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151/167

151_英雄顕現_カナメ


 

 日本帝国、現天帝カナメ。

 

 日本が帝国に戻ってからもう100年以上になる。度重なる政治への失態に業を煮やした者たちが政権を天帝に委ねた。

 以来、日本は再び帝国として名を挙げた。

 

 当然、天帝の一族は苛烈な当主争いに巻き込まれることになった。

 

 が、しかし、カナメの代では当主争いにさえならかった。

 

 

 この男を前にした者たちは口々に言う。

 

 

 ああ、こいつにはどうやっても勝てない――。と。

 

 

 類い希なる才能と刻々と積み上げた努力、そしてフランクな性格。

 だがそんな帝、当代にして即位して程なく、ウイルス災害が発生した。

 それでも度重なる苦難困難を跳ね除け、カナメは前に進む。

 

 

 そんな折、英国より助けを呼ぶ声が届いた。

 

 英国ではレブルウイルス感染者の扱いをどうするか意見が二分されていた。擁護派と隔離派、レブルウイルスの性質上隔離する方が被害が少ないのは目に見えているが、その扱いはどの国も酷いものである。

 公衆衛生という面で見たとき、高い品質を誇る日本が壊滅した事実から来るもの、未知という恐怖に苛まれる心がより隔離という名の迫害を加速させた。

 

 英国は第三王女オーロラ・ヴィクトリアは感染者擁護派で、英国各地で治療と根絶に協力したが、隔離派や政治的な思惑によってテロリスト認定を受けてしまった。

 

 今回、日本へ送られた救援依頼はこのオーロラ・ヴィクトリアの保護だった。


 だが日本サイドはイタリアでアメリカ軍とやり合う準備に戦力の多くを割いている。

 

 救助に向いている感染者であるナガト、ムサシは現在別な任務で身動きが取れない。

 

 日本の防衛力をこれ以上減らすわけにはいかないなど問題が山積みだった。

 

 機動力を持ち、単独で任務を遂行でき、第三王女という人間が納得する人選。

 

「余が行こう」


 そう言い残して、カナメは携帯端末でセレネに電話を掛ける。

 

『はい、何でしょうか陛下』

「今ドイツだったか?」

『いえ、ベルギーです』

「そうか」

『要件は何でしょうか?』

「今からイギリスに行く」

『え? イギリス? 今感染者で大揉め中よ?』

「それを解決しに行く」

『え、ええわかったわ、それでやってほしいことは?』

「いや、謝ろうと思ってな」

『え?』

「これからシュミットトリガ社の試作ロケットを使う」

『……あれ人間が乗れる代物じゃないわよ?』

「そうだな」

『……ま、まさか……やめて株価を下げないで』

「だからすまないと言っている」

『やーーーーめえーーーーーーてぇーーーー!!!!』

「英国、第三王女の命がかかっているんだ」

『寄りにもよってイギリスで一番ホットなテロリストじゃない! あああああもう! この補填は必ず落とし前つけるのよ!』

「余にできることなら」

『言ったわね! ほとぼりが冷めたら戦士競技に出してやるわ! 優勝以外認めないからね!』

「それぐらいでいいなら」

 

 カナメは電話を切ると、ロケットの外壁にしがみ付く。 

 携帯端末からロケット起動し飛び立つ。


 ロケットは発射と同時にマッハ10まで到達し加速を続けながら慣性を利用して飛翔する。もちろん生身の人間なら即死は免れない。

 

 というより感染者でもこの加速に耐えられる者はいない。

 

 

 日本帝国、現天帝を除いては――。

 


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