152_英雄顕現_ヘラクリス
キャンピングカー、それなりの格好をすれば王女もその護衛たる騎士もただの若者になれる。
車内の後部で二人は心を落ち着けるためにひっそりとティータイムを始める。
「紅茶が入りましたよ。安物ですが」
「ありがとう」
「中々外には出れませんが辛抱下さい」
「まったく……酷いものね、テロリスト呼ばわりされるなんて」
「辛抱してくださいオーロラ」
「救援も来ないし、捕まるのも時間の問題ねヘラクリス」
「何とかイギリスを抜け、ドイツに行ければいいんですけどね」
「空路もダメ、海路もダメ、逃げてるばっかり」
「おや、そうとも限らないみたいですよ」
ヘラクリスは携帯端末を見て少し驚いた表情を見せた。
「さて、お姫様を救う勇者はどなた?」
「日本です。ダメ元で救援を依頼しましたが、現天帝カナメ陛下が取り計らって頂いたようです。まぁ腕利きをたった一人ですが」
「日本の特殊感染者はランクがつけられている者がいるって聞いたけどその人はどうなの?」
「さぁどうでしょう。返信には何も書かれていません」
「まぁでも天帝が直接指名するくらいの人物なら期待もできるんじゃない?」
「そうだといいのですが」
「まぁ期待するだけしておきましょう」
「期待しましょう」
ヘラクリスは天帝の受諾に感謝の一方を入れる。
直ぐに返信が返ってくる。
「オーロラ、スイミングはお好きですか? とのこと?」
「この時期に私を海に泳がせるの?」
「おそらくは寄港できないから少し距離を取りたいのかと」
「はぁ……死なないように頑張るわ」
「小型のエアボンベがあるのでお使い下さい」
「ヘラクリスはどうするの?」
「私はドーバー海峡なら泳いで対岸まで行けますので」
「それもそうね。元人類最強だものね」
「今年は療養で出場辞退ですからね。やっぱり感染者になると色々弊害が出るみたいですね」
「まぁゾンビにならないだけマシよ」
「ですね。さてでは参りましょう」
ヘラクリスはティータイムを終らせると運転席に座り運転を始める。