12_生存遊戯_セレネ
セレネはサバイバルゲームという名の殺し合いに勝つためにナガトと協力し拠点と食糧を手に入れた。
真夜中、廃ビルの影に潜む。
(さてそろそろかしらね)
セレネの視界に光の線がちらつく。
(サバイバルゲームの参加者は7人、2人は感染者に食い殺されて、1人は自殺、あと4人はまだ生きているか食い合っているかのどっちらか)
そして生存している4人のうちの1人が姿を見せた。
ナガトとの共闘で存在感を出していることもありセレネを狙うのは読めていた。
(装備はレーザー銃、お金持っていて良いわね)
セレネは瓦礫を積み上げて姿をカモフラージュしているため気付かれることはない。
(ふふ、私を誰だと思っているのよ。シュミットトリガ社は兵器をメインだけどアウトドアギアとかハンティングギアも揃えているのよ)
セレネは両目を開いたまま、右目でスコープをのぞき込む。
腹ばいの状態でつま先を寝かせてレチクルを標的に合わせる。
ドンッ――。
男の胸に弾丸ヒットする。
防弾ジャケットのおかげで後ろに転ぶだけで済む。だがセレネはボルトをスライドさせて次弾を装填してすぐに引き金を絞る。
間髪入れずに2発の銃弾は標的の鼻っ柱を貫き脳みそを破壊する。
(これで残り3人)
ボルトをスライドさせて次に備える。
硝煙の香りと落ちた薬莢が地面とぶつかって響く高い音。
セレネは冷酷な眼差しで倒れた標的を見つめていた。
(全員殺す)
セレネは次の狙撃地点に向う。
(ナガトが人間の足跡を見たと言っていたのはこの辺り)
セレネは月明かりを頼りに廃ビルを移動する。昼間の時点で入念な下見も行っているためスムーズに移動ができる。
(明かりがある。良い位置ね)
セレネはあらかじめ作っていたカモフラージュを施した狙撃ポイントに着く。
アハトノインを構えてスコープを覗く。
(数は、1、2、3、4?)
4人いるうちの3人には見覚えがあったが、最後の1人は見覚えはなかった。
(あの男……アジア系の顔じゃないわね、現地民の可能性はまだあるけど……あっ! あの胸のバッジ主催関係者じゃない)
セレネは嫌な予感がした。
(物資を受け取った……)
セレネは耳に付けているカナル型のデバイスを起動し、脳波画像生成機能で今のやり取りを保存する。
(よし、動画が撮れたわ)
セレネはハッキングでデータを破壊されることを考慮し、ポーチから外部記憶メモリを取り出してコピーする。
(中々キナ臭いわね)
スコープ越しに男達の動向を観察する。
(確か指向性マイク機能があったはず)
耳に装着したデバイスをいじって設定を変える。
(あったあった)
「残りのメンバーは?」
「あの女だけです」
「運の良い奴だ。だが我々に勝つことはない」
「主催さんも人が悪いぜ、端っから勝てるわけがないゲームを開催するなんてな」
「物資は無限に供給されるし、武器も最新のレーザー、しかもいつでもフル充電、負けるわけがねえな」
「そういやあの女、時代遅れの火薬式の銃を持って来てんだぞ。まったく気の毒だぜ」
「ハハハハ、じゃあ明日三人でけしかけてやりゃいいな」
「そうだな、そして帰りのヘリは俺たち三人で乗りゃいい」
「ヘリはいつ来るんだ?」
「五日後だ」
「じゃあ、せっかくだしあの女をなぶり殺しにするか」
「いいな」
(ふーん……)
セレネはすかさず音声を録音して外部記憶メモリに保存する。
(明日、三人を殺すわ。絶対)
セレネは息を吐く。
ドンッ――
(もうひとりいけるかしら?)
セレネはすかさずスライドを引いて照準を揃える。
既に他の3名は物陰に身を隠している。
(あら残念。でも――)
セレネは男達がいた場所の奥にあるパソコンを撃ち抜く。
更に建物の外周を見渡し通信用のアンテナに三度銃弾をぶち込み再起不能にする。
(今夜はこれ以上は体力の無駄ね)
セレネは立ち上がると自分の進行方向とは逆に空薬莢を投げ込み撤退する。
(ナガトも危ないわ……ここでお別れね)
仕事の都合で土曜まで更新はありません。
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