105_決裂流出_ナガト
椿宮師団、天帝邸の会議室。
「では先日の事件について各組織の状況を報告及び今後の検討を始めるであります!」
ミノが会議の進行を始める。
(椿宮師団のミノさん、確か等級甲種の実力者だっけ)
「まず事前資料では発端はシルバーベルにNNEDが渡り、戦力が増大したところでありますな」
(NNED、確かナノマシンによる能力拡張デバイスだっけ。使えばファンタジーの世界みたいな超能力者になれる。シルバーベルが使ったのは違法とされているハイリスクハイリターンのタイプだったかな。デメリットは致死性とほ一部を除いた感染者は脳波がベースによって変わるためナノマシンが対応出来なくなる。で合ってたかな)
「シルバーベルは更に力を付けるために獣桜組と密かにNNEDのやり取りを行うべく、京都にエイトボール小隊を派遣した。アイボリー殿、これに間違いはありますか?」
「いえ、間違いはありません」
「結構であります」
ミノは投影されているスクリーンの映像を切り替える。
「一方で獣桜組は兎組を派遣し調査を行った。エイトボールと交戦した結果死者数名が出る結果となった。次にエマ様はメズキ殿を派遣し威力偵察を行い、エイトボールと遭遇、交戦状態となった。ここの証言は本当ですか?」
『こちらメズキ、その情報には訂正箇所がございます。エイトボールと交戦は行っていません。こちらは弾丸を一発も消費していません。エイトボールが無抵抗を装い一瞬の隙を見て逃げて行きました』
「私もエイトボールからはそのように報告を受けています。そもそもエイトボールと獣桜組が接触した場所は獣桜組の領地ではない場所、安易な戦闘行為は責任問題になります。こちらからも戦闘は避けるようにと命令しています」
アイボリーが補足する。
「ちょっと待ち、うちはうちの敷地にシルバーベルが紛れ込んだと聞いて、メズキを派遣したんやけど?」
「境目付近であったと聞いております」
エマの言葉に対し即座にアイボリーは反論する。
「証拠はあるん?」
「ええ、メズキさんのヘルメットには映像記録機能があったとエイトボールから報告を受けています。それを解析すればどっちであったかはわかります」
(あっ……アイボリーの反論だと獣桜組が所有しているデータを参照することになるからエマさんが自分から不利な証拠を出してしまう可能性があるからエマさんもじゃあ確認しましょうって言えないのか)
「確かにメズキはデータを持っているなぁ」
エマはあくまで強気な表情を保つ。
「ええよええよ、あとでじーーーーっくりチェックしてやるさかい。でもまぁもしもこれでこっちの縄張りで悪さしてたら、お嬢ちゃんどうやって責任取るん? うちこう見えてとーーーっても忙しいやけど?」
「責任以前に、メズキさんと接触した時は双方被害は無かったのだから、何の責任を取れと言うのですか?」
(うわっ、サラッと兎組の人を殺した話を無かったことにしてメズキさんとエイトボールが衝突した時の責任問題と話題をすり替えてる)
「うちとお嬢ちゃんじゃ、生み出せる銭が違うっちゅう話やよ。なんぼも金にならん仕事をこっちに振って何様なんやろなぁ?」
「ではやらなくて結構です」
(そこに落とし込んだら両方無傷で収まるな……エマさんはリスキーな賭けに乗るのかな。それとも面倒を避けるためにここで手打ちにするのかな?)
「ふーん、まぁそれなら楽できるさかい。ええで」
「どうも」
アイボリーはエマに一瞥する。エマはアイボリーに冷ややかな目を向けている。
(そう言えば、姉ちゃんとエマさんって結構仲良かったんだっけ……てことはシルバーベルに確実にぶち切れてるよな……)
「コホン、では一旦、交戦の有無は要調査として、話を続けます」
(え、ミノさんあのギスギスの雰囲気でそんな平静保っていられるのか……)
「獣桜組とシルバーベルが繋がりですが獣桜組に内通者が居るのは明らか、にも関わらずまだそれが誰なのかわかっていない」
「そうなんよ……シルバーベルが取引した相手は男で、こっちの裏切り者の予想は女なんよ。それに顔写真をそこのクラウンっていうクソガキに見せたんやけど一致がとれなかったんよ」
(無茶苦茶、私怨たらたらだ……家族の俺より怒ってるよ……)
「獣桜組のお力になれず申し訳ございません」
クラウンは素直に謝って話を終らせる。
(クラウン……英断だ。俺なら食って掛かってたな……見習う必要ありだな)
「ホントに使えんわぁ」
エマは余計な一言をわざと言う。
対してクラウンは冷静に肩を竦ませて何も言わないままミノを見て話を進めるようにと目で催促する。
「ふむ、了解であります。獣桜組は引き続きNNED流出ルートと売人の確保を、シルバーベルはNNED注射後の健康診断を受け、心身に異常がないかチェックしますのでまずは椿宮師団の病院に入院してください。丁度非感染者病棟も建設できたところでありますので。それが終ったら獣桜組と協力して売人をとっちめてください」
(え、ミノさんマジで言ってるの? この状況で? ギッスギスだよ?)
