120_決裂流出_ナガト
チユの幼児化する現象は君影研究所でも最重要案件として厳重な情報管理が行われていた。
チユ自身がプライバシー保護を理由に漏れないようにかなり強く君影研究所に圧力をかけたというのもあってかこの情報を知っている人間はほとんどいない。
「アスペル先生、今日もよろしくお願いします」
「おねがしまー!」
ナガトの膝の上にちょこんとチユが座っている。
「……ナガト君」
「なんですか?」
「写真撮っていい?」
「師匠に怒られますよ?」
「この状態のチユちゃん本当に可愛いの」
「なにー?」
「はうぁ! 可愛い! 元の状態は美人って感じだけどこっちはキュートなの!」
「チユかわいいでしょー!」
「いやぁまさか師匠にこんな一面があるとは……」
「極秘情報だからね……まぁほとんどはたまたまチユに似てる同名の女の子って誤魔化しているけど」
「はは、確かにこれがあの人と同一人物だって誰も思わないでしょうね」
「そう言えばナガト君って別人に女装出来るって本当? 噂で聞いたんだけど?」
「え? さぁ? 知らないですね?」
「えー、獣桜組でメイド服着てたって噂があったんだけど。あれは嘘だったのかな?」
「みんな浴びるように酒を飲んでいましたからね。酔っていたんじゃないですかね?」
「ふーん……それもそっか、でも女装したかったら言ってね。ここにはスカートタイプの古るいナース服あるから」
「なんでそんなものあるんですかね?」
「新人ナースをいびるのに使ってた」
「……うわぁ」
「ナースは新人いびりの温床よ」
「女社会怖い」
「昔から男性は看護師にならないのよね」
「そりゃ……こんなのみたら辞めますよね」
「まぁでもナガト君は医者コースだから大丈夫よ! ひょっとしたらもっとしんどいから!」
「……うわぁ」
「さて、今日も研修を始めるわよ」
「よろしくお願いします」