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147_闘争矜持_ヤマト


 ヤマトが目覚める頃には大方全てが終っていた。

 

「……起きたか」

 

 起き上がると、腕や足によくわからない配線や点滴のチューブなどがヤマトの体中に突き刺さっていた。

 

「いや、起き上がるんじゃない。どうしていつも周りを見てから行動しないのだ!」

「アンナ師匠、俺は勝ちましたか?」

「勝ったよ、しかしよくもまぁあんな馬鹿見たいな殴り合いをしたもんだ」

「勝ったならいいです」

 

 ベッドから出ようとするヤマトを見てアンナはため息をつく。


「寝てるんだ、まだ動ける体じゃないはずなのだが、どうしてそうピンピンしてられるんだ……まぁいい点滴とか外してやろう」

 

 アンナはヤマトの体に繋がれたあれそれを手早く外す。



 

「失礼しまーす。あ、アンナ先生……え、もうヤマトの点滴外して大丈夫なんですか!?」

「ユネか。ヤマトは今さっき目覚めたし、コイツは邪魔と思ったら無理矢理引きちぎるから外しておく方が安全だ」

「へえー意識が……何で戻ってるんですか、予定の十倍は速いですよ!?」

「まぁ、そういう奴としか言えないな」

「まぁ、あのエマ組長と喧嘩師ヒグマの子供じゃあ無理もないですね」


「え、あれ本当だったのか?」

「勝手に遺伝子検査も行ったが、正真正銘、エマの子供だったさ。もっともウイルスのせいで確度は落ちちゃいるがそれでも十分保証できるほどさ」

「マジか、知らなかった」

「意識ないのだから当たり前だろう」

「それもそうか」

 

 ヤマトは起き上がると近くに畳んである自分の服に着替える。

 

「ちょっと待ちなさい」

「おん?」

 

 ユネがヤマトを制する。


「なんで立ってられるの……骨もだけど筋肉も腱もズタズタなのに」

「痛くも何ともねえし、いいんじゃねえ?」

「いやおかしいでしょう! マンガやアニメのキャラじゃねえんだから!」

「それより俺にはやることがあっから、母さんところ行ってくるわ」

「ちょっと待ちな――」

 

 ユネの横をヤマトは過ぎ去っていく。

 

「どうして獣桜組の連中はああいう馬鹿ばっかりなの……」

「まぁでも、あれぐらいの怪我で寝てるのも気合いが足りてないだろうな」

「アンナ先生、あなた医者なんですよね」

「もちろん、ユネより優秀だよ」

「事実なのがムカつく」

「はっはっはっは」

 




 病院から出て獣桜組が宿泊しているホテルに行く。

 ヤマトが来ると直ぐにホテルマンがエマの部屋に案内する。

 

「もう退院? 話より随分早いみたいやけど大丈夫なん?」

「まぁ大丈夫だろ」

「そうかぁそうかぁ」

 

 エマはこの数年で最もご機嫌だった。

  

「話は変わりますが」

「ちょっと待ち、まずはこっちからや」

「はい」

「ヤマト、あんたを寅組組長にする」

「うっす……いや、流石に出戻りでそれはダメでは?」

「ええよええよ、うちの実の息子ってわかったことやし、それに他の組の者も何も言わんさかい」

「承服しました、寅組を預からせてもらいます」

「それと、本日付でヤマトを椿宮師団の一級感染者から獣桜組の乙種感染者に変更」

「天帝陛下のOKもらったんですか?」

「もらっとるよ」

「なら大丈夫か」

「と言うわけや、これからも気張りや」

「はい」

 

「して、そっちの話ってのは?」

「少しお金を工面したく」

「ええよ」

 

 エマは組員の一人を顎で使うと数分足らずで金の入ったアタッシュケースをヤマトに渡す。


「70万ユーロ、日本円で1億、直ぐに出せるのはこんなもんやけど足りる?」

「……まぁ足りると思う」

「ふーん……で、何買うん?」

「女、あ、人身売買とかじゃねえから大丈夫」

「女!?」

「じゃあ、急いでるからまた」

「ちょちょちょ――」


 ヤマトはアタッシュケースを受け取ると足早に去って行った。


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