎え撃つ。

 

 既に兵士や無人機がいくつもヘラクリスを捉えているが攻撃の兆しはない。

 イギリス軍はヘラクリスというただひとりの女性を恐れていた。

 


「どうした、私の背の先にはお前達が捕らえようとしている者がいる」

 

 

 ヘラクリスは威風堂々と宣言する。

 

「ここを通れるのならな――」

 

 ケルベロスが唸り駆動を始める。

 

 

 けたたましい駆動音の後、空気が炸裂する。

 

 横に一振り、ケルベロスの刃から放たれたエネルギーの光が大地を震わせた。

 

 おおよそ50メートルほどまで伸びた光の刃がドローンを一掃する。

 

 

「ここより先、死地と思え」

 

 

 この一撃が開戦の号令となり、まず第一陣は戦士競技者だった。

 万全ではないとは言え、あのヘラクリスを討ち取れる絶好の機会。

 戦士達は逃すことなく果敢に挑んできたのだ。

 

 

「ああ、君は一昨年の予選の方だね。そして君は昨年大会20位、惜しい試合を何度も見たよ。それから君は――」

 

 ヘラクリスはひとりひとりの顔を見て分析結果を語る。


(十五人か……この数を一度に相手取るのは何年ぶりだろうか)

 

 ニヤリと笑う。

 

(挑戦だな)

 

 前へ躍り出るとケルベロスの一閃が走る。


(まずはひとつ)

 

 防具ごとケルベロスが戦士を両断すると、その勢い殺さないまま次のターゲットに目を合わせる。

 戦士達は勇敢にもヘラクリスに挑み、武器を交える。中にはレーザーやリニアライフル、レールガン、ドローンを使う者もいた。

 

 血と焼ける臭い、ジェネレーターの駆動音が響く。

 

 ヘラクリスは鎧を汚しながら今だ毅然としてその力を誇示している。

 が、肩を上下させるほどの呼吸と無数にある鎧の傷が彼女の疲弊を物語っている。

 

 ヘラクリスの首を狙った戦士達を粗方片付けると、いよいよ次はイギリス軍の本陣が現われる。

 

 先の一戦を見てか、物量による制圧をではなく少数精鋭の部隊を投入してきた。

 

「……そうか、残念だ戦友達よ」

「ヘラクリス、これも仕事だ。悪く思わないでくれ」

「部隊長、不幸な神の巡り合わせさ」

「我々もお前だけは相手にしたくなかったさ」

「奇遇だな、私も同じことを考えていた」


「私が英国最強部隊を倒し伝説を作る」「我々が人類最強の伝説を終らせる」

 

 部隊長はニヤリと笑い部隊を展開する。


「勝ちたいよな! この私に!」

 

 英国最強の特殊部隊は万全の準備を整えヘラクリスに挑む。

 

(分が悪いな……やはり私の装備は対策済みか)

 

 ケルベロスの一撃は分類で言えばレーザーに近い、ナノラミネート塗料などをプロテクターに塗布されてしまうので効果が極めて弱くなる。

 それに加えて6名いる部隊の内、2名が近距離重装甲の前衛、3名がドローンと遠中距離に強いレーザーとリニアライフル切り替え式小銃を構えている。そして部隊長であり重火器による分隊支援を行う隊長、卓越した連携は言わずもがな。

 

 それがヘラクリスであっても3分耐えられれば御の字といったところだ。

 

(援軍は、間もなくか、もう一踏ん張りするとしよう)

 

「さぁ英国最強部隊にして戦友達よ、手の内はお互い知っているだろう。覚悟もあるだろう」

 

 ヘラクリスは時間稼ぎついでに声を張る。

 戦友たちは最後であろう言葉に耳を傾ける。


「だが、この座は安くない買い物だ」


 ケルベロスを高らかと天へ向ける。

 部隊長は笑って、それから静かにヘラクリスへ言葉を手向ける。


「降参せよ」




ΜΟΛΩΝ ΛΑΒΕ(来たりて取れ)!!」

 

 

 

 


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