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146_闘争矜持_ホロケウ

(……嫌な臭いがした)

 

 ホロケウは何も言わない。

 

(どうする? 報告……いや、エマ様を悲しませるのはこれ以上……)

 

 一匹の狼は毛皮の下に難しい表情を隠す。四つ足の肉球は地面にぴたりと貼り付ける。

 

(ノラとアナを追いかけたと思えば、ここに繋がるのか、寄りにもよって、全ての黒幕がタイガか)

 

 ホロケウは静かに鼻をひくつかせる。

 ノラとアナはタイガの足に擦り寄るようにして椅子に座るタイガを慰める。

 沈黙のまま、ホロケウはタイガに尾を向ける。

 それから静かに主のところへ帰る。

 

 

 

 決闘の会場は戦場そのものだった。

 メズキ達が道を開き、ヒクイらが空を落とす。

 それから椿宮師団の連中が海を制圧している。働きとしては申し分が無い。

 

(この騒動もまた、大きな潮流の中にある小さな渦に過ぎないのだな)

 


 ホロケウはエマの足下に擦り寄る。

 

「んー、ホロケウ、どこに行ってたん?」

「少々、野暮用です」

「そう、あんたが野暮用なんて珍しいこと」

「色々、あったんです」

「あった、ねえ。もう終ったの?」

「どうでしょう?」


「ただのヤクザがここまでこれるもんやんなぁ、メリケン共とドンパチするなんて夢にも思わんかったわぁ」

「そうですね、あの、エマ様」

「なんや?」

「NNEDをシルバーベルに横流ししたのはタイガで、そのタイガはアメリカを日本に引き入れた張本人です、トモエ殿下の誘拐の件を加味しても、もう死罪は回避できません」

「そうなぁ」

「それならばいっそ我々で」

「我が子をこの手で葬れ。と?」

「……それが手向けであるかと」

「何も聞こえなかったことにしたる」

「そうですか」


「まぁでも、それさえも決めなきゃアカンのも頭取の辛いところやなぁ」

「そうですね」

「ホロケウ、今はまだそれを決めることはうちにはできん、堪忍な」

「いえ……」

 


「イタリアに来たのは間違いじゃなかった」

 

 ポツリとエマは呟く。その一言でホロケウはエマの思いを理解した。

 

 

 結局、このエマという女は、ヤマトを組に戻す口実を作るために、シラクサーナファミリーを動かし決闘を開き、アメリカ軍を相手取る。

 全てはヤマトという際限ない愛情を注いだ馬鹿息子のために。

  

 エマはそう言う事する人、というのをホロケウはよく知っている。



(蓋を開けたら、そんなことのためにだったか……シラクサーナファミリーもアメリカも出しに使われてさぞご立腹だろうな) 


 ホロケウは何も言わない。

 今日も今日とて、エマの犬。


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