111_決裂流出_ナガト
獣桜組、蛇組。
「初めまして、ナガトです」
「ユネだ」
すらりと伸びた長い足におっとりとした目、ボディラインが強調されたスポーティーな衣装の女性とナガトは握手をした。
「よろしくお願いします」
「噂には聞いているよ。よろしくね」
彼女は両足をぶらぶらさせた脚を組んであぐらになる。
ユネの腰の辺りから恐ろしく太い尻尾が彼女の体を支えている。
尻尾は黄色い下地に黒の楕円が等間隔に並んだ斑紋がびっしりと入りとても綺麗な色柄をしている。
察しの通り彼女のベースはキイロアナコンダ。世界で三種類しかいないアナコンダの一種。
アナコンダの中では小型に入るがそれでも圧巻の大きさには目を引く。尻尾がナガトのウエストほど有りあれで締め付けられる想像をしただけでもナガトは顔をしかめる。
アンナを親とする君影研究所の面々は爬虫類や両生類のベースが顕在化しやすくナガトもトッケイヤモリ、カーペットパイソン、クレステッドゲッコー、いずれも爬虫類である。
「しばらくお世話になります」
「表向きには医療オペレーターの育成、裏では獣桜組の裏切り者捜し。中々映画みたいなことになっているね。これは面白い」
「スポーツドクターのユネ先生の下で勉強できるなんて」
「御託はいい。それじゃ、服を脱いで」
「え?」
「え?」
「いや、どうして服を脱ぐ必要があるんですか?」
「なんで服を脱がない理由を探すんだ?」
そしてユネは極度の筋肉、骨格フェチらしく初めて出会った人間の体つきを見る癖をもっている。
「……脱がないとダメですか?」
「せっかくの筋肉が日の目を帯びないとは勿体ないよ」
「……は、はあ」
ナガトは上着を脱ぐ。
「おぉ……おお! これは……凄い……無駄な筋肉が付いて無いにもかかわらず腱が異常に太い。いいトレーニングを積んでいるね。ただ骨盤と背中、肩関節の駆動がちょっと悪くなっているね。そこに横になって」
診察室のベッドにナガトは寝かされる。
「さてと……」
仰向けになったナガトの頭を掴むと45度に一気に捻る。
「ぐええ!」
「よっと」
反対に首を捻る。
「うわ!」
そこから何が起ったかはナガトにもわからなかったが恐ろしいくらい体が軽くなった。
「……なんで……関節技食らっているみたいだったのに……」
「中々いい体をしている。かなり鍛えているね」
「ありがとうございます?」
「だが食事には気をつけた方がいい、君はもうちょっと食べるべきだ。消費カロリーと摂取しているカロリーのバランスが悪い」
「なんでそんなことまでわかるのですか?」
「見て、聞いて、触ったからね」
(流石プロ……)
「あと足だが、折ったことがあるね。一年前くらい?」
「ええ、折っています」
「やんちゃしてるね。肋骨に足、それと左腕」
「腕は折った事無いですよ?」
「気付いてなかっただけだろうね。といっても問題はなさそうだけど。何かの拍子に折れるかもしれないから気をつけて」
「うっす……」
「まぁこれくらいは診察のうちにも入らない。カバーストーリーで研修とは言え。学ぶべき事はきっちり学んでもらうよ」
「よろしくお願いします」
「では、くれぐれも無茶しないように」