112_決裂流出_ヤマト
椿宮師団、郊外。
ヤマトは今日も一人で訓練をしていた。
拳を鍛え、走り、飯を食い。ひたすら岩や木々に拳を打ち付ける。
(強くなるって……どうやるんだが?)
日に日に募る疑問にヤマトは答えを見いだせていなかった。
師であるカナメは今は行方不明、それ以外に教えを請えるような人間はいないし完全に孤立していた。
「ナガトでもいれば練習相手になったんだけどな……愚痴ってもしゃあねえか」
ヤマトは拳を打ち付ける。
岩にはへこみが出来るほど強く、拳を血で滲ませながら。
「時代錯誤なことしているね全く」
聞き覚えのある声が背中から飛んでくる。
「さて、面白いことをしている君に免じて私が面倒を見てやろう」
振り返ると、ヤマトが思いもしない人物がヤマトのトレーニングを申し出ていた。
「あんた、そう言うタイプには見えなかったんだが」
「ふっ、まぁ、まずは三日付き合ってくれたまえ」
ヤマトは少し迷ったあと、首を縦に振る。
「それでいい」
(いや、マジで? この人そんなことするのか?)
「では、格闘技……いやここは格好良く武術の話をしようか。今の君はただ手を振り回している獣だからね」
「よろしくお願いします」
「素直でよろしい。それではまずは、かかってくるといい軽く揉んであげよう」
ヤマトは少し躊躇したが、数分後にはそれが杞憂で、しかもボロ負けすることになるとは予想にもしなかった。