144_闘争矜持_メズキ
獣桜組が馬組、組長メズキ。
馬系の感染者で構成された組員は四百を超える。彼ら彼女らは苛烈な訓練を日課の歯磨きのように受けている。
故に、こう呼ばれた。
馬組に惰弱なし。と――。
「駆けよ――」
メズキの一言がシチリアで最も戦火が猛る場所に木霊する。
全員が臆することなく突撃する。
レーザー、リニアライフル、果ては榴弾。
それらさえ雨粒程度にしか考えず――。
その一番先、矢面に立つはメズキだった。
全身にシュミットトリガ社に半ば恫喝に近い形で作らせた重量を無視しし防御性能に極化させたパワードスーツ。シュミットトリガ社の社長曰く「核でも耐える耐爆スーツ、中身は無事かは知らないけど」とのこと。
このパワードスーツにグレネードランチャーとその弾薬を背負い弾帯で接続している。
要はマシンガンのようにグレネードぶっ放す、イカレ女が誕生したということだ。
こんなものが時速40km程度で突撃してくるのだからアメリカ側も手を焼く。
手を焼く理由はもう一つある。
それは馬組が微塵の躊躇もなく敵がいるなら味方を無視してグレネードをぶっ放すからである。
陣形も何もない、十人十色、完全なスタンドアローン。
この戦闘スタイルについて組長メズキはこう語る。
「味方の攻撃死ぬ程度の軟弱者は馬組に要らない、むしろ戦場で死ねるんですからこれ以上顔に泥を塗ることもないのだからありがたい話です」
と――。
破壊、破壊、破壊。
圧倒的な暴力、戦略も何もない鏖殺。
もとより馬組を投下と更地を作ることは同義である。
「こちらメズキ、任務完了です。死者はいません」
馬組に惰弱なし――。