117_決裂流出_ナガト
東京、椿宮師団郊外。
「ありがとうセレネ」
「せっかくなら郊外じゃなくて椿宮師団まで運ぶけど?」
「いや師匠に徒歩で来いって言われてるから」
「サボり?」
「そんなとこ」
セレネは「内緒にしてあげる」と悪そうな顔で言う。
「それじゃまた!」
「あ、これ使って」
セレネは携帯端末を渡す。板状小型タブレット端末だった。
「これは?」
「うちの最新式デバイス、タブレット型になったのは予算の都合だけどその分性能は良いわよ」
「具体的に何が出来るの、リアルタイムで思考がターピナル端末に送られてやりたいことを自動で検知、動作してくれるの」
「へー、それは便利だね」
「でしょでしょ!」
「ところでそのターミナル端末を回覧できるのは?」
「……便利でしょ?」
「これ俺の個人情報から思考まで全部反映されるってことだよね?」
「べ、べべべべべべ別にそれでストーカーみたいなことするつもりはないわよ?」
「セレネ……流石にその……」
「好きな男が何を考えてるか気になるじゃない!」
「……返すよ」
「テストに付き合って! お願い!」
「……はぁ……わかったよ」
ナガトは端末を起動する。
「これでいい?」
「OK……だけど」
セレネはターミナル端末をリモートで確認しているがいつにもまして顔が赤くなる。
「どうしたの」
「ねえナガト」
「おう?」
「私って胸が大きい以外取り柄が無いのかしら?」
「はぁ?」
「さっきからナガトから送られる思考情報から私への情報をピックアップしたらほとんど胸の情報なんだけど?」
「男ってそんなもんだよ」
「男ってこんなに性欲に支配されてるの?」
「うん」
「えぇ……」
「嫌なら返すぞ」
「もうちょっとデータは欲しいからそのまま持ってて! あとナガトが普段使ってるデバイスともうリンクしてるから今解除するのは面倒くさい!」
「いつやったの!?」
「乙女の秘密よ」
「ガチなストーカーじゃねえか」
「乙女の嗜みよ!」
「……はぁ……わかったよ」
レトロな新型端末をポケットにしまうとナガトは飛行機から降りる。
「ナガト! またね!」
「はいはい」
そして場面はチユの部屋に変わる。