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142_闘争矜持_ヒクイ


「はーい、こちら鷄組組長のヒクイ、狙撃中どうぞー」

『モブA、OK』

『モブB、OK』

 中略 

『モブZZ、OK』

 

「おめえら、アタシが名前をおぼられないからって諦めるなよ!」

『うるせえ馬鹿組長!』

『そーだーそーだー! 百回言っても覚えない鷄頭ー!』

「悪かったって、まぁ今は仕事中だ。撃墜されるなよー」

 

 ヒクイはニヤリと笑う。

 

「さて、そろそろか」

 

 ヒクイは目の前にある物騒な重火器に手を伸ばす。

 

『チャージ中現在90%』

 

 無機質な音声データから残念なメッセージを受け取る。


「早くして欲しろポンコツ」

 

 シュミットトリガ社を恫喝して作らせた新作狙撃銃の試用を心待ちしていた。


「30mmイリジウム合金弾頭に火薬式による初速、そしてレールガンモジュールバレル、本体重量40kg、バッテリー5kg……最高じゃねえか」

 

 ヒクイは紙巻きタバコに火を付ける。

 

「さて?」

 

 紫煙を燻らせながらチャージを確認する。


『チャージ中現在99%』

「早くしろって言ってんだろ!」


 そう毒づいても早まるわけでもない。ヒクイは周囲をぐるりと見回す。

 

 ヒクイはシチリア島に来てから様々な場所に狙撃ポイントを設置、狙撃用の銃座や予備弾薬、ジェネレーター用バッテリーなどを各所に設置。

 中でも一番手厚く設備を整え司令室として鷄組に命令を出すのが中央司令室だ。

 ヤマトが派手に暴れ回った会場から少し離れた場所にある高台に陣を取っている。

 

『チャージ完了、使用者のバイタルを検知、完了、パルスアーマーを展開』

「お、来た来た」

 

 ヒクイが取り仕切る鷄組の仕事は二つ、制空権の確保と無人兵器を大量に搭載したスウォーム駆逐艦の排除になる。

 既に制空権は確保しているが、問題はこのスウォーム駆逐艦になる。

 船体自体がナノラミネート加工によるレーザー兵器に対し極めて高い耐性を持ち、さらに船全体をプライマルアーマーと呼ばれるパルスアーマーよりも遥かに強力な電磁シールドに覆われておりほとんど攻撃が通用しない。

 

 だがこのプライマルアーマーにはいくつか弱点がある。まずは駆逐艦内部の攻撃には無力、またドローンを発進させる時には干渉を防ぐために一時的にオフになる。

 

 だがドローンが飛び立ってしまうと制空権を奪われ獣桜組は窮地に追いやられる。

 

(まぁつまり飛び立つ瞬間、プライマルアーマーが途切れた瞬間に船を落とせばいいわけだ)


 対駆逐艦よう超大口径火薬式レールガンの出番というわけになる。


「こちらヒクイ狙撃に移る。駆逐艦の図面は……ナガトかパクってきたか……流石はセレネのフェイバリットってところ」

 

 ヒクイはスコープをから海を覗く。


「エーゲ海ってのはこんなに風が落ち着いてるもんなのか?」

『さぁ? でも組長のここ一番ってのはいつも最高の狙撃日和ですよ』

「だな、毎日が狙撃日和だからな」

 

『組長……いえ、隊長決めて下さいね』

「ああ、任せておけ、ZERORATS最高峰の狙撃術を見せてやる」

 

 公安警察の中には表と裏がある。あらゆる手段を使用し国家の敵を排除する汚れ役の裏組織、それがZERORATS。

 暗殺、洗脳、諜報に長けた人の皮を被った化け物達の組織として裏の世界では名高い。

 

 そのうちの一人に腕の良い狙撃手がいた。

 

 傍若無人で口が悪く愛国心の欠片もないような粗暴な女だったが、銃火器の扱いには天賦の才があった。

 仕事でとあるヤクザの組織に入り込んでいたが、その折りにウイルス災害に巻き込まれ、その組長に命を救われた。

 

 組長は奇特な性格をしており、ヒクイがスパイであることを知って尚、鷄組という組織を与えた。

 

 ヒクイはZERORATS時代の生き残り達を集わせ組織を再編させた。

 それが鷄組。

 

 獣桜組中でもエリート中のエリート集団。

 

 

 そのトップ、ヒクイ。

 

『今です』

「シュート――ッ!」

 

 

 海が裂ける。銃弾が水面に弾道を描きながらスウォーム駆逐艦を貫く。

 

 

『やりました?』

「たりめーだバーカ、そんな安っぽいフラグ立てなくてもいい」


『ジェネレーター緊急チャージ、次段装填準備』

 

 ヒクイは通話チャンネル変える。


「あとはお前らの仕事だ。本職連中」

 

 

『了解したであります』


 ヒクイは隠し持っていたウイスキーのコルクを開けて口に流し込む。

 

 

「反動でパルスアーマーが消し飛ぶレベルってこの銃馬鹿じゃねえか……セレネの馬鹿野郎、最高じゃねえか」


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