「…………」
「…………」
アイボリーとエマは黙ったまま何も言わない。
数分無言続いたところでミノが口を開く。
「何か不満がありましたか?」
「…………」
「…………」
突然ミノの髪の色が黒一色から青色のラインが浮かび上がる。
(あ、これヤバイやつだ……)
その場にいた親を除く全員の背筋が凍り、嫌な汗を滲ませた。
「返事を聞いているであります。NOなら正当な言い分をお願いします」
「……はい」
「……そないに威圧感出さんでもやらんとは言ってないんよ」
「それなら結構です。では次はアンドロイド兵についてです。アンドロイド兵は残骸のロットIDから獣桜組から盗まれたものであることは確定しているようですね」
「せやね、うちの機械の兵隊さんがほぼ丸々パクられてしまたんよ」
エマは涼しい顔をしている先ほどまでのことがまるで嘘だったかのように穏やかだった。
「犯人はエイトボールとのことですが、こちらについてはどうですか?」
「その説明は僕がするよ」
クラウンがボールペンをバラバラにしては組み直している。
「結論から言うと、僕らはエイトボールにそんな指示はしちゃいない。あそこにいたのはNNEDの取引さ。そもそもアンドロイド兵なんて奪おうものならそこの角を生やした女の人に殺される」
「せやねえ、てことは、なに? シルバーベルは獣桜組の内輪揉めだって言いたいん?」
「そんなことはどうでもいいです。重要なのはシルバーベルはアンドロイド兵には関与していないってところです」
「じゃあ誰がやったん?」
「知りませんよ。そもそもエイトボールは電子機器をハッキングする技能を持っているかこちらは把握していません。もっともあの男にアンドロイド兵なんてガラクタ、ただの荷物でしょうけどね」
「よう言うわぁ。ヒクイぃ?」
ヒクイは腰のホルスターから拳銃を引き抜く。もちろん弾はフル装填されている。撃鉄を落としたら最後だ。
「そろそろティータイムの時間でなくて?」
アイボリーは微笑を浮かべて緊迫したこの状況で悠々を言い放つ。
「皆さんも集中力が切れた頃でしょう?」
無言が続く。ヒクイは拳銃を構え、クラウンは臆せず銃口の先を見据える。
アイボリーは自分の左肩を右手で叩き始める。
「ちょっと肩が凝ってしまいそうなの」
これ以上やるならアイボリーはNNEDの能力を発動させる。と間接的に言っているようなものだった。
「休憩にしましょう。両者ともに頭を冷やすであります」
カツン、カツンと足音が響く。
「んあぁーすまねえ、ちいっと遅れちまったぁ」
腰には時代錯誤なサーベル、着崩したスーツには変なシワがついていた。
飄々した出で立ち、引き締まった体に無精髭、何ともだらしがない男が部屋に入ってきた。
「んー、なに? 喧嘩かぁ?」
男はまるで居酒屋にでも入ったかのように気ままな振る舞いをする。
「クラマ、遅いなぁ」
「いやぁ、寝坊しちまった」
「ふーん、まぁ、あんさんならええよ」
エマはヒクイに目を向けて銃を降ろさせる。
「で、ティータイムとかって聞いたが、美味い茶でも飲めるのか?」
「せやな、積もる話もあるし茶でもしばきましょか」
「おー、ラッキー。収容所の飯は味気なくてつまらねえから余計に楽しみだ」
男の名前はクラマ。
メズキに代わる前の馬組の組長でありクラマ家元当主であり――。
エマの右腕であり。
感染者等級甲種であり。
拘束指定者であり。
獣桜組が誇る最強の感染者である。
剣客者、この二つ名でどのような人物かは想像に容易い。
最近、仕事が忙しく中々執筆ができておらず投降が不定期になります。
楽しみにして下さっている方には申し訳ないのですが何卒ご理解の程を。
酒でも飲んで気長に待って下さい。お酒が飲めない方は、そうですね。踊ってて下さい。
ところで小説を書いているとついつい巨乳キャラばかり書いてしまう悪癖があるのですが、やはり貧乳キャラも書くべきでしょうか。
巨巨巨巨大巨巨巨大大小超超巨巨巨巨巨無巨巨見たいな流れになってしまっているのですが乳はデカければデカいほどいいって聞いておりますし自分も信じて疑っておりません。
作中で明かすタイミングが無いし特に書く予定もないですが、現行までの登場キャラで一番胸が大きいのエマです。めっちゃでっかいです。いいでしょ? 良いって言えオラァ!